ファストフードが世界を食いつくす

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794210715

感想・レビュー・書評

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  • 読むまでは、10年以上前の本なので古いかなと思っていたけど、堤未果さんの貧困大国アメリカシリーズとの連続性を感じたことと、自分の知る限り、この本に書かれてる状況が改善されたニュースに接していないことで、全然いまに続くこわさ。
    こんな記事も見つけた。
    http://www.lifener.net/e3770264.html
    前半の、ファストフードの興隆の話はアメリカンドリーム的発想の中で、いろんな人の努力やら、したたかさやら、渦巻いてて面白かった。
    後半が、ファストフードにまつわる労働者の待遇がいかに法を潜り抜けるべくされているかとか、養鶏業者がどうなったとかフランチャイズの功罪とか。とくに、牛肉処理の過程や、筆者が潜入した精肉工場の様子、労働者の話は、恐怖。実際の大規模食中毒事件の話まで重ねて裏付けられ…。アメリカはどうなってるんだ!という気持ちになる。堤さんの本読むと、最後にこの本の筆者が提示している消費者の選択による改善も、経済的事情や構造で、結局できなくされてるんじゃないかと思われる。
    11年に及んだイギリスでの名誉毀損訴訟の過程の話も面白かった。

  • 『#ファストフードが世界を食いつくす』

    ほぼ日書評 Day411

    正直、かなり読後感の悪い一冊だ。詰まらないということではなく、見てはいけない物事の裏側を、偶然目にしてしまった感覚だ。

    タイトルから容易に想像される内容は、米国で深刻化する肥満の問題。さらに健全でない食肉生産の工程(身動きできない家畜がホルモン剤で太らされる的な)。
    もちろん、そうした内容もかなりの紙面を割いて、克明に語られる。本書の刊行が20年前だから、今はさすがにそんなことはなかろう、と軽やかにスルーしたくなるレベルでだ。

    他方、驚かされるのが、貧困問題との兼ね合い。

    2001年当時、既に「アメリカでは今や、飲食店労働者の少なくとも6分の1が、英語を第二外国語としており、そのうち約3分の1は、英語全く話さない(…)メニューの商品名しかわからない従業員も多く、彼らが話すのは"マクドナルド英語"」だという。
    調理マシンについても「1つのやり方でしか動かない機械を開発すればいい(…)機会が1つの手順しか受け入れなければ、従業員教育はほとんど必要なくなりますよ」という。

    人間を徹底して生産システムの歯車として取り込む仕組みが作られる。ファストフード店で働く店員の大半がティーンエイジャーであるが、1999年の調査によれば「飲食店の全従業員のほぼ半数が、食品以外に、何らかの形で現金化備品を盗んだことがあるという。盗む額は、平均で年に約218ドル。新入りの従業員は、さらに100ドルほど多い」という。人生の入り口で経験する灰色の未来が、貧困を定着させ、拡大する。

    精肉工場労働者はさらに悲惨。ある工場の年間離職率は400%、平均3か月で辞めるかクビになる計算。経営者曰く「工場によっては、おそらく3人に1人が、いかなる言語も読み書きできません」。もはや、英語ができないというレベルの問題ではない。が、これについても、保険や有給休暇にかかるコストを勘案すれば、頻繁な人の入れ替わりはコスト削減策となるというのだ。
    さらに牛肉処理場の利益率はきわめて低いため、収益性向上のためにはラインのスピードを上げるしかなく、結果、人手によるしかない解体作業に使われる各種の刃物が、ちょっとした手違いで、隣で作業を行う同僚に襲いかかることとなる。

    ただ、最も酷い仕事は、さらにあるという。ちょっと引用が憚られるので、興味のある方は、本作に当たってみて欲しい。

    最後に米国のファストフード市場に関するデータ。彼らがファストフードに費やした金額、1970年には60億ドル(当時のレートで2兆円超、これでも多いと思うが)だったものが2000年には1100億ドル(100円換算で11兆円)になったという。
    対して、日本の市場規模は、ネットで「2019年-2020年のファーストフード業界の業界規模(主要対象企業10社の売上高の合計)は1兆1,440億円」という記事があった。
    一方のアメリカは2013年時点で1900億ドルに達しているというデータもあり、この金額を3.28億人(米国人口)で割ると、赤ちゃんから老人までを含めて1人年間約6万円をファストフードに費やしていることとなり、我が国とは文字通り桁違いだ。

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  • 最近、ベンジャミン氏の書かれた「マクドナルド化する世界経済」を読み、そこで参照されていたので、この本を読んでみました。

    この本には、現在のアメリカの食生活が以前(せいぜい30年前)と比べて劇的に変わってきたことをレポートしています。綿密な取材のもとに書かれたことが、本を読んでいて分かりました。

    しかし読み終わって更に気づいたことは、この本は今から13年前(2001)の、あの911の前に書かれているということです。それ以来、ファーストフード食品は更に増えている気がしますので、現状はこの本に書かれているよりも進展していることでしょう。

    私は生産効率を上げて低価格になれば良いと考えていましたが、アメリカでは低価格にするために、食肉加工から牧場に至るまで、健康の面からみると正しいと私から見れば思えないやり方を進めているようです。これにより中小の企業は大企業に合併させられ、良心的な経営をしていた企業もそれらに呑み込まれているようです。

    いまTPPの交渉が闇の中で行われていて、交渉経緯が約束事とはいえ殆ど明かされないなかで進んでいます。アメリカで起きている現象が日本に持ち込まれないようにと願いたいものです。

    以下は気になったポイントです。

    ・マクドナルドは、米国最大の牛肉・豚肉・じゃがいも購入者、二番目に大きい鶏肉購入、また世界一多くの店舗用不動産を所有している、利益の大半は、食品販売でなく家賃収入から得ている(p11)

    ・アメリカファーストフードの、味・匂いの大半は、ニュージャージーの大化学工場で製造されている(p15)

    ・汚染されたひき肉の販売を阻止しようとする試みは、何度となく食肉業界のロビイストによって退けられた、汚染された食肉を回収する権限はない(p18)

    ・ロサンゼルスの自動車台数は1940年で100万台、他の41州の合計保有台数よりも多かった、鉄道会社は軌道敷設費や維持費を自ら負担するが、自動車会社は公共支出で道路建設をさせた(p25)

    ・GMとその協力会社(マックトラック、ファイアストーン、スタンダードオイルカリフォルニア)は、1947年に連邦独占禁止法違反(トロリーシステム買収)で起訴された(p26)

    ・マクドナルド兄弟は、客層拡大のために、若い男のみを雇った、それにより家族連れが来た(p32)

    ・クロックが25万ドルの献金をしたとき、マクドナルド従業員の時給はおよそ1.6ドル、それを20%低くできる法律(マクドナルド法)をニクソンは承認した(p54)

    ・マクドナルドでは清涼飲料は最も利幅が大きい、それもサイズが大きいほど(p79)

    ・ほかの小売店ではクレジットカード決済が多くなってきたが、フ
    ァーストフード店ではほぼ全て現金決済(p117)

    ・冷凍フライドポテト業界は3つの会社に集約された、規模で劣るライバル企業は撤退か買収された(p158)

    ・過去25年間でアイダホのじゃがいも農家はほぼ半分になったが、じゃがいも作付面積は増えた、家族経営農場が企業農場に吸収されたから(p161)

    ・ファーストフードのフライドポテトの風味は、かなりの部分まで揚げ油で決まる。大豆油7牛脂93の混合油で揚げていた、これが風味の秘密、キロ当たり飽和牛脂量がハンバーガーを上回ることになる(p164)

    ・IFFは世界最大の食品香料メーカであるうえに、高級香水の米国内売上上位10ブランドのうち6ブランドに製造している(p167)

    ・ピーマンの匂いの基調になる成分は、10億分の0.02の濃度で、5つ分のプールに1滴たらすだけで、ピーマン風味になる(p172)

    ・天然香料は、つまり時代遅れの工程で抽出された香料のこと、天然香料も人工香料も変わらない(p174)

    ・米国内各地の肉牛市場で売買される牛の80%は専属供給、その価格はけして開示されない(p191)

    ・精肉加工は危険な仕事ではあったが、賃金のよい望ましい仕事であった。1960年代初めまで業界最大手だったスウィフト社は大手5社のなかで最後まで個人経営スタイルを捨てなかった会社、この会社の重役だった二人が独立してIBPを作った(p211)

    ・IBPの低賃金と、最新の生産技術が、牛肉業界全体の風景を、肥育場から肉屋の店先に至るまで一変させた(p213)

    ・レーガン政権は、数百社の中小の精肉業者が業界から姿を消していく趨勢に歯止めをかけなかった、それどころか、反トラスト法を適用して業界最大手を牽制する動きに反対した(p219)

    ・IBPの弁護士いわく、新規採用はある程度の経費削減になるとコメント、保険対象・有給休暇は採用の1年後なので(p223)

    ・IBPは1997年に、1967年から本拠を構えていたネブラスカの本社をたたみ、法人税・所得税が課せられない、サウスダコタ州へ引っ越した(p228)

    ・シカゴの精肉工場では昔は1時間に50頭程度解体していたが、いまでは400頭前後を処理している(p239)

    ・1981年に労働安全衛生局は、新たに自主遵守の方針を導入、抜き打ち検査はできなくなり、会社の生涯記録に目を通してから出ないと工場に入れなくなった(p248)

    ・IBPをはじめ精肉大手は、自家保険制度を採用しているので、保険会社から圧力はかからず、労災給付を最低限に抑えるインセンティブが強烈に働く(p256)

    ・食品医薬品局の現行規定において、ブタや馬の死骸は、食鳥類の死骸とともに、牛の飼料として与えて良いことになっている(p281)

    ・ハドソンフーズのネブラスカ州コロンバスの工場は、HACCPプランのもとで操業していながら、1997年に1.6万トンの潜在的汚染肉を出荷していた(p300)

    ・インアンドアウトは、カリフォルニアとネバダ州に150店舗を展開して、1.5億ドルの利益を上げている。パートタイマーの時給は8ドル以上、ファーストフード業界で最も高い給料(p362)

    ・マクドナルドは、シンプロット社に対して「遺伝子組み換えのじゃがいも」は買わないと宣言した、そしてバイオジャガイモの売上が一気に減退した(p376)

    2014年2月2日作成

  • 私はファーストフードは慣れていなくて、年一回入るか入らないくらいのペースできた。入っても飲み物だけとか、そんな具合。自分の勘以上に、いろいろあるのはわかる。
    たしかに、普通の肉だろうが、毛皮のできる裏には、ここに書いているような残酷さはある。それは過去にもたくさん書かれてきた。しかし、o-157の原因やら…。
    一読の価値あり。

  • 本書は主に米国のファストフード事情について書かれているため、国内の同一チェーンの実態とはやや異なる部分があることには注意したほうがいい。特に店舗レベルでの衛生管理基準は日本のほうが格段に厳しいし、実施も徹底されている(もちろん米国と比較しての話であり、個別の店舗によって差もあるが)。

    ただし、原材料となる食肉がそもそも加工の段階で汚染される危険があるのは日本の場合も同様で、これは店舗レベルの施策では防ぐことができない。実際に店舗の衛生状態には異常がなかったにもかかわらず、食中毒が発生した事例がある。

    本書はこうした問題の本質をフランチャイズの業態そのものに見出だすもので、以上のような話題について関心のある人には参考になる本だと思う。

  • 久しぶりのフォトリーディング。感想なし。ちょっとゾクゾクする面白さかな。高速リーディング。途中で疲れてきたので速読。面白い本だと感じるのでこの後普通に読んでみる。読み方も違いがどう出るか。
    かなり暗くなる内容だったので高速リーディングを所々いれて読了。

  • この本を読んでから、●●●●●ドは一切食べなくなりました。

  • 怖い本だった。。
    マックとかもう食べられない。

  • 戦後に日本の食は欧米化が進んだが、アメリカの食文化も大変化したことをはじめて知った。アメリカ人はハンバーガーとフライドポテトばかり食べている・・・アメリカ社会の隅々にファストフードが浸透したのはこの30年足らずの間、という事実にびっくり。
    「あなたが月に2回それを食そうと、できる限り避けていようと、あるいはこれまで一口も食したことがなかろうと、決して否定することの出来ない事実である」という文章に納得。確かにそうだ。
    私はアンチファストフードであるが、だからと言ってファストフード社会が浸透しているのが事実であり、この社会で私はどう生きていくかを考えていくしかない。
    ファストフードが浸透する背景をこの本でさまざまな角度から知り、とても衝撃的だった。
    女性の社会進出は男女平等だとばかり思っていたが、生活費を捻出する必要にかられて、という社会経済状況があったこと。女性の社会進出により外食が増え、冷凍食品、ファストフード産業のめざましい成長に繋がった。
    契約農家をもっての販売戦略は日本でも今では主流であるが、企業が食品供給に影響力を持ち始めると農家や漁業、酪農業など第一次産業は大打撃をうける。
    業務の効率化を図り作業を標準化することは生産性を向上させるが、そのデメリットとして、誰でも出来る簡単な労働に、高度な技術や熟練労働者は不要となった。代わりに安い雇用の需要が高まった結果、派遣労働者があふれ返っているこの現状。あまりにもこのデメリットは大きいのではないかと思う。
    日本は食以外でも、とにかくアメリカ化している。なぜこんなにアメリカになろうとしているのかがわからない。なにがそんなに凄いんだろう。わからないから知りたくてたまらない。だから私はそんなアメリカと日本にすごく興味がある。そしてアメリカ化している事実を受け止め、私はこの社会でどう生きていくかを考えるのだ。

著者プロフィール

アメリカのジャーナリスト。既刊にベストセラーとなった『ファストフードが世界を食いつくす』『ファストフードと狂牛病』『おいしいハンバーガーのこわい話』『巨大化するアメリカの地下経済』。

「2018年 『核は暴走する 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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