- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794215765
作品紹介・あらすじ
「民間委託」の流れはいまや軍事の分野にも及んでいる。その主役が「民間軍事会社」と呼ばれる企業群だ。戦闘地域での物流サービスから捕虜の尋問、メディア対策、はては実際の戦闘行為にいたるまで、そうした会社が提供するサービスは多岐にわたる。イラクでは、なんと一国の軍隊と同規模の人員を民間軍事会社一社で派遣している例まであるのだ。本書は、イラク戦争以降にわかに注目されている新ビジネスの実態を、企業側および最大の顧客である米軍関係者への取材をもとに描いた刺激的なノンフィクションである。
感想・レビュー・書評
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民間軍事会社(PMC)の実態と現状を、多角的、網羅的に調査したルポルタージュ。類書を知らないのだが、本書はかなりなレベルにあるのではないかと思う。PMCは、後方兵站は言うに及ばず、クロアチアの例などでは、国家的な軍事戦略にまで及ぶようだ。すなわち、クロアチアを旧態依然としたワルシャワ条約軍から、最新鋭のナトー軍に再編したというのだ。また、PMCの側から見ることで、イラク戦争がアメリカにとって「必然」ではなく、「選択」の1つであったことも明らかになっていく。こんなところまでと驚嘆することばかりだ。
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これは2007年に読むべきだった……なので☆4。
濃い内容。一気に読めた。非常に面白い。
イラク戦争での民間軍事会社「エグゼクティブ・アウトカム社」は「戦争請負会社」で一躍有名になったが、1997年に廃業されており、このような軍事行動まで行う会社は、見返りがすくないという理由で2007年当時ですら、もうほとんど残っていなかったという。
戦争業務のコンサルティング、誘拐犯との身代金交渉・保険会社との提携・戦争広告会社、など。
イラク戦争が泥沼化し、戦争バブルが弾けたあと、世界中の安価な労働力をかき集めて戦争に投入するということが行われている。
要は、政変などで軍隊が解体されたり、会社が解体されたあと、その技術を持った労働者がどうやって食っていくかと同期している。
かつ、戦争広告会社など、単なる雇用の受け皿ではない、バブルの分け前を求める会社も参入している。
ひととおり現在の戦争請負会社や戦争広告会社についての本を読んだら、また読み返したい。 -
さくさくっと読めますし、概要としてわかりやすい。文中でも触れられている、シンガーの「戦争請負会社」と一緒に読むとさらにわかりやすかと。
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民間軍事会社のことがわかりやすく書いてあった。
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民間軍事会社・PMC(private militaly company)というのが、マスコミで伝えられるような傭兵とは違い、正規軍の特殊部隊出身者が多いにせよ、冷戦終了とともに予算が削られた軍でカバーしきれない部分を補う、法的な立場もしばしば曖昧なため危険にさらされる、ビジネスチャンスと人道的な危うさの間を綱渡りしているような存在の複雑さを描いて興味深い内容。
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もう戦争は民間会社の存在無しには語れなくなっている。ビジネスライクな戦争ほど怖いものもないと思うが。
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PMC(=Private Military Company:民間軍事会社)に関する解説書。民営化されたイラク戦争後の安定化・復興活動において、米国14万人、英国9千人、イタリア3千人、自衛隊:6百人の派兵に対し、PMCは総勢2万名を超えており、一国の軍隊並みの規模でロジスティックス、兵器の修理・メンテナンス、インテリジェンス、偵察・監視、地雷・不発弾処理等の後方支援を行っている。先進国のみならず第三国でのリクルーティングを通じて「コスト削減」(ex.コロンビア兵士は米国兵士の1/4)を進める、にはやり切れなさを憶えた。具体的な事例として、サウジアラビア政府のSANG訓練を行ったヴィネル社、コントロールリスク社等の事例を挙げる。イラク戦争の引き金を引いたメディアコントロール、ジョンレンドンの「現代の戦争において、結果と言うのは世論がその戦争をどう見るか、すなわちこの戦争は勝てるのか、戦う価値があるものなのかという価値判断を国民がどう下すかで決まるのである」は一民間企業が国民の価値判断を巧妙に操作した事実として忘れてはならないと思った。CIAが行っていた情報収集、分析等の民間活用は2005年度予算400億ドル(約4.8兆円)のうち、50%以上は民間の契約会社に外注化されたのは驚愕。安全保障の対象が見える相手から見えない相手に、国家から社会や個人を対象としたものへ性質が変容する中で対テロ戦争ビジネスは今後益々拡大するのだと感じた。
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勉強中。。。
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既読。
だいぶ長いこと積んであった本。
どうやらわたしは軍事・犯罪関連の本が好きではないらしい。
結果的に、遅くなったのは正解だったかもしれない。「世界を不幸にするアメリカの戦争経済」を読んだ後にこれを読むことができたので。
「世界を不幸にする〜」では膨れ上がる軍事費の一部が、民間軍事会社のためとしているが(給料がいいので、軍人が民間軍事会社に流れやすい)、こらはある意味、その軍事会社サイドから見たイラク戦争。
なんというか、既にビジネスとして成り立ってしまっている戦争の一部。保険会社も一枚噛んでいるし、もちろん国家も関与している。
で、その底辺にいるのが「ルポ 貧困大陸アメリカ」で書かれた、ワーキングプアの人たちとなると…。
遠いはずだった戦争が、とても近い。 -
菅原 出 著「外注される戦争」を読了した。
現在の先進国では、警察官よりも警備員の数の方が多いという現実がある。
すなわち「安全」は公が責任を持つ以上に、民間のビジネスの問題となっている。
いみじくも、ライス国務長官が指摘したように「今日の脅威は巨大な軍隊からではなく、より小さな軍隊や闇の集団であるテロリストによって引き起こされる。強力な国家というよりむしろ、弱くて破綻した国家によって引き起こされるのである」
イラクやアフガニスタンの戦闘状態の終結に、正規軍だけではなく民間軍事会社が大きな役割を担っていると言う現実を指摘した本である。
米英の軍人OBがその任にあたっているようであるが 悲しい現実としてその現場を担っている人達は「命と引き換えの仕事」として報酬を得ているわけで、第三世界の人材でコスト削減が図られていることである。
まさに「使い捨ての兵士」であろう。
フレデリック・フォーサイスの「戦争の犬たち」は30年前のサスペンス物語であったが今はこれが世界の現実であることを指摘している。