からくり民主主義

著者 :
  • 草思社
3.49
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本棚登録 : 169
レビュー : 37
  • Amazon.co.jp ・本 (285ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794211361

感想・レビュー・書評

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  • 掲載誌もテーマも異なる短編(ノンフィクション)を、10作品詰め合わせたもの。
    それぞれの記事の背景にあるものは、複雑にこじれてしまい、もうにっちもさっちもいかなくなってしまった社会問題の現状か。
    いずれも、結論は記されていない。両論併記を配慮した結果というより、現状をありのままに記述したら、そうなってしまったという感じ。読み手が確実にジレンマに陥るであろう、もやもやと霧がかったようなルポルタージュの数々は、まるでテレビの深夜ドキュメンタリー番組を観ているかのよう。
    それでも、本書はおもしろい。論のキレ味の悪さを、着眼点のユニークさでカバーしているからだ。
    なかでも、小さな親切運動、世界遺産の白川郷、若狭湾の原発銀座のエピソードは目からウロコが落ちた。

  • 高橋秀実が続いてしまったが、偶然。『定年入門』は単なる老人インタビューといった赴きだったが、本書は世界遺産、原発、諫早湾、辺野古既知問題、横山ノック・セクハラ問題といった社会問題に鋭く(鈍く?)斬り込み、現地の人々の声を拾った秀逸なルポとなっている。一方で、真実や本質に関する考察はそっちのけで、とにかく問題を煽ることしか考えていないマスメディアの姿も浮き彫りにされる。

  •  雑誌などで見かける「大人向け」の記事が、どのくらい「大人」を対象にしているのか、考えたことはあるだろうか? 私はどっかで「12歳にわかるように書け」というという心得を目にしたことがある。これは文章表現としての話にとどまらない。「わかりやすい文章」というのは、わかりやすい論理展開と、わかりやすい結論の提示が必要なのだ。それこそ12歳でも理解できるくらいに。

     この本の著者は、その「わかりやすい結論」に、どうやら飽きが来た人らしい。もとテレビのADということが序で明らかにされるが、テレビの「わかりやすさ」指向は、雑誌の比じゃない。ストレスもたまろうというもんである。
     諫早湾、沖縄、上九一色村……流行から2歩も3歩も出遅れて、話題のニュースの現場を訪れる著者。ところが目の前には、まことにわかりにくい構図がでーんとのさばっている。明確な悪者はいないし、善意の正義の味方もいない。欲と勘違いと思考停止がのさばっているばかり。その「わかりにくさ」を、著者はなるべく手触りを残しながら、ユーモアで包んでそっと差し出すように書いていて、それが本書の最大の特徴になっている。
     たぶんテレビ・新聞・雑誌の記者にも同じように「わかりにくい現実」は現れたはずだ。しかし、報道の宿命として、彼らは目の前の現実を、12歳にもわかる構図にゆがめてしまう。昨日も今日も、そして明日も。

     著者の感じた結論のでない違和感を、そのまま味わうのが本書の醍醐味。なげっぱなしジャーマンを素直に楽しめたのは、著者の見事な文章のおかげ。結論がすっきりしない話を読ませるほうが、単純明快な話よりよほど芸が必要である。
     やっぱ、12歳じゃ大人とは言えないよな。このわかりにくい世界を、わかりにくいまま芸にした、著者にあっぱれである。

  • 友人たちと開いた勉強会を通じて読んだ本、日本国内に存在する社会問題(っぽいもの)を取り上げ、その問題の近縁でたまたま生きる人々の意識と、マスメディアによって醸成された現地のイメージの間に亀裂を入れてくれる一冊だと思いました。実際そこの地域の人たちはその問題で困ってる(もしくは、困ってて欲しい)と思っている自身の思考に対して、実はその問題によって儲かっている現地の人々がいたり、その問題に対し想像以上に無関心でまったりしていたり、社会問題化することによって対立が生まれていたりする現状は、固定観念で固められそうになっている自分の頭に軽いヒビを入れてくれると同時に、「あ、やっぱりメディアが報道するような偏った現状じゃなかったんだ」というちょっぴりの安心感も与えてくれました。

    本の取り上げている社会問題は多岐に渡り、倫理的に取り上げにくい内容もありますが、全体的にポップに、軽い笑いを交えて書かれているので、とても読みやすいです。あとがきにて、筆者が以下のように書いているのですが、私は以下の文章が本のメッセージそのものだと思いました。

    "表からは見えにくいのですが、理想を語るということは、同時に、それがかなえられていない「みんな」をつくります。例えば「平等」。事情は人それぞれ、と思っていれば関係ありませんが、「平等であるべき」とされた途端、そう思っていた人も「不平等」な存在になります。人は不平等だから平等を求めるのではなく、「平等であるべき」だから「不平等」になり、ひるがえって「平等」を追い求めるようになるのです。こうして理想から逆算されて、「みんな」はつくられてゆきます。"

    こうならないように配慮しながら、もしくはこういう状況になりそうになった際注意してくれる人と、何かしたり、生きていきたいし、誰かにとって自分もそうありたいと、思いました。

  • 2012.3.4読了。

    この世に結論はない。社会に答えはない。白黒はっきりさせずに、グレーの中を漂うのが大人なのかもしれん。

  •  奥田秀朗氏推薦。
     世の中で騒がれていることの裏の裏を取材して分かった、思わず笑っちゃうエピソード。

  • 個人的には隠れた村上春樹本(解説が村上春樹なので。)だと思ってます。養老さんもバカの壁で取り上げてました。

  • 民主主義、と難しそうな題名ですが内容はかなり噛み砕かれていてすんなり読めます。

著者プロフィール

ノンフィクション作家。1961年、横浜市生まれ。東京外国語大学モンゴル語学科卒。テレビ番組制作会社勤務を経て、作家に。開成高校野球部の奮闘を描いた近著『弱くても勝てます』がベストセラーに。
『ご先祖様はどちら様』で小林秀雄賞受賞。

「2015年 『損したくないニッポン人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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