データで読む 常識をくつがえす野球

著者 :
  • 草思社
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感想 : 4
  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794214942

感想・レビュー・書評

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  • 「データ野球」は近代野球において必要不可欠なものだ。
    今時、相手打者の得意コースや苦手コースもわからずにサインを出すキャッチャーはいない。
    だから「データスタジアム」の存在意義がある。
    プロ野球チームが彼らの分析したデータを活用することで勝利を得ることができるのなら、それはとても意味のあることだ。

    しかし、いちファンである僕たちがデータをあまり重んじることは危険な面もある。
    数字というものは、それを受け取る人間次第でいかようにも加工できてしまうからだ。
    なまじ、数字が明確に提示されているだけに説得力もあり、ついつい信じてしまいそうになるが、プロ野球はそれほどシンプルなものではない。

    具体例を示そう。
    たとえば、本書では「代打の代打」というものの成功率の低さを示している。
    「代打の代打」でヒットが出る確率は、わずか.083。
    だから、「代打の代打」などはナンセンスだと小林信也氏は主張している。
    しかし、よくよく読めば、この.083という数字は、05年シーズンのセリーグにおける12打数1安打という結果から導き出されたものだ。
    たった12回という試行回数で結論を出す方が、統計学的に言ってよっぽどナンセンスだ。

    本書では「交流戦におけるパリーグの打者の打率のほうがよっぽど高い」と書いているが、それなら、少なくともパリーグの打者の交流戦での打数分と同数で比較しなければフェアではない。
    パリーグではどうだったのか?
    04年はどうだったのか?
    もっと言えば、過去10年間ではどうなのか?
    そういうことがここでは全く検証されずに、05年のセリーグにおけるわずか12回の打席の結果でその是非を語るのはあまりにも危険だ。
    たまたま05年が低かっただけで、もしかしたら04年ではその結果は3割を超えているのかもしれないではないか。(まあ、常識的にはそれはないだろうが)

    そもそも代打というのは成功率が低いものだ。
    06年のデータをみても、最も高い横浜でさえ3割に届かず、タイガースが2割5分程度、他4球団は2割そこそこに過ぎない。
    そういったデータを示さずに、ただ.083という数字だけで何かを語ることには意味がないし、卑怯なやり方だ。

    もうひとつ例を示そう。
    本書では、無死一塁から送りバントで走者を進めて得点に結びつく場合と、普通に打った場合に得点に結びつく場合を比較している。
    前者はセ、パともに40.6%、後者はセで42.0%、パで41.9%で、バントをしないほうが得点に結びつく可能性が高いとしている。
    しかし、このいかにも説得力のありそうなデータも不完全だと言わざるを得ない。
    なぜなら、ここで示されている条件は「無死一塁」ということだけだからだ。
    その他の条件はまったく違うだろうに、それをすべて一緒くたに考えて40%という数字を出すことに何の意味があるのか。
    たとえば、投手が二線級の中継ぎで、走者は一塁に俊足の選手、打者はバント名人の二番打者、後ろにはクリンナップトリオが控えているという場合と、投手が球界を代表するリリーフエース、走者は一塁に鈍足選手、打者は長距離バッターで後ろには7・8番打者という場合では、得点の入る確率は天と地ほども違うだろう。
    ここまで極端な例でなくとも、イニングや点差、後ろの打者や投手との相性、走者の走力など、すべてのケースで条件が異なるだろうにそれを一緒くたにしてしまうことにはあまり意味がないのは明らかだ。

    このように批判的なことばかり書いてみたが、本書はそれなりに面白いし、内容的には間違っていることを言っているわけではない。
    僕も、画一的に投手の利き手だけを考えて「代打の代打」を送ることには賛成できないし、判を押したようなバント作戦は好きではない。
    ただ、それは感性として賛成したいのであって、こういった数字を明示することには意味は感じない。

    つまり、データはあまり野球の本質について語らないということを僕は言いたいのだ。
    ベンチがデータを利用することは間違いではない。
    けれど、小林信也氏も含めた僕たちファンが必要以上にデータにこだわるのは野球の楽しみ方としてはちょっと違うかなあと思う。
    データはデータとして机上の楽しみとして大いに遊べばいいけれど、野球を実際に観るときにはあまりそれは必要ない。
    データなど関係なく、プロ野球選手たちの最高のパフォーマンスは僕たちを楽しませてくれるはずだから。

  • 一番最初に持ってきている無死一塁でもバントさせないってのが肝なのかはしらないけど、それは割りと疑問な数値かとは思う。
    バントさせなければいけないバッターとフリーに打たせるバッターを采配により選んでいるわけでそれによる得点確率を比較してもあまり大したデータではないのかと思ってしまう。
    他のデータは割りと常識かもしれない。

  • うわあ。これ卒論にしってぇ〜。

    このまま使いてぇ〜。最悪卒論コレやな。

    データを駆使して戦うからこそ野球のさらなるおもしろみが見えてくる。

    そう感じた一冊です。

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著者プロフィール

1956年、新潟県に生まれる。慶応大学法学部卒。高校では野球部の投手として新潟県大会優勝。大学ではフリスビーの国際大会で活躍。大学生の頃から「ポパイ」編集部スタッフライターをつとめ、卒業後は「ナンバー」のスタッフライターを経てフリーライターに。2000年に自らカツラーであることを著書『カツラーの秘密』(草思社)でカミングアウト。
著書に『長嶋茂雄語録』(河出文庫)、『高校野球が危ない』(草思社)、『子どもにスポーツをさせるな』(中央公論新社)、などがある。

「2021年 『長嶋茂雄 永遠伝説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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