神秘な指圧師 (V.S.ナイポール・コレクション 1)

  • 草思社
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794211132

感想・レビュー・書評

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  • これは日本語翻訳で読んだらアカンやつや~~。
    トリニダード・トバゴ英語を尾道・広島弁に訳す、
    翻訳者の方のご決断、ご苦労はよく分かるのだが、
    こういう作品ってどうしたら良いのだろうな?
    英語原文を読まない限り、
    作者が本当に意図するところはとらえきれない。
    すっとぼけたお話は面白く読んだが、
    自叙伝的性質を考えると終盤辺りの展開では、
    サー・V・S・ナイポールは、
    ポストコロニアルの民族主義とは一線を画した人であることがよく分かる。

  • おお! なんてこった!
    ラストで私は翻訳調に叫んで頭を抱えた。
    本書は英国植民下のトリニダードの片田舎を舞台に、インド人ガネーシュが立身出世していく物語である。
    しがない教師・浪人・指圧師・神秘家となりゆきで職を変えて成功し、念願の著作の好評も得て有名になる。ものすごく適当で破天荒な展開。しかし、ベースにはトリニダードのインド人社会のしがらみがたっぷりと描かれている。
    神秘家として精神的な悩みを解決することで評判になったのち、政治に転じてガネーシュは人々のことを考えて結構まともな動きをする。なんだか普通になって面白くないなと思っていたら、大きく挫折し、転向してしまった。
    社会主義とヒンズー教の融合とか言っていたガネーシュは堕落し、英国植民政策を支持する側に回ってしまい、地元の議席を失う。
    しかし、その後MBE(大英帝国勲爵士)に叙せられる。ロンドンにやってきたガネーシュは英国風に改名し、すっかり英国かぶれのようになっていた。

    なんという終わり方。主人公がすっかりだめな人になって読者をがっかりさせて終わる物語……
    斬新すぎる。最初と最後に出てくる語り手の「わたし」はこのような人を観察していた作者の分身なんだろうか。トリニダードの人々に対する愛と批判の入り混じった複雑な見解がこの作品にはたっぷり盛り込まれているのだろうな。

  • 翻訳の方言に驚く。
    習俗・習慣が伝わってきて興味深く読む。

  • ミゲルストリートが面白かったから読んでみた。登場人物が全員イカレチンポだったミゲルほど面白くはなかった。
    でもキャラクター同士の喧嘩の要因やすれ違いが日本で暮らしてる限りはありえないモノばかりだったのは面白かった。大げっぷ女史ってなんだよ。
    ずっと腐ってるガネーシュが好きだったから後半の成り上がりは少し冷めた。成り上がるんだろうなと思ってたけど、ずっと不幸せであって欲しかった。

  • 著書のインタビューで個人的な事を聞かれると即座にキレかかる人間が、聞かれてもないのに敢えて自伝的と言ってしまってる作品。現地の人間は教養がなく、雰囲気に扇動され物事を決めて行く。1人の男が「自分は指圧師でありいずれ本を出す」と言い、その見込みは全然ないものの、あの人は学校を出て学があるのだから他の人とは違う、というだけで周囲も動かされ相当のしあがる。作者は自分は本出しただけなのに、周りが勝手に付加価値を付けて、全くやりにくい、とでも言いたかったのだろうか。かなり自分の国をディスってるんだよな。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:933.7||N
    資料ID:50200015

  •  ナイポール作品、2冊目読了。
     『ミゲル・ストリート』の最後の章で出て来るガネーシュが主人公の話。ミゲル・ストリートの住人への視線に比べると、ガネーシュへの視線には遠くから見ている感じがある。
     雲に追いかけられている少年の話あたりまでは、まあ楽しめたけれど、ガネーシュが時流にうまくのって社会の位階を昇っていくあたりは、さもありなん、という感じだった。ラストのガネーシュの台詞は、イギリスにそこまで同化したということか。
     ナイポールは紀行文学が本領と聞くので、そのうちそちらも読んでみたい。

  • 広島弁にひかれて読んだ。終始うさんくさかったが、夫の暴力が容認されている供述に驚いた。リーラの辛抱強さがはんぱない。

  • 2001年度のノーベル文学賞受賞作家の1957年のデビュー作。V.S.ナイポール選集の1として2002年に翻訳発行。
    英領トリニダードって、どこ…?カリブ海にある小さな島だそうで。
    インド系移民3代目の作者は1932年生まれ。オックスフォード留学、BBC勤務。
    迷信もはびこる島国で、指圧師は勝手に名乗るためにやたらに多かったという。
    辺鄙な村で、いつか本を書くと言って本を買い溜めて暮らしている青年ガネーシュ・ラムシュマイア。
    ついに本を出すが全く売れず、妻のリーラにも愛想を尽かされそうになる。
    なぜかあるとき急に指圧師として成功する、といっても指で揉むわけではなく、精神療法とでも言うのか…治療家として開花したのだ。
    義父ラムローガンは財産家で商売上手、若い頃には目を掛けてくれた人だが、持参金で揉め、タクシー料金の独占つり上げを許せずにガネーシュが買い上げて恨まれるなど、波乱が。
    しだいに地域で重きをなし、議員となり、ついにはMBEという爵位(勲爵士)まで受ける…?
    あくの強い登場人物達のおかしさ、転がる人生の妙味。
    トリニダード・トバゴという国の特殊性、19世紀半ばから1976年に独立するまでは英国領だったために英語は通じるが現地化した独特な言葉になっている。それを生かした語り口で高く評価されたそう。

  • トリニダード出身のノーベル賞作家のデビュー作。トリニダード島の片田舎に住むニート同然の青年が、胡散臭い指圧師から最終的にはイギリスの爵位をもらうまでに至る遍歴。
    植民地文化を鮮明に、かつ若干批判的に描くタッチは実にナイポールらしい。登場人物はどいつもこいつも風変わりで、ストーリーも奇想天外。読んでいて楽しいし、植民地文化がよく分かるため、文学的にも小説としても価値があるといえるのでは。

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V.S.ナイポールの作品

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