原爆を投下するまで日本を降伏させるな――トルーマンとバーンズの陰謀

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  • 草思社
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レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794214089

作品紹介・あらすじ

トルーマンはなぜ人口稠密な日本の都市に無警告で2発の原爆を投下したのか。なぜそれは8月6日、9日でなければならなかったのか。そして戦後、百万のアメリカ兵を救うために原爆を落としたとの虚構が、あるいは首相鈴木貫太郎はポツダム宣言を黙殺したという伝説が流布されることになったのはなぜなのか。原爆投下にいたる4つの日付けを手がかりに、トルーマンとその最側近バーンズ国務長官が密かに進めていた計画の核心に大胆な解釈を加え、真相に迫る。太平洋戦史を一変させる労作。

感想・レビュー・書評

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  •  本書は、昭和20年(1945年)6月から終戦時点までの日本の指導層の動きと、アメリカ指導層の動きを詳細に追いかけてものであるが、当時のアメリカ大統領トルーマンが原爆を日本に投下するために、日本の降伏を原爆投下後までさせないための工作を行ったと主張するものである。
     著者の著述の手法は、これまでの著作を読んでも、膨大な資料と詳細な文章に特徴がある。その精密な著述は、あたかもリアルタイムのドキュメンタリーを読んでいるように思えるほどに臨場感にあふれている。
     しかし、本書のトルーマンの陰謀説は、一部でささやかれている「トンデモ説」だろうではないか思う。本書でも、肝心の部分は、推測と憶測に終始しているが、その主張には相当の飛躍があるようにも読めた。
     ただ、当時の日本陸軍が大陸で行った「1号作戦」についての詳細は興味深かった。中国大陸における国民政府、中共党、アメリカ、日本陸軍のそれぞれの動きのなかで、歴史をみると最終的な勝利者は中共党である。結果的にみると、いわば日本陸軍が中共党の覇権を育てたことになると、本書を読んであらためて思った。
     また、当時の日本の指導層が、なぜ、当時のソビエトが和平の使者になると期待したのか、なんとおろかなことかと痛感した。
     本書を読んで、まだまだ日本はこの敗戦時の歴史認識の共有が不足していると思った。事実関係さえも、いまだに新しい知見がでてきている。本書の「トルーマンとバーンズの陰謀」説はいただけなかったが、その他の著述部分はとても興味深く読めた。

  • <span style="color:#000000"><span style="font-size:medium;"><img src="http://yamano4455.img.jugem.jp/20071219_412811.jpg" width="100" height="144" alt="鳥居民" style="float:left;" class="pict" /> 「原爆を投下するまで日本を降伏させるな」<br style="clear:both" />
     ショッキングな題名である。戦後日本に、ステレオタイプに信じられてきた、トルーマン大統領(原爆投下を指示したアメリカ合衆国大統領)は、戦争の早期終結のために、原爆投下を指示したという俗説に、問題提起を投げかける著書でもある。

     著書の冒頭「はじめに」この本の主題が書かれている。

     「アメリカ大統領ハリー・トルーマンと国務長官ジェームズ・バーンズの二人は、原爆の威力を実証するために手持ちの二発の原爆を日本の二つの都市に投下し終えるまで日本を降伏させなかった。」

     歴史的事実と事実の間を著者の推論で埋めている。推論であるが、一つ一つは、なるほど間違いなかろうという推論が重ねあわされている。ただ、その推論の隙間を埋めるものがなかなか見当たらない。また、見つけ出そうという作業、もしくは、その試みだけでも大変なバッシングを浴びかねない。

     但し、トルーマンは、戦争の早期終結のために、原爆投下を指示したという、あまりにも単純化されすぎている説にはとうてい賛同できないという識者は多いし、また、ほんの少しその時代のことを勉強すれば、あり得ないことだということはすぐに分かる。

     「しょうがない」なんていう輩は道義的には言うまでもなく、一定の識者としても落伍者である。

     トルーマンの当時のアメリカ国内における立場(評価)、第三回の三か国首脳会談を大きく引き伸ばした事実(本当に、戦争を早くに終結したければ、チャーチルが希望したように実際に行われた日の一月以上前に行うべきであった)、ポツダム宣言を書き上げる際、日本が受諾しにくいように、陸軍長官スティムソンの原案から天皇の地位保全の条項を削ってしまったという事実等々、どのような思いに至るにしても、あまり注目されない、否、知られてはいるが、日米双方からあえて触れられることのない、これら客観的事実をしっかりと認識していくことは大切である。いずれにしても、少なくとも、結果から言っても、断言できることは、ソ連が参戦する前に、日本に原爆を落とすことが最大の目的であったということである。既に、日本の敗戦は濃厚であった。アメリカもイギリスもソ連の参戦には同意を出している。しかし、アメリカにすれば、終戦後、ソ連に優位な立場を与えるわけには行かない。そのためには、ソ連の参戦前に、原爆投下(実験)により、アメリカの圧倒的な戦力を見せ付けなければならない。アメリカ側からすれば、当然だったのだろう。戦争を終わらせる前に、トルーマンとしてはどうしてもやっておかなければならなかった。自分自身のために、戦後のアメリカのために。ソ連参戦前ということは、当然、日本が敗戦を受け入れる前である。原爆を落とす前に、日本にポツダム宣言を受諾してもらっては、アメリカとしては困るのである。

     原爆被害のあまりにもの悲惨な状況の前に、全ての議論、いや、思考さえもが封印されてきた。もちろん、その厳粛さに耐えていかなければならないことは、どれだけの時間が経ってもかわることはない。ただ、記憶が薄れるという意味ではなしに、真にこれからの原子力の兵器としての使用を避けるためにも、この議論はしていかなければいけないのではないか。そうでないと、余りにも偏狭な議論ばかりになり、<a href="http://blog.goo.ne.jp/yamano4455/d/20031218" target="_blank">前向きな思考を進めようという話</a>が中々出てこれない。結果として、進歩のないまま、「いつか来た道」に戻りかねない。

     著書に戻る。私は、随所に出てくる著者の推論に、歴史書としては少々閉口したが、読み物として、一つの論証として、大変参考になった。原爆の悲惨さがもちろんのこと、上記のことも理解いただいた上で、読んでみてもよいかもしれない。</span></span>

  • 分類=第2次世界大戦・太平洋戦争・アメリカ合衆国・日本・ヒロシマ・ナガサキ・原爆。05年6月。

  • 一般書ですが、面白いです。

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著者プロフィール

1928年(昭和3年)、東京牛込に生まれ、横浜に育つ。水産講習所を経て台湾政治大学へ留学。台湾独立運動に関わる。現代中国史、日本近現代史研究家。主な著書に『昭和二十年』(既刊13巻)『毛沢東五つの戦争』「反日」で生きのびる中国』『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』(いずれも草思社刊)など。本書執筆には1975年ぐらいから準備し40年ほどを費やした。親左翼的な史観にとらわれていた歴史研究に、事実と推論を持って取り組む手法で影響を与える。2013年1月急逝。享年八十四。




「2016年 『文庫 昭和二十年第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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