円の支配者 - 誰が日本経済を崩壊させたのか

制作 : 吉田 利子 
  • 草思社
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レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794210579

作品紹介・あらすじ

この本は新進のドイツ人研究者による、真に衝撃的な、日銀と日本経済の研究である。われわれはこの本をとおして、初めて、バブルの創出と崩壊、この十年の日本の苦境の真因を知るだろう。政府が景気回復に向けて必死の努力を重ねていたとき、なんと日銀は信用を収縮させ、景気の回復を故意に遅らせたのである。なぜなのか?これが本書の核心である。著者は名探偵のごとく、犯人を追いつめ、遂に日銀の陰謀ともいえる行動を白日のもとにさらした。日本を震撼させる快著。

感想・レビュー・書評

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  • ☆2(付箋9枚/P381→割合2.36%)

    マクロ経済政策の量的金融緩和をしながら、実際の銀行への貸出割当を操作することで“本当の”量的緩和を絞れるという恐ろしいお話し。個人的には、信ぴょう性を感じました。

    ・2001年3月19日に、日銀はついに政策を転換し、「思い切った(量的)金融緩和」に踏み切ると発表した。しかし、その声明を注意深く読んでみると、日銀はなんら変わっていないことがよくわかる。日銀は単に銀行の準備預金(日本銀行当座預金残高)を四兆円から五兆円に増やすと約束しただけだ。これでは日本経済には何の益もない。経済にまわるお金の量が増えてこないからである。

    ・1990年代の大きな謎は、なぜ日銀はもっとお金をつくって景気回復を図らなかったのか、ということだ。1992年、わたしは日銀の客員研究員だったが、おおぜいのスタッフにこの問題を訊いてみた。ようやく、あるセントラル・バンカーが驚くべき回答を与えてくれた。「もっとたくさんお金をつくったら、景気は回復するでしょう。だが、それではなにも変化しないでしょう。日本の構造問題は解決しないのですよ」。
    当時、わたしはこの言葉が信じられなかった。日銀は経済構造を変革するために、意図的に不況を長引かせているのだろうか?だが、何年も研究を続けた結果、わたしは彼が真実を語っているのだと結論せざるをえなかった。
    …プリンスたちは大幅な構造改革を実現し、みずからの法的権限を拡大するために経済を大混乱に陥れた。だが、彼らが仕組んだ構造改革は必ずしも国民の利益にはならない。アメリカ流の経済体制だけが、経済を成功裏に運営する方法ではない。公的な議論がつくされ、プリンスたちが公明正大に行動していれば、なくさないですむ多くの長所が日本の経済体制にはあった。だが、彼らは闇の中で画策した。

    ・イギリスとアメリカの古典派および新古典派経済学出身の主要なエコノミストはほとんどが、通貨を中央銀行の預金と銀行預金を足したものと定義している。だが、銀行預金のなかで短期預金だけを入れるべきか、長期預金やその他すべてのタイプの預金も含めるべきか、はっきりしていない。そこで中央銀行は現在、いわゆる「マネーサプライ」を何種類も発表している。マネーサプライは狭義のM0(預金と銀行の準備預金)からM4あるいはM5(あらゆる種類の預金の総和)まで、さまざまだ。測定法はいろいろだが、どれもとくに有用だとはいえない。Mで表される通貨供給量はすべて、経済成長と安定した関係にないからだ。

    ・金細工師は金を預かると、預かり証を発行する。預けたほうは、預かり証の便利さに気づいた。買い物のたびにいちいち金を持ち出さなくても、金の新しい所有者はどうせ金細工師にまた預けるではないか?金細工師はよく知られていたから、預かり証が決済手段として受け入れられるようになった。預かり証が通貨になったのである。
    こうして13世紀ごろには、ヨーロッパでも紙幣が登場した。ただし、中国の紙幣にくらべるとかたち、機能、意味に決定的な違いがあった。政府によって発行されるのではなく、民間のビジネスマンのグループによって発行されたのだ。

    ・あなたが銀行に千円預け、中央銀行は預金準備率を1%に設定しているとする。この場合、銀行は990円を貸し出し、10円(千円の1%)を預金準備として用意すると考えたくなる。しかし、じつはそうはならない。そうではなく、銀行はあなたの預金を百回まで貸し出すことができる。銀行はあなたの新規預金千円をもとに、十万円貸すことが可能なのだ。

    ・1986年ごろから、銀行は精力的に信用創造量を増加させていた。都市銀行の貸出額の伸びは80年代末には15%で、貸出総額の伸びはほぼ12%で推移していた。いっぽう、この融資の金利を払う経済の能力、つまり国民所得の伸びはその半分でしかなかった。非生産的な信用創造の行き過ぎの典型的な例である。銀行システムが生み出したマネーは生産的に使われていなかった。それどころか、投機と衒示的消費に費やされていた。

    ・大蔵省にドルを買えと命じられた日銀は、そのとおりにする。大蔵省は日銀がドルや米国債を買うのに必要な円を印刷するだろうと考えていた。だが、必ずしもそうではない。日銀は国債その他の債券を国内投資家に売り、その代金で外為市場介入をおこなった。通貨を印刷するかわりに、国内経済から吸い上げたのである。エコノミストはこういうオペレーションを「不胎化」と呼ぶ。不胎化政策のもとでは、日銀の信用創造量は増えないから、円も弱くならない。
    1995年2月と3月、大蔵省が日銀に200億ドル相当の米国債の購入を命じたとき、日銀は「過剰な不胎化」をおこなって、命じられた外為市場介入に必要な額以上の通貨を経済から吸い上げてしまった。1995年3月、信用破壊が起こり、円は記録的な高さになった。

    ・「…貸出規模が同程度の大手四都銀(住友、富士、三菱、三和)の貸出額がまず決定される。もし、これらの銀行の枠が100とされれば、他の銀行の額も自動的に決まる。第一勧銀は120であり、三井と東海は80となる。だから、秩序は保たれる。…日本興業銀行が100、長期信用銀行が50、日本信託銀行が30というところだろうか。…貸し出しの情報は産業別に区分けされ、さらに(1億円以上の)大手の借り手については名前と額まで明らかにされた。そしてそのすべてについて、日銀側担当者は細かく監督した。」

    ・「日銀はバブル期に融資拡大をうながした…いまから(1980年代を)振り返ると、それは間違いだったことがわかる。わたしの個人的意見だが、金利を引き下げたときに窓口指導の貸出増加枠を引き下げるというポリシー・ミックスをとれば、このようなバブル・エコノミーにはならなかったと思う。しかし実際には、金利を非常に下げて、窓口指導を極端に上げてしまったから、マネーサプライは10%から13%近くまで上がったりした。なぜ同時に窓口指導をきつくすることができなかったか、そこは非常に不思議だ…どの銀行も、貸出割当枠をマキシマム・レベルまで使おうとし、一生懸命融資を伸ばした。そうしないと次の期に貸出をけずられる。それは融資担当者にとって非常に不名誉なことだった…しかし、融資は鉄鋼や自動車などまともな企業には向かわず、建設業や(不動産投機に手を出していた)ノンバンクに向った。これでバブルになった」
    …1960年代、研究者はすでに、日銀の窓口指導が信用の過剰な伸びの原因であると指摘していた。「民間銀行の信用創造の量をコントロールするのは日本銀行の義務である…(1950年代の)過剰な融資は、収益の最大化を求めた銀行の過ちではなく、そのような信用の拡大を許した日銀の過ちである」。明らかに数十年の経験があり、信用割当枠を決めていた日銀が無実を申し立てても通らないだろう。これらの意思決定者がバブルを生み出していることを知らなかったはずはない、という結論しか考えられないのである。

  • 日本は貨幣によって操作されていることがよーくわかりました。そもそもの貨幣の意義の捉え方が大きく変わりました。貨幣は国家制御の手段なのだと。

  • 著者の意見が存分に反映されている陰謀論的な部分はさておいてそう言う視点もあるのかと考えさせられた一冊。これを読んだ感じでは日銀の出口戦略がどうなる?といった最近のいろんな報道ががなんだったんだ?とも思えてしまう。

  • ドイツ人研究者が、日銀の戦後史を踏まえつつ、特に、バブル発生から崩壊、失われた10年に続く日銀の金融政策に関する問題点を暴き、彼らの隠れた意図を推察しようとするもの。個人的に戦後日銀史はほぼ知らず、本書で蒙を啓かれた。また、バブルの発生・崩壊は、通貨ではなく信用創造量の増減に依拠するということがよく判る。現に、信用創造量を増加させたグリーンスパン前FRB議長の退任後、リーマンショック等の米国バブル崩壊現象が起こっており、これは著者の予想どおりだ。かかる著者の説明にはかなりの説得力があることは疑いない。
    もちろん、日銀陰謀論や日銀・大蔵の権力闘争の側面は、割り引く必要があろうが、少なくとも、失われた10年において、日銀が十分な役割を果たしてこなかった可能性が高く、格差社会の発生に相当寄与したことは高度の蓋然性を持つと思える。

  • 虚構の終焉の兄弟本です、日本のバブルがなぜ発生し終焉したのか、その後の不況
    はなぜ長引いたのか、その目的とメカニズムを判りやすくデータと共に明らかにしてく
    れている良本です。

    日本の金融システムが理解できるようになります。

  • 目からウロコでした。一応、経済学部出身なので、日本銀行のお仕事内容は少しは知っていたつもりだったのですが、まさか、窓口規制で銀行を支配していたとは思いもよりませんでした。
    バブルもその後のバブル崩壊も日銀の仕業だとか。結局、米国に日本国民が蓄えた富を差し出すようなことをし続けているようです。

    レベル:437

    この手の本ではかなり高い数字だと思います。

  • 大蔵省は金利によって支配していると思っていたが実は日銀が窓口指導で支配していた。総裁は大蔵省と日銀から交互になっていたが、大蔵省の総裁の時は多くを知らせず、副総裁に必ず日銀側の人物がなって、次の総裁に就任していた。日銀のプリンス達はアメリカで学び、パイプもある。金融界が政治の縛りから逃れて隠れて支配している。

    2001年の古い本なので今ではこの本に書かれていることは世間でもだいぶ浸透して理解されているのではないか。

  • とても素晴らしい本。日銀独立に向けて日銀の幹部は何十年スパンでの計画を立て、日銀独立にむけて国会議員等が賛成に傾く状況を作り出し、結果として目的を達成した。

  • オーナー:小辻昌平
    「この本は半分まじめな経済の本で、半分はとんでも謀略本です。日銀がどうしてデフレ政策をあらためないのかのヒントがここにあります。でもドイツは経済世戦で第四帝国の建設をもくろんでいるので、ヴェルナーがドイツ人であることを忘れずに!!」

  • バブルを生んだのも崩壊させたのも、そして10年以上にもわたり不況を放置し続けたのもすべて「日銀の意志」だという衝撃的な告発。いわゆる「陰謀説」の類と一蹴するのはもったいない。
    説得力に欠ける部分もあるが、日本経済における日銀や財務省の立場などが理解できる名著。また、中盤の経済史のあたりは少し冗長だが歴史小説のように楽しめる。

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