眼の誕生――カンブリア紀大進化の謎を解く

制作 : 渡辺 政隆  今西 康子 
  • 草思社
3.92
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本棚登録 : 731
レビュー : 87
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794214782

作品紹介・あらすじ

ダーウィン、グールドをも悩ませた爆発的進化の原因とは?5億4300万年前、生命最初の「眼」がすべてを変えた。生物はなぜ、突然、爆発的に進化したのか?そのカギをにぎる「光スイッチ」とは-。生命史最大の謎に迫る、驚きの新仮説。

感想・レビュー・書評

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  • 眼!地球上に生命が存在するかぎり、眼は地上でもっとも美しい物の一つかもしれない。
    透明な構造体こそがもっとも色彩豊かである。この逆説がまず美しい。その、丸い光の受容体を、人間が概念として結晶化し、ぽろっと生み出されたのが「神」なのだと信じたくなる。
    地球人以外の宇宙人は存在するだろうけれど、その宇宙人の幾種類かは眼に似た器官を持っているだろうか。光が全宇宙にとって普遍的なものであるからには、ありうる話。
    バカだと思われるかもしれないけれど、眼が存在するに至ったというだけで、宇宙は報われたのではないだろうか。
    卑小な人間から見れば、個体を超えた普遍こそが偉い、あるいは物理的現象の背後にある普遍法則こそ偉いと思いがちだけれど(思うのは今のところ人間だけだけれど)、「宇宙にとっては」ほんとうにそうなのだろうか。
    仮にそんな普遍法則があるとして、その結果の、末端に生み出された、宇宙の化身の一つとして眼があるとすれば、それって、少なくとも物語として上出来ではないか。

  • IoTが急速に普及する中で、センサーはいわば世界に対する「目」として機能している。では、「目」の存在はどれほどのインパクトをもたらし得るのか?

    本書は、生命史の中で爆発的な進化が発生し、多様な生物種が誕生するきっかけとなった5億4300万年前のカンブリア大進化の謎を、「環境的な変化により地球や水中に到達する太陽光の質・量が増大した結果、生物に眼が誕生し、多様な進化をもたらした」という光スイッチ説に基づき解き明かすノンフィクションである。

    光スイッチ説では、光の量が増大したことにより、その光が淘汰圧となって、単なる光受容器に過ぎなかった器官が神経と結びつき、外部の像を見えるようにした眼を生み出した。その結果、生物はそれまで以上に過酷な「食う・食われる」の関係に巻き込まれることとなり、自らの種の生存のために、カモフラージュできるような体の形態・色の変化を身に着けたり、簡単に捕食されないように硬い骨格を持つようにならざるを得なくなり、爆発的な進化につながったとされる。

    本書では生物学・地質学・物理学・化学など、様々な学問分野の知見をベースに、光スイッチ説が検証されていく。ところどころ専門知識が要求されるところはあるものの、概ね平易な語り口であり、カンブリア大進化という生命史の謎が解かれる様子を楽しむことができる、一級のサイエンスノンフィクションである。

  • カンブリア紀に動物種が爆発的に増えた現象、通称「カンブリア紀爆発」について、それがなぜ起こったかという原因についての自説を述べる一般向け科学書。

    ポイントは2つ。
    一つ目は、カンブリア紀に動物種が爆発的に増えたのではなく、それまでにも動物種は分化していたが、カンブリア紀に、一斉に外殻を獲得したので化石に残るようになった、ということ。
    二つ目は、なぜ種々の動物が外殻を獲得する必要があったかというと、ある生物が目を獲得して、効率的な捕食者として急激に進化したから。その生物とは、三葉虫であり、カンブリア紀から古生代にわたり多いに繁栄してたくさんの化石を残している。また、捕食者が目を獲得したことにより、被捕食者は外殻と身を隠すための色を獲得したとも述べている。色の化石は見つかりづらいが、カンブリア紀の生物の一部の構造は構造色を作る出すことも、著者は発見している。
    また、外界と洞窟環境を比べ、光という刺激や目という受容機関による生存競争が進化を強力に加速することについても科学的に述べている。

    残る疑問は、なぜ、カンブリア紀に三葉虫が目を獲得したのか、そして、三葉虫以外の動物はどのように視覚を獲得したのか、ということだ。
    一つ目の疑問に対してはカンブリア紀に太陽から降り注ぐ光量がなんらかの原因で増えたことがわかっており、それが刺激となったと推測されている。その原因は、藻類の発生サイクルから太陽系が銀河腕を通過することによる天体由来の気象変動まで様々な推定がなされている。

    本書の論旨は明確だし、非常にシンプルだ。それを述べるには、ハードカバーで2200円という形態は、やや文章が冗長になってしまっている感がある。内容がとても面白いだけにそこだけが残念である。

  • 動物の進化史上における最大の事件とされるカンブリア紀の進化大爆発。
    スティーブン・J・グールドの「ワンダフル・ライフ」で日本でも有名となったこの大事件の原因については、従来様々な仮説が立てられてきたが、そのことごとくに有力な反証があり、長らく謎とされてきた。
    本書は、現代の生物がいかに“光”に適応しているかから説き起こし、カンブリア爆発の原因を動物における最初の視覚(目)の獲得にあることを論証して見せた快著である。

    生物学や地質学だけでなく、物理学、光学等を援用して淘汰圧としての光の重要性を丁寧に説き、最後に至って光への適応がすなわち視覚を持った捕食生物への対応であることを明らかにする。
    そして、最初に目を獲得した生物がカンブリア紀最初期に生息した三葉虫であることから、他の生物がこの新たな捕食動物への対応を迫られた結果としてカンブリア爆発が起こったと結論付ける過程は、凡百の推理小説よりもスリリングで知的興奮を掻き立てられる。
    ポピュラーサイエンスとして出色の出来である。

  • 進化の歴史を辿ると5億4400万年前には動物の門は3つしかなかった。門はボディプランによって決まるがこのときまでは海綿、刺胞(クラゲ)、有櫛(クシクラゲ)の3種だったのがわずか4〜5000万年ほどで外骨格を持つ動物が門を越えて多数現れた。この本ではほぼ現在の38の門が全てこの時期に出そろったと言う説をとっている。これがカンブリア爆発だ。カンブリア爆発が起きた原因については例えばスノーボールアース説などさまざまな説が存在するが残念ながら全て有力な反証があり説明できていない。この本では眼の誕生が進化を促したという説を唱えている。

    カンブリア爆発は一気に門の数が増えたのではなく、ボディプランは長い時間をかけて徐々に進行したらしく、爆発とは突如として硬い殻ができたことだ。化石の証拠から眼の誕生は5億4300万年前のことでその100万年前には眼は出来ていなかった。ではわずか100万年で眼が出来るものなのか。クラゲには原始的な光受容器があり、その部分が窪んでくると光の来る方向がわかるようになる。オウムガイの窩眼はピンホールカメラの原理で網膜=光受容器が刺激を受け取るのだが明るい像を得るためにピンホール=瞳孔を大きくしたためぼやけた像でがまんするはめになった。

    5億4300万年前の三葉虫の化石から彼らは誕生とほぼ同時に複眼を備えていたことがわかっている。ダーウィンが「比類のないしくみをあれほどたくさんそなえている眼が、自然淘汰によって形成されたと考えるのは、正直なところ、あまりに無理があるように思われる」と書いたカメラ眼の誕生にはどれほどの世代が必要なのか。出発点である皮膚の斑点=原始的な光受容器からカメラ眼に達するまで1世代当たりの変化率を0.005%と控えめに設定すると魚類のカメラ眼に進化するまで40万世代もかかっていない。1世代1年だと50万年足らずで眼が誕生するのだ。網膜のタンパク質はより原始的な眼点や他の感覚受容器に共通しており、神経も他の感覚のものを流用できる。三葉虫以前の捕食者、クラゲやイソギンチャクは偶々獲物が通りかかるのを待つだけであったが、三葉虫は眼の発明によって獲物を探すことが出来るようになった。補食による淘汰圧がいきなり高くなるとそれぞれのニッチでの適応が始まる。能動的な捕食者がボディプランや外形の変化を促したわけだ。

    多くの動物だけでなく植物も擬態をしたり、色やダンスでパートナーを誘ったり、光ったり、花粉を運んでもらうために鮮やかな花を咲かせたりしている。特定の形状や色が子孫を残すために有利になるような圧力が働いた結果であるが眼が誕生してしまえば視覚が最も汎用的な情報であり光ほど影響力の強い刺激はない。また一般に栄養豊富な環境下では生物量は増えるが多様性は減る。栄養豊富な北極海の氷の下では膨大な量のプランクトンがクジラを育てたりしているが色彩は貧栄養な環境のサンゴ礁の方がカラフルなのはニッチな環境に淘汰圧がかかると変化が促されるからだ。逆に光が届かない洞窟の奥では眼が退化したり、体色がなくなったりするのはそこにエネルギーを使うのが無駄だからだ。例えば深海にすむオオグソクムシは1億6千万年の間ほとんど進化してこなかった。環境の変化が小さく色の変化のない深海では淘汰圧が働かない。

    カンブリア爆発が起きた浅海の動物達がどんな色をしていたのか。復元図が示されているのだが体毛や殻の表面に回折格子が出来ていて鮮やかな虹色を示している。実際にアンモナイトの化石は金属的なオパール光沢ー真珠を想像してもらえばいいーを備えている。虹色のメリットは詳細には説明されていないがおそらく保護色として働く効果があったのだろう。アマゾンのエンジェルフィッシュの銀色の体も散乱光の中では姿を隠す働きをする。

    では一体何が眼の誕生を促したのか?これまた明確な答えはないがカンブリア紀の地表や浅海は現在よりももっと暗かったと考えられている。例えば空気中の水蒸気量が減ったためか、太陽系が宇宙塵の多い銀河の腕から抜け出たためか定かではない。ただ世界が明るくなったのがきっかけではないかと言う。スノーボールアースからは3200万年の開きがあるので氷が溶けてもまだ世界は暗いまだだったのか。答えはよく分からない。

    宇宙論のビッグバンも生物進化のビッグバンも最初の一言は「光あれ」だったのかも。

  • カンブリア紀の大爆発の要因として「眼」の進化が大きな影響があるのでは…、と書かれた本。確かに捕食し捕食される時に大きな影響があるのが「眼」の存在だと思うので、面白く読めました。
    書かれていることを読んでいくと、確かにそのような気がしてくるなぁ、と。

  • カンブリア大爆発は眼の誕生に起因するということを論じている本。
    もうちょっと理系の知識あったら、もっと面白く読めたかな。
    でも面白い。古代というと恐竜ばかり取り上げられるけど、三葉虫の生き生きとした姿を想像するのも楽しい。

  • サイモン・イングスの「見る」は、自然界の生き物の視覚の機構やその進化について科学的に説明した本でした。こちらもその類いと思ってたのですが、違いました。本著は視覚が生物の進化、主にカンブリア爆発に与えた影響をまとめたものです。普段、当たり前に使う視覚ですが、進化上とんでもないことだった、ということがよくわかります。

  • 1

  • エキサイティング!

    訳者の渡辺さんが訳者あとがきに書いているように、まさに眼から鱗の本です。(←しかもダブルミーニング)

    8章までが結論に導く為に精緻に周辺の事柄を、うまくまとめてあり、この部分は単純に古生物学・進化学・動物生態学・光の物理学を俯瞰するのにもちょうどよいです。著者の筆力と訳者の翻訳力のたまものでしょうね。

    9章以降の結論の為に,迂遠な感じもしつつ、最後にはまとまっていく感じは、下手なミステリ小説より惹き込まれます。

    かなりおすすめの一冊。

    しかし、、、故スティーブン・J・グールド博士が「ワンダフル・ライフ」を刊行してからもう 15年以上、私が邦訳版を読んでからでさえ、もう 10年以上経っているんですね。ちょっとしみじみ〜

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