宇城憲治師に学ぶ 心技体の鍛え方

著者 :
  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794215536

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  • 武術の達人・宇城憲治氏に師事するスポーツライターの筆者が、現代に生きる日本人がいかに生きるべきか、師の教えと言葉を随所で引用しつつ、論じている。

    一貫して語られているのは、「身体脳」、つまり、無意識の重要さである。
    武道の型や、日本の古くからの慣習(美しい姿勢でおじぎをする、挨拶をする、姿勢を正すなど)には、無意識の感覚、直観の力を磨く意味があるという。
    現代の日本人は、あまりにも頭で考えることに依存しており、直観の力を軽視することで、重要な判断をことごとく誤っていると本書は警鐘を鳴らす。
    考えてみれば、日常生活や仕事でも、直観で判断した方がうまくいくことは多い。
    あれこれ考えて決めたことでも、結局、はじめに良いといった考えに落ち着いたりする。

    また、精神的な面だけでなく、なんと身体能力も向上するらしい。
    それは筋力とは次元の違う力であり、「気」の流れが良くなることにより生ずる力とのこと。
    本書には、それに関して色々な実例が紹介されており、筆者や宇城さんの塾の生徒も日常的に体験しているらしいので、そこには一定の真実があるのだろう。
    にわかには信じがたいが、禅の本とかでもこういう話は度々出てくるし、まだまだ自分の知らない世界もあるのだろうという気はした。

    さすがに空手を習う気にはならなかったが、もっと普段の立ち居振る舞いや呼吸といった、基本的な部分に気を配って生活しようと思った。

    方法論の部分とは別に感心したのは、宇城さんの道を究めようとする姿勢である。
    スポーツや武道などの、体が資本である活動というのは、40歳も過ぎれば衰え、引退、第二の人生という言葉が普通連想される。
    しかし、宇城さん、また筆者の心構えは、そういった一般常識的な考えとは180度違う。
    いい成績をおさめたら終わり、世界一になったら終わり、ではなく、
    自分の中に絶対的な基準を持ち、それに向かって、今も、常に向上し続けているという。
    彼らの中では、武道は人生と同義なのだろう。
    そうは言っても若い選手に勝つことは難しい気がするが、執筆時点(55歳くらい?)においても、組み手で金メダリストを子供扱いするほどの強さだというからすごい。
    (スピード自体は相手より遅いが、相手が攻撃する前に攻撃が来る信号を「感じ」、常に先を制すのだそうだ。
    意識で反応するのとは、まるでレベルが違う動きらしい。)

    人生に絶対的な基準をもつべきというのは割と普段から思っていたし、自分なりにあるべき姿も思い描いてはいた。
    それが正しいのだと背中を押してもらえたと感じた反面、現在の自分の、それに向かう姿勢の甘さも痛感した。
    今一度、初心に返って取り組んでいきたいと思う。

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著者プロフィール

1964年生。都市史研究。著書に『江戸の民衆世界と近代化』(2002)ほか。

「2007年 『明暦江戸大絵図 全1巻 限定157部』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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