名古屋人と日本人

著者 :
  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794213723

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  • 保守的で目立つのを極度に嫌う「名古屋人」の性質を、さまざまな実例に少しの虚構を混ぜて平易に書いている本。本書にも書かれているが、日本における名古屋の位置づけと、世界における日本の位置づけは構造的によく似ていると言われているので、本書を名古屋人が読んでニンマリするだけではもったいにゃーと思わないでもない。

    【川崎市立宮前図書館 361.4】

  • 近年、最も注目を集めている地方都市は、名古屋をおいて他にあるまい。
    私の身の回りでも、元々全く縁もゆかりもなかったにもかかわらず、
    どういうわけか名古屋で働いているという人間が3人もいる。

    何の縁もなかった人間を呼び込む吸引力というのは、都市の力そのものだ。
    実際、失業率も低く、有効求人倍率も高く、
    『日本で一番最初に不況を脱した都市』といわれる名古屋って
    一体どんな所なのだろう。

    本来なら、友達がそれだけいるのなら、一度訪れるのが早いと思うのだが、
    1歳の娘を抱えてそんなことも言っていられない…
    と思っていた矢先に見つけたのがこの本だ。

    名古屋育ちで東京在住という筆者が、名古屋について、衣食住を
    語りまくっている。
    最初はどことなく「ケチだ」「保守的だ」「これといって見る物がない」
    などと自虐的な論調であったにもかかわらず、途中から大いなる
    「名古屋自慢」「名古屋賛歌」になり、しまいには
    戦国時代の信永・秀吉・家康がいずれも名古屋出身ということを
    声高らかに語り、「名古屋こそ日本の原点だ」とまで言い切る
    典型的な「お国自慢」になってしまっているが、それはそれで面白かった。

    それによると、名古屋人の精神の根底に流れているキーワードは、
    「お値打ち」ということらしい。
    あらゆる物に対して、呆れるほど貪欲にコストパフォーマンスを追及する。
    それは異常なまでのボリュームで知られる喫茶店のモーニングセット
    でも顕著だし、その精神が、トヨタの車の国際競争力を高めている
    というのが著者の理屈だ。

    一方で、「お値打ちでないもの」には見向きもしないという姿勢は
    極端なまでの保守主義、ブランド信仰、流行に左右されない頑固さにも
    結びつく。『名古屋嬢』のわかりやすいキャラクターや、地場企業に
    無借金経営が多いのも、その精神の表れという。

    そして、一見極端に見えるこうした名古屋の特徴は、
    本来少し前の日本では誰もが抱いていた特質であり、
    結局のところ、『名古屋ブーム』というのは日本人の原点回帰現象に
    他ならないというのが著者の見解のようだ。

    意図的なのかどうなのか、あらゆる面においてかなりステレオタイプな
    記述に終始しており、結局のところ、実際に現地を訪れ、現地の人と
    話をしてみないと、本当のことはわからないけれど、
    少なくとも、『一度行ってみたいな』と本気で
    興味を起こさせてくれる本ではあったと思う。

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著者プロフィール

1950年生まれ。愛知県立明和高校から東京大学文学部へ。卒業後、出版社勤務を経て編集企画会社エディットハウスを設立し、出版プロデューサー、ノンフィクションライターとして活躍。著書に『新・出身県でわかる人の性格』『新・不思議の国の信州人』『日本全国都市の通信簿』『名古屋学』『博多学』『札幌学』『広島学』『鹿児島学』『「城下町」の人間学』『語源に隠れた世界の歴史』ほか多数。

「2016年 『「いい夫婦」の旅術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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