文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)

制作 : 楡井 浩一 
  • 草思社
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レビュー : 84
  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794214645

感想・レビュー・書評

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  • 文明の崩壊は、やっぱり環境破壊が原因でした。
    イースター島、マヤ文明、グリーンランドなど、文明繁栄の背後には、その文明を崩壊させる環境の変化が大きな要因となっていました。
    現代文明も過去の文明崩壊と同様の道を辿っており、今後環境の変化が世界的な規模で影響を及ぼすことが考えられます。過去の事例や現在進行中の事象を併せ、今何をすべきかを考察した本です。

  • 「銃・病原菌・鉄」のダイヤモンド博士の続著。

    人類の歴史では、栄華の限りを尽くしていた文明が、ある時点を境に突然崩壊してしまう。ということが、何度か起こっている。

    『モアイ像』で有名なイースター島や、南米のマヤ文明など。
    今となっては人も住まぬ廃墟になっているが、かつてはそこに、
    世界でも最先端の文明が存在していたのだ。

    筆者は、世界各地のそうした事象に対して、様々な要因を考察している。

    『文明の崩壊』というと、まず思い浮かぶのは、『戦争』だろう。
    異なる国々や文明が戦争をし、その過程で破壊と略奪が行われて
    一つの文明が滅びゆく姿は、悲惨ではあるにせよ、容易に想像がつく。

    しかし、この本では、そうしたことばかりが原因ではないということを
    教えてくれる。
    なんと、戦争もないのに、住民自らが作り出した原因によって
    滅びた文明が歴史上沢山あるのだ。

    そもそもそれだけの文明を築くことの出来た人々が、
    そのような自滅的行動を取るほど愚かだったのだろうかという疑問が当然沸くが、
    その多くは、つまるところ、無意識のうちに自然環境を
    劇的に変化させたことに起因している。

    緑に被われた楽園だったはずの場所も、無計画に木を切り続ければ、
    一本残らず無くなってしまう。
    気が無くなる頃には、草も無くなり、
    そこに生息していたはずの動物も絶滅し、
    そうなると当然食べるものも無くなり…

    イースター島の崩壊はそうやって訪れたという。

    他にも実に緻密な検証が行われているのだけれど、
    つまるところ、自然環境を馬鹿にしていると、
    取り返しのつかないことになるということのようだ。

    昔から、この手の危機を叫ぶ声に対しては、
    『そんなことはない。そのうちそれなりの画期的新技術が開発されて…』
    という楽観論にすがりたくなる。

    しかし、こと、『資源の消費』という視点で考えたとき、
    今の世の中は、かつてのどの時代よりも、激しい消費をしていることは間違いない。

    例えば石油。昔から、『あと50~60年でなくなる』と言われていたらしいが、
    本当に無くなったら、どうするのだろうか。
    高度な技術も、石油がなければ、殆どは何も出来なくなる。

    あまり深刻に考えても始まらないが、たまにはこういう本を読んで、
    そういうことに関する認識を持っておくというのも大切なんじゃないかと思った。

  • コメントはこちら↓
    http://mdef.blog29.fc2.com/blog-entry-17.html

  • 文明の盛衰を社会学的視点だけでなく、かといって環境的視点だけでもなく、両者の視点をあわせて考察した力作です。社会の崩壊の潜在的要因を、環境被害、気候変動、近隣の敵対集団、友好的な取引相手、環境問題への社会の対応の5つにまとめ、様々な社会の崩壊の原因を分析しています。

    崩壊した社会の事例としてイースター島やマヤ文明などを取り上げており、それぞれ崩壊の要因の組み合わせは異なるものの、取り上げた過去のすべての社会において森林破壊や土壌問題が崩壊の要因であると分析しています。太平洋の島々において、元々の環境の優劣によって森林破壊の度合いが変わるとか、オーストラリアの貧弱な土壌などの指摘は、人間の生活がいかに生態系に依存しているかを思い知らされます。

    一方で、社会の対応によって運命が変わることも強調されています。グリーンランドに寒冷期が訪れた際、ヨーロッパ式の文化を捨てなかったヴァイキング社会が崩壊した一方で、環境の変化に生活を合わせたイヌイット社会が生き延びた例や、同じ島の東部と西部で異なる政策をとったために大きな違いがみられるドミニカとハイチの例が印象的です。また、人口が過剰であることが根本的な原因と分析するルワンダの大虐殺は、社会の対応の失敗例としてあまりにも強烈です。一方で、飼料を大量に消費するブタを殺したり、首長たちが人口ゼロ成長の理念を説くティコピア島や、トップダウンで厳しい森林管理を行った江戸時代の日本などの成功例があることも例示しています。

    過去の社会が環境を害することによって弱体化する要因(上p.17)
    ・森林伐採と植生破壊
    ・土壌の侵食、塩害、劣化
    ・水資源
    ・動物の乱獲
    ・魚介類の乱獲
    ・外来種による在来種の駆逐
    ・人口増大
    ・ひとり当たりの環境侵害量の増加

    現在の環境問題(上p.20)
    ・気候変動
    ・有毒化学物質
    ・エネルギー不足
    ・地球の光合成能力の限界

    環境資源の濫用の罠から逃れられない理由(上p.24)
    ・当初は資源が無尽蔵に見えること
    ・枯渇の兆しが1年、10年周期の変動に覆い隠されること
    ・共有資源の制限の同意がなかなか得られないこと
    ・生態系が複雑すぎて予測できないこと

    社会の崩壊の潜在的要因(上p.26)
    ・環境被害
    ・気候変動
    ・近隣の敵対集団
    ・友好的な取引相手
    ・環境問題への社会の対応

    環境被害などの生態学的な崩壊が軍事的な敗北として偽装されている例(上p.29)
    ・西ローマ帝国の滅亡と蛮族の侵攻
    ・クメール王国の滅亡とタイ王朝の侵攻
    ・インダス文明の衰退とアーリア人の侵攻
    ・ミュケナイ文明や地中海沿岸社会の滅亡と海の人の侵攻

    太平洋の島々の森林破壊が増す要因(上p.185)
    ・乾燥した(降雨量の少ない)島
    ・高緯度にある寒冷な島
    ・古い火山島
    ・火山灰が降下しない島
    ・中央アジアの黄砂より遠い島
    ・マカテア(珊瑚礁が隆起したもの)のない島
    ・低い島
    ・隔絶した島
    ・小さい島

    チャコ渓谷のアナザシ社会(4章)
    ・600年頃から栄え、1150〜1200年の間に姿を消した
    ・900年頃に深いアロヨが形成された

    マヤ文明(5章)
    ・森林破壊と侵食、気候変動、マヤ内部の敵対関係、王・貴族間の競争が崩壊に関与している
    ・セノーテ(漏斗状の深い穴)や洞窟から地下水が手に入った
    ・栽培されていたのは、トウモロコシ、マメ
    ・250年以降、人口や建造物が飛躍的に増加し、8世紀にピークに達した。9世紀に減少し続け、909年に長期暦の最後を迎えた
    ・伐採されたマツの大部分は燃料に、残りが建造物や漆喰の材料になったと推測される。森林消失によって土壌浸食が起きた
    ・BC250年以降、湿潤な気候が訪れ、先古典期のマヤ文明が栄えた。125〜250年に旱魃に見舞われ、先古典期が崩壊した。250年に湿潤期になり、古典期の都市が建設された。760年頃、最も過酷な旱魃が始まり、810〜820年、860年頃、910年頃に大干ばつを迎えた

    ヴァイキング(6〜8章)
    ・ノルウェー西部では、700年頃までに人口増加によって可耕地の利用が限界近くに達した
    ・鉄の抽出、鉄器の製造に莫大な量の樹木を消費し、グリーンランドの制限要因になった
    ・アイスランドでは、セイウチや海鳥がすぐに絶滅し、森林の80%が最初の数十年間で切り開かれた
    ・グリーンランドでは、800〜1300年は比較的温暖で、1420年頃までには小氷期が最盛期に入った。森林は牧草地を造るために開墾され、薪のために伐採された。木材不足のため壁材に芝土が使われたが、それによって牧草地が破壊された。
    ・1349〜1350年の黒死病の流行で、ノルウェーの人口の約半分が死亡。十字軍の遠征によって、グリーンランドからのセイウチの牙の需要が減少した

    ティコピア島(9章)
    ・多雨、適度な緯度、火山灰、アジアからの黄砂が持続力に都合よく働いている
    ・首長たちが毎年、人口ゼロ成長の理念を説く
    ・BC900年頃、ラピタの民が住みつく。100年頃、鳥、コウモリ、魚介類が減少すると、実のなる木々が生えた果樹園を維持するようになった。1600年頃、すべてのブタを殺して魚介類とカメから蛋白源を得るようにした。

    その他の成功例(下p.54)
    ・インカ帝国は、大規模な森林再生、土壌侵食を防ぐ段々畑を造成し、作物の生産量を増やして木材の供給を確保した
    ・灌漑システムを維持しているスペインのバレンシア地方トゥリア川流域やフィリピンのコルディリエラ地域、農業と牧畜の混合経済を行っているスイスの高地の村々は、共同資源の管理について細かな合意がなされている

    中国(12章)
    ・ひとり当たりの水量は、世界平均の1/4
    ・黄河下流では、25年のうちの20年、水流の停止が発生。
    ・河川の堆積によって可航水路が50%減少
    ・ひとり当たりの農耕地は1haで、世界平均の半分
    ・ひとり当たりの森林面積は、1200m2(世界平均は6500m2)

    オーストラリア(13章)
    ・土壌は古いため最も栄養濃度が低い。火山活動や氷河、地殻隆起も乏しい。
    ・栄養分のほとんどは樹木にあり、土壌にはない
    ・海洋漁業の価値は世界で55位
    ・肉牛飼育用の牧草地造成のために開墾はクイーンズランド州に集中(2006年までに段階的に廃止)。ヒツジの過放牧、野生化したウサギも土壌劣化の要因。

    共有資源を管理するための措置(下p.230)
    ・政府などが割当量を決める(管理費や警備費が膨大)
    ・資源を私有化する(不法侵入の締め出しが困難)
    ・共通の利益を認識して割当量を決め、守り、徹底する

    環境問題(16章)
    ・森林破壊は過去の社会のすべてにおいて、崩壊のおそらく最大のもの
    ・土壌問題も、過去の社会のすべての崩壊の要因

    現代の国家破綻の主要因(下p.354)
    ・高い乳児死亡率
    ・加速する人口増加率
    ・十代後半から二十代の高い人口比率
    ・若年層の軍隊への流入

  • 「銃・病原菌・鉄」がすばらしかったので、発売後すぐに買いました。大部なのでしばらくおいていたのですが、読み始めると上下巻一気に読み通すことになりました。

    グリーンランドやヴァイキング、イースター島、ミクロネシアの島々、などの個々の物語はよく準備されたエピソードを絡めて進められており、今まで知らない世界を興味深く教えてくれて秀逸です。普段3年でも一昔のような近視眼的な業界で働いている固まり気味の頭を、文字文明前の悠久の歴史の中で、すっとほぐしてくれるような気分です。

  • 繁栄が環境に与える負荷の恐るべき結末

  • 『銃・病原菌・鉄』の著者、ジャレド・ダイヤモンドの著書。
    『銃・病原菌・鉄』が世界の地域ごとの発展要因を突き詰めたのに対し、『文明崩壊』は世界の崩壊した文明・地域に焦点を当て、その理由を探る。
    スリルある展開という意味では前作の方が良かったが、こちらは現代社会に対し警鐘を鳴らす内容であり、非常に示唆に富んだ内容。
    純粋に書物として面白いので、是非お読み頂きたい。

  • イースター島とポリネシア、マヤ文明、バイキングなどが、もともと気象や地勢的に厳しい環境下でありながら、文明を栄えさせ、やがて自らの「燃料」がつきて文明を支えた条件が崩れ、崩壊に追い込まれたさまを分析している。博学におそれいるしかない。

  • 複数の文明・文化の崩壊要因・過程を分析していく。
    考古学者の分析力と想像力ってすごいなと改めて感心させられた。
    過去の文明崩壊過程を現在に当てはめて警鐘を鳴らすという構成に持っていこうとしているのかな。

    P430 こういう類似性があるから、ノルウェー領グリーンランドの運命を、
    単に脆弱な環境を抱えた辺境の小社会の問題で、われわれの住む大きな社会とは無縁のものだと片付けるわけには行かないのだ。
    P413 不適切な条件のもとで人々が最も頑迷にこだわる価値観というのは、過去に、逆境に対する最も偉大な勝利をもたらしたものでもあるのだ。

    社会規模が大きくなればなるほど、各個人・地域間の相互依存は高まっていく。
    互いの強みを交換し合う過程が必要になる。
    思えば現代は貿易を通じて過去最高のレベルで世界中が依存しあっている状態といえるのか。

    著者の他出版も興味あるな。

  • 読書中

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著者プロフィール

ジャレド・ダイアモンド
1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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