ファストフードが世界を食いつくす

制作 : 楡井 浩一 
  • 草思社
3.62
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本棚登録 : 392
レビュー : 50
  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794210715

作品紹介・あらすじ

拡大と成長をつづけるファストフード産業。だが、その成功をもたらしたマクドナルド方式によって、アメリカではさまざまな分野に荒廃が広がりつつある。労働力を使い捨て、食の安全を切り捨てる。あるいは香料の魔術でわれわれの健康を脅かし、農業を崩壊させていく。自由市場経済、グローバリズムを喧伝し肥え太る一方のファストフード業界。その戦略の全貌を、緻密な取材と圧倒的筆力で描き出す、全米ベストセラー・ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 読むまでは、10年以上前の本なので古いかなと思っていたけど、堤未果さんの貧困大国アメリカシリーズとの連続性を感じたことと、自分の知る限り、この本に書かれてる状況が改善されたニュースに接していないことで、全然いまに続くこわさ。
    こんな記事も見つけた。
    http://www.lifener.net/e3770264.html
    前半の、ファストフードの興隆の話はアメリカンドリーム的発想の中で、いろんな人の努力やら、したたかさやら、渦巻いてて面白かった。
    後半が、ファストフードにまつわる労働者の待遇がいかに法を潜り抜けるべくされているかとか、養鶏業者がどうなったとかフランチャイズの功罪とか。とくに、牛肉処理の過程や、筆者が潜入した精肉工場の様子、労働者の話は、恐怖。実際の大規模食中毒事件の話まで重ねて裏付けられ…。アメリカはどうなってるんだ!という気持ちになる。堤さんの本読むと、最後にこの本の筆者が提示している消費者の選択による改善も、経済的事情や構造で、結局できなくされてるんじゃないかと思われる。
    11年に及んだイギリスでの名誉毀損訴訟の過程の話も面白かった。

  • なんだかチープな邦題と装丁ですが、中身は客観的で淡々としており、大変読み応えのあるルポルタージュでした。

    手軽で廉価な商品を提供するために犠牲になるものの大きさと、それを得る側の欲求の軽さ。
    あまりにも釣り合わない欲望バランスが、世界規模に膨らんだ巨大産業のもとで歪に成立しているチグハグさにぞわぞわします。

    作者が終盤で提示する、「この問題の端は悪意や憎悪ではない」といった意見と、弱々しいながらも踏み出さんとする一歩には頷かざるを得ないのですが、「悪意を一切持つことなく人間はここまでの事ができる」という事実がだからこそやるせない。

    罪はどこにあって何から間違ったのか。読み終わった後にどう振舞うにしても、せめて自分の選択を自覚するくらいは読んだ側の責任かと思いました。

  • 2001年刊。◆約20年前までのFF業界の実情は、創業当初、創業者の努力に依拠し事業を発展させた。が、巨大化過程の歯車が動くにつれて、取引先等の利害関係者を呑み込み、蹴散らしていった。これが本書で描く過程。この巨大化過程は、ディズニーに準えたイメージ戦略、香料・旨味成分の科学的分析による販路拡大等に依拠。他方、経費低減化として①非正規労働者の利用・失業率低減政策による補助金獲得、②フランチャイジーへの契約での拘束と、同業の中小零細他社の駆逐、③購買独占によって農畜産業者への価格競争力を獲得し、圧迫する。
    しかる後に、融資・種芋供給によって契約農家や畜産業者を物納小作人化、さらには、農業・畜産業の少数大規模企業化を進展する一方、対立する中小農家の駆逐を図り、利益集中を実現。さらには、精肉加工工場の実態は驚愕すべきで、エンドユーザーまでも利潤獲得先とする徹底ぶり。この状況が現在も変わっていないだろう。なお、FC契約での格差間は日本でも同様に妥当し、税金掠め取りも将来の懸念。もちろん、食の安全性は、BSE問題とも通底しており、暗然とする実態が開陳される。百円でハンバーガーを食べる真の意味を感得できる書。

  • 元からファストフードは食べないが、この本を読んで、なぜ食べるべきではないか、食べると自分の体と社会にどのような悪影響を及ぼすのかがよく分かり、もう2度とファストフード店に足を踏み入れることはないだろうと、確信した。
    子供達にもなぜファストフードが美味しく感じるのか、なぜ安いのか、よく教えないといけない。

  • 最近、ベンジャミン氏の書かれた「マクドナルド化する世界経済」を読み、そこで参照されていたので、この本を読んでみました。

    この本には、現在のアメリカの食生活が以前(せいぜい30年前)と比べて劇的に変わってきたことをレポートしています。綿密な取材のもとに書かれたことが、本を読んでいて分かりました。

    しかし読み終わって更に気づいたことは、この本は今から13年前(2001)の、あの911の前に書かれているということです。それ以来、ファーストフード食品は更に増えている気がしますので、現状はこの本に書かれているよりも進展していることでしょう。

    私は生産効率を上げて低価格になれば良いと考えていましたが、アメリカでは低価格にするために、食肉加工から牧場に至るまで、健康の面からみると正しいと私から見れば思えないやり方を進めているようです。これにより中小の企業は大企業に合併させられ、良心的な経営をしていた企業もそれらに呑み込まれているようです。

    いまTPPの交渉が闇の中で行われていて、交渉経緯が約束事とはいえ殆ど明かされないなかで進んでいます。アメリカで起きている現象が日本に持ち込まれないようにと願いたいものです。

    以下は気になったポイントです。

    ・マクドナルドは、米国最大の牛肉・豚肉・じゃがいも購入者、二番目に大きい鶏肉購入、また世界一多くの店舗用不動産を所有している、利益の大半は、食品販売でなく家賃収入から得ている(p11)

    ・アメリカファーストフードの、味・匂いの大半は、ニュージャージーの大化学工場で製造されている(p15)

    ・汚染されたひき肉の販売を阻止しようとする試みは、何度となく食肉業界のロビイストによって退けられた、汚染された食肉を回収する権限はない(p18)

    ・ロサンゼルスの自動車台数は1940年で100万台、他の41州の合計保有台数よりも多かった、鉄道会社は軌道敷設費や維持費を自ら負担するが、自動車会社は公共支出で道路建設をさせた(p25)

    ・GMとその協力会社(マックトラック、ファイアストーン、スタンダードオイルカリフォルニア)は、1947年に連邦独占禁止法違反(トロリーシステム買収)で起訴された(p26)

    ・マクドナルド兄弟は、客層拡大のために、若い男のみを雇った、それにより家族連れが来た(p32)

    ・クロックが25万ドルの献金をしたとき、マクドナルド従業員の時給はおよそ1.6ドル、それを20%低くできる法律(マクドナルド法)をニクソンは承認した(p54)

    ・マクドナルドでは清涼飲料は最も利幅が大きい、それもサイズが大きいほど(p79)

    ・ほかの小売店ではクレジットカード決済が多くなってきたが、フ
    ァーストフード店ではほぼ全て現金決済(p117)

    ・冷凍フライドポテト業界は3つの会社に集約された、規模で劣るライバル企業は撤退か買収された(p158)

    ・過去25年間でアイダホのじゃがいも農家はほぼ半分になったが、じゃがいも作付面積は増えた、家族経営農場が企業農場に吸収されたから(p161)

    ・ファーストフードのフライドポテトの風味は、かなりの部分まで揚げ油で決まる。大豆油7牛脂93の混合油で揚げていた、これが風味の秘密、キロ当たり飽和牛脂量がハンバーガーを上回ることになる(p164)

    ・IFFは世界最大の食品香料メーカであるうえに、高級香水の米国内売上上位10ブランドのうち6ブランドに製造している(p167)

    ・ピーマンの匂いの基調になる成分は、10億分の0.02の濃度で、5つ分のプールに1滴たらすだけで、ピーマン風味になる(p172)

    ・天然香料は、つまり時代遅れの工程で抽出された香料のこと、天然香料も人工香料も変わらない(p174)

    ・米国内各地の肉牛市場で売買される牛の80%は専属供給、その価格はけして開示されない(p191)

    ・精肉加工は危険な仕事ではあったが、賃金のよい望ましい仕事であった。1960年代初めまで業界最大手だったスウィフト社は大手5社のなかで最後まで個人経営スタイルを捨てなかった会社、この会社の重役だった二人が独立してIBPを作った(p211)

    ・IBPの低賃金と、最新の生産技術が、牛肉業界全体の風景を、肥育場から肉屋の店先に至るまで一変させた(p213)

    ・レーガン政権は、数百社の中小の精肉業者が業界から姿を消していく趨勢に歯止めをかけなかった、それどころか、反トラスト法を適用して業界最大手を牽制する動きに反対した(p219)

    ・IBPの弁護士いわく、新規採用はある程度の経費削減になるとコメント、保険対象・有給休暇は採用の1年後なので(p223)

    ・IBPは1997年に、1967年から本拠を構えていたネブラスカの本社をたたみ、法人税・所得税が課せられない、サウスダコタ州へ引っ越した(p228)

    ・シカゴの精肉工場では昔は1時間に50頭程度解体していたが、いまでは400頭前後を処理している(p239)

    ・1981年に労働安全衛生局は、新たに自主遵守の方針を導入、抜き打ち検査はできなくなり、会社の生涯記録に目を通してから出ないと工場に入れなくなった(p248)

    ・IBPをはじめ精肉大手は、自家保険制度を採用しているので、保険会社から圧力はかからず、労災給付を最低限に抑えるインセンティブが強烈に働く(p256)

    ・食品医薬品局の現行規定において、ブタや馬の死骸は、食鳥類の死骸とともに、牛の飼料として与えて良いことになっている(p281)

    ・ハドソンフーズのネブラスカ州コロンバスの工場は、HACCPプランのもとで操業していながら、1997年に1.6万トンの潜在的汚染肉を出荷していた(p300)

    ・インアンドアウトは、カリフォルニアとネバダ州に150店舗を展開して、1.5億ドルの利益を上げている。パートタイマーの時給は8ドル以上、ファーストフード業界で最も高い給料(p362)

    ・マクドナルドは、シンプロット社に対して「遺伝子組み換えのじゃがいも」は買わないと宣言した、そしてバイオジャガイモの売上が一気に減退した(p376)

    2014年2月2日作成

  • どこまで正確な数値、取材であるかは疑問だが、不自然なほどの安価の理由と考えると腑に落ちる実態。
    大量生産もフランチャイズもうまく使えば多くの人を幸せにできる発明なのに、ごく少数の搾取の手段として使われているのが現代の悲劇。
    極端な利益追求(というよりも配分の不均等)、情報非公開は自由という言葉の範疇を超えており、カネがカネを呼ぶ帝国資本主義はもうとっくに限界に来ている。
    前世紀に告発されたこの有様は、十余年を経て今どうなっているのか。

  • このパッケージデザイン、明らかにあのファーストフードを連想させます(笑)。ただ内容としてはファーストフードそのものに留まらず、アメリカの食肉牛に関わる衛生管理の考え方の信じがたいほどのずさんさ、労働環境の劣悪さ、教育界への侵食など多岐にわたって、日本人にとっては信じられない現実をあぶりだしています。ファーストフードは牛肉の最大に購入者であり、食肉業界への影響がつよいことからこのようなタイトルがつけられたのだと思います。

    この取材の成果が本当だとしたら、ハンバーガーを食べることがためらわれるでしょう。しかし著者はファーストフード業界を単に批判しているのではなく、この業界が考え方を変えるだけで上記した問題が芋づる式に改善されていくのだと締めくくっており、ハンバーガーを買う時に少しでもそのようなことを意識して買うか、店を立ち去るかするべきだと説いています。この強大な業界でも怖いものがあり、それは消費者にそっぽ向かれることであるということです。

    余談ですが腑に落ちない点が。

    以前に紹介したマクドを広めた人物レイ・クロックの自伝『成功はゴミ箱の中に』で、ライバルにスパイを送り込もうと言った社員に正々堂々と戦えと言ったとありますが、ロンドン・グリーンピースがマクドを非難するパンフレットを配ったことに対して、マクドに訴えられた時、対抗したメンバーがいました。そして法廷で争うことになるのですが、マクドはこのグリーンピースにスパイを送りメンバーの動きを監視していたことを認めているようです。レイ・クロック自伝はところどころ自分を美化しているような雰囲気が感じ取れましたが、やっぱりそうなのかも(笑)。

    本書は複雑に絡み合う問題に対して、ひとつひとつ紐解いて問題をあぶり出していてなかなかの作品になっていますが、要点をつまみあげて内容を簡単に把握したい人はこれよりも『おいしいハンバーガーのこわい話』がおすすめです

  • 私はファーストフードは慣れていなくて、年一回入るか入らないくらいのペースできた。入っても飲み物だけとか、そんな具合。自分の勘以上に、いろいろあるのはわかる。
    たしかに、普通の肉だろうが、毛皮のできる裏には、ここに書いているような残酷さはある。それは過去にもたくさん書かれてきた。しかし、o-157の原因やら…。
    一読の価値あり。

  • 創始者たち
    信頼に足る友
    効率優先の代償
    フランチャイズという名の甘い誘惑
    フライドポテトはなぜうまい
    専属契約が破壊したもの
    巨大な機械の歯車
    最も危険な職業
    肉の中身
    世界的実現
    お好きなように

  • 原題は「FAST FOOD NATION」。
    本書は大きく2部構成に分かれており,前半部(第一章~第四章)はファストフードの誕生物語となっています。淡々と歴史を語るわけではなく,登場人物の人生を生き生きと描写しつつ,市場の如何なる要求でファストフード産業が産まれたのかが描かれています。ここでは,ファストフードとハリウッドとの関連について触れられており,歴史上の両者の関係が分かります。
    後半部(第五章~第十章)は打って変わってファストフードのサプライチェーン上で起きている悲劇。食肉処理場の描写は過激です。市場の要求に従った結果,現在起きている様々な歪みが赤裸々に書かれています。
    ここまでの苛烈な内容の故に,終章の「あなたは,自分の好きなように行動することができる」という著者の言葉が心に沁みました。

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著者プロフィール

アメリカのジャーナリスト。既刊にベストセラーとなった『ファストフードが世界を食いつくす』『ファストフードと狂牛病』『おいしいハンバーガーのこわい話』『巨大化するアメリカの地下経済』。

「2018年 『核は暴走する 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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