日本のピアノ100年―ピアノづくりに賭けた人々

  • 草思社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794210869

作品紹介・あらすじ

戦後、日本はいくつもの世界トップクラスの製品をつくり出した。カメラから始まって、船舶、自動車、家電製品など。その中で忘れてならないものの一つにピアノがある。日本で初めてのピアノがつくられたのは今から百年前だが、戦前は工場の規模こそ世界でもトップクラスになっていたものの、質の点では欧米の製品に比ぶべくもなかった。しかし、戦後状況は一変する。高度成長で資金を蓄積したピアノ・メーカーは、新しいコンサート・グランド・ピアノの開発に情熱を傾ける。そしてついにリヒテルやグレン・グールドが愛用するピアノをつくり、日本を世界のピアノ王国にした。これはピアノづくりに情熱を傾けた人々の初めての本格的物語である。

感想・レビュー・書評

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  • 数年前に中古ピアノを買ったときから日本のピアノの歴史に興味があったので、読んでみました。タイトルより、単なる資料的な本かと思っていたが、さにあらず読み物としてもかなり楽しめる本でした。明治時代、剣術の達人(!)だった流しの職人、山葉寅楠がたまたま舶来のオルガンの修理を依頼されたところから、いわゆる「YAMAHA」が始まった、とかなかなかドラマチックです。しかし驚いたのが、ピアノメーカーとしてかなりの地位を築いた段階でも、日本の大メーカーにはそもそもピアノを弾く人がいなかったらしいということでした。判断基準は人ではなく、測定器だったんですね。それはそれで良い面もあるとは思うのですが、やっぱりカメラでも車でもそうですが、一時代前までの日本製品の、なんかこう「抜けの悪さ」的な限界はそこらへんにあったんだと思います。個人的には、ヤマハの普及型のピアノはどれも「ヤマハ」臭のする音がして、それがなんかこう、小学校やピアノ教室が思い出されて好きではありません。一方でそういう特色を持った製品をあれだけ大量に生産するという技術はやはり凄いんだと思います。また、少量生産で頑張って良いものを作ろうとしていたところもありました。それが大橋ピアノとイースタインでした。大橋は確かに別格な音がします。イースタインは弾いたことありませんが弾いてみたいですね。

  • とても興味深い内容だ。
    津田梅子が8歳で渡米して西洋音楽を学んで日本に持ち帰ったこと、武士階級の山葉寅楠がオルガンの修理をきっかけに楽器製作に入ったこと、山葉の同僚の河合が河合楽器を立ち上げたこと、戦後日本のピアノが世界一になる過程など。
    ピアノ好きなら必読。

    読了120分

  • 日本でピアノが製造されるようになって約100年。戦前から戦後にかけて海外のピアノと競った日本のピアノメーカーの歴史をつづっています。良い音とは何か、海外のピアノに勝るものを作るにはどうしたら良いか。世界一のピアノを作るという夢を追った人々の挑戦が始まります。

  • 出口治明著『ビジネスに効く最強の「読書」』で紹介
    欧州から輸入したピアノの製造技術を、いかにして世界一に仕上げたか。知られざる産業史が見える。

  • 日本最初のピアノの製造が1900年。その後、技術者の努力によって世界の市場に通用する楽器として育っていく。ヤマハ、カワイなどのメーカーとともに、小さなピアノ製造業もあったという史実も興味深い。スタンウェイとの競争、リヒテルが愛用したことによって次第に認められていくという過程が綴られている。

  • ピアノ産業という狭く奥深い業界の歴史が、割合中立的な視点で描かれている。人物に関する叙述も多く、日本でピアノづくりが始まって100年という短い間でどのような苦労と努力で世界に伍するピアノを生み出せたのか、よくわかった。

  • 戦前、戦後、日本のピアノ造りの歩みがわかる

  • ほぼ「ヤマハの歴史」。
    日本人が必死で西洋音楽を取り入れてきた様子がよくわかっておもしろい。

  • 登場人物がかなり多いのと、またそれぞれが有機的に絡まり合っているため、それを覚えて理解するのは大変だ。

    だが、黎明時の歴史書として大変刺激的に読める。
    非常に楽しい。

    創業者は音楽家ではなくビジネスマンの会社がどれも
    勝者になっていくのはやはり、と思う面もあるが
    どことなく寂しいものだ。

    後半の著者になってからずいぶん読み物として面白くなる。開発者の思いが (正確かどうかは別として) 伝わってきて、プロジェクトX ばりの臨場感がある。

    コンサートグランド作りに非常に苦労していたところを
    、ミケランジェリの専属調律師のタローネが1ヶ月協力しただけで躍進するなんて嘘臭いが、とにかく木の扱いに難航したのは想像に難くなかった。

  • 江戸時代が終わって文明開化辺りから2000年までのピアノの歴史。
    YAMAHAが日本のピアノメーカーの元祖だから仕方買いのかもしれないけどKAWAIユーザーとしてはKAWAIももっと取り上げて欲しかったです。

    1つのメーカーの中でお手本とするピアノメーカーが時代によって変わり、
    それによって1つの日本のピアノメーカーの音色も変わる。戦争を挟んだことによってピアノ製作の方針を変えざるを得なかったりと
    作った当時のままの音ではいられないと言うことがわかった。

    だから、YAMAHAがキンキンしている音。
    KAWAIが柔らかい音と固定して覚えない方がいいと思う。

    本が分厚いので
    持続して読めるかは人によるかも。

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著者プロフィール

前間 孝則(まえま・たかのり)
ノンフィクション作家。1946年生まれ。石川島播磨重工の航空宇宙事業本部技術開発事業部でジェットエンジンの設計に20余年従事。退職後、日本の近現代の産業・技術・文化史の執筆に取り組む。主な著書に『技術者たちの敗戦』『悲劇の発動機「誉」』『戦艦大和誕生』『日本のピアノ100年』(岩野裕一との共著)『満州航空の全貌』(いずれも草思社)、『YS-11』『マン・マシンの昭和伝説』(いずれも講談社)、『弾丸列車』(実業之日本社)、『新幹線を航空機に変えた男たち』『日本の名機をつくったサムライたち』(いずれもさくら舎)、『飛翔への挑戦』『ホンダジェット』(いずれも新潮社)など。

「2020年 『文庫 富嶽 下 幻の超大型米本土爆撃機』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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