女帝 わが名は則天武后

著者 :
  • 草思社
3.49
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本棚登録 : 127
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794215031

作品紹介・あらすじ

時は七世紀、唐の時代。一人の少女が後宮に入った。そこは一万人の女たちが皇帝の寵を争い、陰謀と嫉妬が渦巻く世界。だが天運は彼女とともにあった。何の後盾もない平民生まれの少女は、死の淵から救い出され、権力の中枢へと導かれた。皇后に、そしてついに玉座へ上る。天は、彼女に広大な帝国の未来を委ねたのだ。絶対的な権力を持つことの、圧倒的な孤独。そのとき、彼女は何を思うのか-中国四千年の歴史上、唯一の女帝、則天武后。後代の歴史家によって冷酷無比な悪女と貶められ、皇帝であったことすら否定されてきた。その偽りの正史に挑み、転落と再生をくり返した武后の波乱の生涯を、詩情あふれる簡潔な文体で描き上げる。フランスでベストセラー、世界20カ国で翻訳された気鋭の中国人作家の最新小説。

感想・レビュー・書評

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  • どれほどの時を、この暗い世界で過ごしたことだろう。

    シャン・サを初めて知った「碁を打つ女」でも思ったことだけど、彼女の作品は最初の一文で物語の世界に引き込んでいく力が半端なく強い。
    俯瞰的な視点で書かれたような淡々とした文章でありながら、溢れ出る濃密な感情が押し寄せてきて溺れそうになる。知性的でありながら情熱的な物語の海。ずっと沈んでいたくなるような海。

    私は誰だ?足元にうずくまっている死に向かって問いかけてみたが、答えはなく、うめき声がもれてくるだけだった。

    やがて読者は気づく。私が存在する、この底知れぬ世界は何処なのか。願うこと、待つこと、自分であること、世界の中心であることに、疲れはてた私。すでに老人であることを知っているかと問う私。期待に満ち溢れた愛情深い人々はまだ知らない。私が自分の世界を築くために、彼らの世界を破壊することを。

    「冷酷な悪女」中国四千年の歴史上、唯一の女帝則天武后。冷酷無比な悪女と貶められ、皇帝であったことすら否定されてきた女帝を、シャン・サは魅力的な女性として描ききった。何の後ろ楯もない馬が大好きな平民の少女。死の淵に立った少女が運命に選ばれ翻弄されながらも権力の座へと導かれていく凛とした姿。荒々しく激しい気性の下に隠された愛情深さとそれ以上に彼女を支配する重苦しい孤独。

    私は誰だ?

    私は永遠という歯車をまわす者の、謎に満ちた微笑みである。

    激しく悲しく読者の心を揺さぶる物語。

  • 武照(則天武后)が一人称で語る胎内にいる時から死後に至るまでの一代記であり、周に起源を持つ武一族の族譜でもあります。事実だけでなく、夢や空想、思い出などををないまぜに語るスタイルは詩的で美しく濃密です。太宗、高宗と二夫にまみえた経緯や女帝となった経緯は自然で説得力がありました。田舎の名流でない女の子が女帝になるまでの物語は飽かせない面白さ。80才になっても権力を手放さない老残の姿を細かく描くのは中国的リアリズムでしょうか。新鮮な則天武后像を紛れもない純文学で記された傑作です。

  • 則天武后(武照)の出生から死後、唐の衰退までの女一代記。おどろおどろしく残忍に歪曲されたフィクションとは一線を画す、壮大なスケールで読み応えがありました。悪女のように描かれる事が多いですが、纏足に代表されるような男尊女卑という唐後の風潮による偏見でしかないという評価の見直しに目からウロコ。“悪口”鵜呑みにしててゴメンナサイ。「明日も仕事」を忘れ夜通し一気読みしそうでしたww。今年のマイベスト10に入る勢い。

  • ケタ違いである。全く。たった一人の皇帝にささげられた一万人の美女たち。そのほとんどが帝の寵を受けることなく、ひっそりとその生涯を終えるオンナの世界 後宮。そこはハーレムよりも秩序だっており大奥よりも残酷で、そして何よりもとにかくケタ違いにバカバカしいほど絢爛豪華なのである。平民出身でありながら唐帝国の皇后に、そして女帝にまで上り詰めた照の強く美しく哀しい人生が描かれている。彼女は決してシンデレラではない、その手で身体で頭脳で全てを手に入れたのである。「全て」 いや しかし広大な唐帝国の絶対的存在として君臨していた女帝、傾国の美女として世界を指一本で動かしていた照が、本当に心から求めていたものは…それにしても、この国のこの時代に美女として生まれなくてよかった と心から思うのである。だって80歳になって20代の若者を愛するなんて絶対無理っ、いや ホント。

  • 則天武后の名誉回復がしっかりなされているが,それでも晩年の権力者の孤独が伝わってきて,さらに女性であることからのさらなる孤独は読むのが辛いほどだった.
    だからという訳でもないが,前半の貧しい平民からだんだん成長していくところ,馬に乗って颯爽と駆ける姿などが印象に残るし面白かった.

  • 著者の山颯(シャン・サ)は中国人だが、この作品はフランス語で書かれたもの。天安門事件後に表現の自由を求めて渡仏。作者自身の内面を則天武后に重ね合わせているのだ・・とひしひしと感じた。傑作です。

  • 2015.07.12 代表的悪女
    2015.08.02 読まずに返却 思ったより厚くて断念

  • 後ほど記載予定。

  • 一人の女性の一代記。聖女でも悪女でも国を動かす女性は凄い。根性有るなって思わせられます。

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