女教皇ヨハンナ 下

  • 草思社
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794214492

感想・レビュー・書評

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  • 感想は上巻の方に書きました。

  • エンタメ歴史フィクションとして楽しめた。
    日本や韓国のマンガやドラマ上、男装女子はラブコメ装置として設定されるが、一生残る傷跡(家庭内暴力&異民族の襲撃)を体に刻み、中世暗黒時代&陰謀渦巻く宗教界を過酷にサバイブする主人公ヨハンナは、数ある男装女子ストーリーの中でも至極ハードモード。

    ヨハンナは多くの男性達の嫉妬を引き起こしたが、貧しさと絶望から幾多の人々を救い出し、エピローグにあるように少女の光となってフォロワーが生まれるくだりが良かった。
    中世を舞台にした中での女性同士のエンカレッジメントはいかにも現代的ではあるが、それがあるからこそ古い時代の話でも違和感なく読める。

    読了後に思ったのは、今いる日本の女性政治家は、弱者や女性の励ましになることや後世のことを考えているのだろうか… 政治は男女関係ないだろうが、強者の立場としての言動ばかりというのが残念でならない。ヨハンナのように権力を弱者のために行使する人が出ることを願う。

  • セルギウスの側に付くきっかけになった、初めて診断する時の悪巧みを暴いたその言葉が自分に帰ってきちゃったんだなぁ。

  • いわゆる中世前期の暗黒期の話。完全な男尊女卑の風潮の中で、女性であることを隠しながら教皇になったといわれるヨハンナの伝説を小説のかたちで描いたもの。サスペンスタッチでとても面白かったです。

  • 暗黒の中世とか言われてるけど、この小説の記述からすると全くその通りって感じ。やはり当時は文化的にはビザンチン帝国が繁栄していて、西ヨーロッパはカール大帝が皇帝として戴冠されたものの、文化的に置いていかれていた様子。中世の生活の貧しさや習慣の重苦しさ、独善的な宗教感、政治情勢等を鑑みれば、主人公のヨハンナとその恋人のゲロルト伯の考えはかなり現代的だから、時代になじめないのも当たり前というか、生きる時代が悪かったとしか言いようがありません。ヨハンナはその知性と強運(ほんと強運)でローマ教皇にまでのぼりつめるのだけど、後半教皇になってからはかなり駆け足で話が進むのでちょっと尻切れとんぼ気味でした。セルギウスの主治医として活躍しているあたりが一番面白かったかも。この話は歴史書ではなく、あくまでフィクションであるという前提だと、こういう時代に生まれて懸命に生きる一人の女性に、現代に生きる自分たちを重ね合わせて共感できる部分が多いのですね。そういう意味では女性向けだと思います。それにしても、修道院で10年暮らしていてバレないとは。実在したということだけど今となってはバチカンが認めない限りは真相は闇の中なのでしょう。

  • 意外と面白かった

  • おもしろかった!文句なし。
    女教皇ヨハンナの存在は、カトリック教会が認めず公式記録から抹殺したため証明されていないということだが、あとがきを読んでいると、きっと実在したんだろうと思えてくる。そうでなければ、なぜわざわざ古い写本にそんな記述があったり、フスの裁判で誰からも反論が出なかったりしたのか?読み書きできる人が限られていて文献に乏しい中世の、特に教会にとって実在しては都合の悪い人物について、記録にないから歴史的事実ではない、とは言えないのではないか。

    物語は実際にあった事件や実在の人物を絡めて描いており、当時の人々の暮らしや信仰についてもよく分かる。現代から見れば非科学的すぎる病気の治療法や裁判の仕方など、驚くばかりだ。

    聡明で思いやり深いヨハンナだが、その時代の人間にしては思想が現代的すぎ、革新的すぎる気もする。愛する男性と結婚することはできないが、そばにいて重責を担う自分を支えてほしいというヨハンナの願い、彼女を重荷から解き放って二人で生きたいと願いながらも、その重荷を捨てられずに使命を全うしようとする彼女を支えるゲロルトの恋がせつなかった。

    衝撃的な女教皇の最期は、知ってはいたが物語で読むとまた印象が格別。どうやって記録から抹殺され、またどうやって写本に記述が残ったか、というあたりが、そんなこともあったかもしれないと思えて納得できた。

  • 去年に発行された本ですが、やっと読みました。
    実在した人物か否かはともかく、
    これは小説として面白い。

    女性が勉強をするのは罪だとされ、
    男性より劣っていると、女性蔑視されていた時代。

    しかし知識欲溢れるヨハンナは、その知性で
    男装して修道士となり、陰謀渦巻く教皇庁で巻き込まれつつ、上手く乗り切り、教皇となっていく。
    女であることは隠したまま。

    ピンチになるとノルマン人が攻めてきたりと、
    不自然な程に、とても運がいい。何故か助けが入る。
    知性があるということで、高慢になっている感じも受ける。
    下巻は、恋人であるゲロルトを求める感が強く、
    上巻はよかったのに、結局は恋愛モノなのか?とも思わせる節もありますが、それでも面白いね。
    ラストの行列シーンは、想像しながら読んでいたら強烈でした。

  • 本人作家の書いた本で、ヨハンナの存在は知っていた。

    昔、男性を装いローマ法王まで上り詰めた女性。
    博学ではあったが、少々節操に欠けるタイプで男の人と駆け落ちしたり、彼女が彼女であるとばれたのも儀式の最中、出産したから。 というもので、
    本書 『女教皇ヨハンナ』を読まなければ、ヨハンナに対する私の知識的価値観はこのままだっただろうし、『女教皇ヨハンナ』しか読んでいない読者は、本書のヨハンナ像がそれとなることだろう。

    9世紀、ドイツで生まれた女の子が、ローマ法王となり、公的儀式の最中に出産した。
    彼女の存在は封印され、永久に抹殺された。 というのは同じなのだが、
    ドナ・W・クロスは主人公ヨハンナを、9世紀男尊女卑の風土に生まれたひとりの少女の人生をドラマティックに描ききっている。

    そもそも、歴代教皇名簿からは完全抹消され千年以上前に生まれたヨハンナが実在したかどうかも疑わしい。

    しかし、ヨハンナ伝説は根強く残っており、その存在を実在と仮定する(信じる)ことからこの物語ははじまっていく。

    作者のドナ・W・クロスもヨハンナが実在したかどうかは断定できないとし、ヨハンナはインゲルハイムの生まれで父親がイギリス人、一時期フルダの僧院に身を置いていたこと以外にはほとんどわからないとも書いている。

    したがって、本書は、フィクションとして読む方が楽しめる書物といえるのかもしれない。

    本書の中でヨハンナは恋をするが、その愛は純粋で、産み落とす子供も生涯たったひとり愛した男性の子である。
    聡明で節度を保ち、運命の悪戯からローマ法王の側近となって、気がつけば法王の椅子に座らされていた。
    民衆のことを思い、他方で秘められた愛の炎を燃やしつつ精一杯生きているヨハンナは健気ですらある。

  • 感想は上巻に記載してます。

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