文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794214645

感想・レビュー・書評

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  • ジャレド・ダイアモンドの第2作目が積ん読になっていたので消費する。銃・鉄・病原菌で論じたように、文明の崩壊は単一の理由ではなく、複合的な問題であることを現代の科学を用いて解明していく。
    後半の、グリーンランドとアイスランドにおけるヴァイキング(後のノルウェー)の入植がどのような運命を辿ったのかについては知らなかったので面白かった。グリーンランドではエスキモーとノルウェー人が、お互いに近い土地に住んでいたにも関わらず、ほとんど交流がなかったという。ノルウェー人社会は、エスキモーの極地生活の知恵を借りることなく、西欧式のキリスト教社会の生活を頑なに維持しようと無理な食物生産を試みた結果、あるとき突然、消えていったという事実は興味深い。アイスランドでは人々は生き残ることが出来たが、実は現代の我々が知っている不毛な土地のアイスランドはかつては木々に覆われていた土地であった、というのは驚きであった。かつて栄えた文明の滅亡は、現代の我々にも警鐘を鳴らしてくれる。
    前半のポリネシアの島々における社会の滅亡、特にイースター島においては、大規模な森林伐採が社会の崩壊を招いたことは有名である。それ以外にも、多くの島々で海産物等の資源を使い尽くした結果、人々がいなくなったことが分かっている。また、マヤやネイティブアメリカンの人口減少や遺棄された遺跡の考察も興味深いものである。

  • 再読

  • いくつかの分野にまたがった知識が、歴史に名だたる文明の
    崩壊について紐解かれていく様は、読んでいて特別な本を
    読んでいる気持ちになれる。冒頭はモンタナの著者自身の
    境遇の話で、情緒もありつつ本題に入っていき、イースター島や、
    マヤ文明、北欧バイキングなどおなじみの文明が登場する。
    ただ、文明崩壊の大筋を言うと、どの文明も
    資源乱獲・旱魃→滅亡という決まった展開なので、
    話として退屈に感じる部分もある。
    そう言った点で同著者の本を読んだことない人ならば、
    重鉄病原菌の方を先に読むことをおすすめする。
    あちらの方が単純に読み進める楽しみが大きいと思う。
    値段も少し安いし。

  • 過去の事例より、著者が述べる文明衰退の原因は大きく3つ。①環境破壊②資源枯渇③人口爆発。グローバル化、科学技術の発展により影響を局所化することが困難なため、世界は一蓮托生な状況になってます、との現状分析。「文明崩壊」に共感するのは、"大変だ~"で終わらず"具体的に何ができるの?"まで落とし込んでいる所。著者の本気度と危機意識を感じる。スタンスは現状の深刻さを認識しつつ、希望を失わない「慎重な楽観主義者」だそう。「まだ希望ありそうなので息子つくりました、テヘ」とか言うとるし w

    で、現状必要なことは2つ。1つ目は長期的な思考を実践する勇気。人間の病気でも同じやけど、定期的に検査して予防に力入れたほうが結果的に安上がりなことが多い。目先の問題に対処しつつ、将来に対する想像力を持てるか、てのが必要やと思います。政治家も私たちも。

    2つ目は既存の価値観を捨て去る勇気。マーケティング理論で「イノベーションのジレンマ」いうのがあります。過去の成功体験に足を引っ張られず、変化する状況をゼロベースで分析して残すものは残す、捨てるものは捨てる、その冷静な判断が大事。


    そして、環境破壊の主役、企業にも2つ申してました。1つ目は「環境保護的な経営方針を採らせたいなら、倫理とか良心に訴えず、環境保護が企業の利益になるよう仕向ける」。信用できる団体から認証された製品を購入する、など。団体の例としては、森林管理協議会(FSC)や海洋管理協議会(MSC)。家具のイケアや日本のイオンも参加してました。持続可能な林業、漁業になっているか、というところを見てるようです。余裕があれば少々高くても認証済みの製品を買ってみる、などはどうでしょう。

    で、2つ目は「ビジネスの鎖の中で、一番敏感な輪を狙って圧力をかけろ」。例としては、狂牛病対策に5年抵抗したアメリカの食肉業界が、売り上げ減に苦しむマクドナルドの圧力により数週間で対策受け入れ。金鉱山のシアン化物汚染対策を訴える環境団体がティファニーに圧力をかけ、環境対策に力を入れているリオ・ティントと契約を結んだ事例、などが挙げられてました。そういえば「ザ・コーポレーション」いう映画(本も)ありましたね。

  • 『銃・病原菌・鉄』に続く著作。前作とは逆にどのようにして文明が滅んでいったのか、そしてどうのように危機の回避ができるのかを、多様な地域の歴史と文化・交流と孤立度・環境の科学的な事実の裏づけをとりながら考察していく。前作を読んでいると理解しやすいと思う。
     そして現在、地球をひとつの環境としてとらえなければならない時代に突入している。歴史の教訓に学び未来を考えることの重要性を本当の意味で伝えている必読の書。

  • 気候などの条件のいい時に人口が増えて、条件が悪化した時には抱えきれないほどの人口になっているというところが最も心に残った。全部読むのはしんどいけれど、イースター島の章だけでも読む価値はあると思う。

  • (図書館本)グリーンランドとはどんな島なのだろう。メルカトル図法の地図の左上にあるあの大きな島。子供の時からの疑問が頭の片隅に残っており手に取った。wikiによると地下資源で中東に匹敵する程の原油が眠っているそうな。今後注目の島ですね。閑話休題。グリーンランドの章だけ読んだが赤毛のエイリークが入植してから策略で“緑の国”と命名し人々を誘き寄せたりした歴史と過酷な気候に左右され文明が崩壊していく原因を掘り下げていくのは興味深かった。

  • 文明崩壊のパターンを考察した本。気候変動や痩せた土地、本国から離れた立地などの外部要因のみならず、「逆境に打ち勝った過去の価値観にこだわる」という内部要因があげられてるのが興味深い。
    成功体験を捨てることは、口でいうほど簡単じゃない。

  • 人が文明を作り、社会を作り、そこで生活を営むというサイクルはいかにして終焉を迎えるのか、過去の事例からそれらを学ぶ一冊です。

    モンタナにおける農村社会に差す斜陽は世界の多くの先進国で起きていることでしょう
    イースター島の有名な例、その他ポリネシアの島々、あるいはマヤ文明、そして上巻を締めくくるのはグリーンランドなどに進出していったヴァイキングたちの社会です

    面白いのは似たような社会との比較です。
    グリーンランドの例であれば、同じく北の海に進出したアイスランドなどの島々。そういった存続した社会にあって、崩壊した社会にはなかったものはなんなのか、非常によく分析されており、興味深く読めました。

    環境破壊、気候変動、孤立、内乱、などなど多くの要因が絡まることで最終的に終局を迎えた過去の文明から、我々も学ぶべきことが大いにあるなあと感じました。まずは、下巻を読みます。

  •  『銃・病原菌・鉄』を読んだら、おおとうさんに推薦されたので読んだ。

     大変な力作。

     上巻は、クリーンランドやイースター島など、一時は人が入植したものの、森林破壊、土壌流出で人が住めなくなった事例を紹介。

     まさに、マルサスの原理をそのままに実現した事例でショッキング。

     下巻は、現代の環境問題。考えさせられる。

    (1)環境問題も地球温暖化のような影響がはっきりしないものでなく、具体的な森林破壊や鉱害などを指摘している。自分も消費者として、その海外の製品がどういう環境破壊をしているかを見極める必要がある。

    (2)木材や紙なども実際には森林破壊につながっているおそれがある。もっと日本の木材をきちんと使って日本の森林保全に役立てていく必要がある。

    (3)中国製やベトナム製など製造品でも安いものにあふれているが、本当は、それらが環境にどういう影響を与えているのか知りたい。例えば、中国の環境問題は一衣帯水の日本に無関係でありえない。

     自分でわかる範囲はまだ限られているが、消費者として、もっと賢くならないといけないと強くかんじた。

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著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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