心の琴線にふれる言葉―声に出して読みたい日本語5

著者 :
  • 草思社
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本棚登録 : 72
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794215932

作品紹介・あらすじ

日本語の世界の豊かさ、奥深さを伝えてきた『声に出して読みたい日本語』シリーズ。第5巻では「心の琴線にふれる言葉」というテーマを掲げ、私たちの心に響く言葉を集めてみた。心を鳴らし、心を耕してくれる言葉-琴がかき鳴らす調べのように、そこから生まれる響き合う和音は、心を豊かにしてくれる。日本語が奏でる心豊かな旋律を味わってほしい。

感想・レビュー・書評

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  • 同タイトルシリーズの5作目。
    かつてむさぼり読んだ本の中にあった言葉たちが、溢れかえっている。
    残念なことに、名文・金言を求めていた10代の頃には、心の琴線は育っていなかったらしい。上手いことを言うなぁという程度の感心のしかたで、なんとなく保存したに違いない。
    何がしかの経験を経て今読むと、名文・金言の意味が手に取るように理解できて
    「ああ、これこれ!」「そうそう、その通り」と、次々に胸に灯りがともっていく。

    言葉というものは、願望や祈りに似たものであって、それ自体には何の力もない。
    本当に辛い時、それはただ辛いだけで、時が過ぎゆくのを息を殺すようにして待つしかない。
    だいぶ経ってから、このままではいけないと必死の行動を起こす。
    言葉は、その後からゆっくりと立ち上がってくる。
    ちょうど、「シベリアおもちゃ」を作り出した抑留兵士のように。

    これは、本書の中で紹介されている霜山徳爾さん(夜と霧の訳者)のエッセイに登場する。
    理不尽極まりないなりゆきでシベリアに抑留された日本兵たち。
    厳しい寒さと労働と飢餓の中、日々失われてゆく人間らしさ。
    その中でも何とか人間らしくあろうと、拾った木片で櫛や人形を刻んだという。
    そう言えばかの「山本幡男さん」も、抑留所で句会を開いていた。
    一片のパンでさえも奪い合う中、人としての心のありかを必死で模索したのだろう。

    だが、この「シベリアおもちゃ」の話を聞いたある若者が、こう言ったという。
    「よほど退屈で暇をもてあましていたのですね」
    抑留の歴史も知らず、想像力もなく、ましてや心の琴線も無に等しかったのだろう。
    私はこの若者を笑えない。
    無知蒙昧を絵に描いたような10代の頃だったら、同じことを言ったかもしれないからだ。
    もっともっと学んで、心の琴線を鍛えようと、この本を読んでつくづくそう思う。
    言葉が琴線を奏でるだけでなく、琴線が言葉を生み出すように。

    八木重吉の「素朴な琴」に始まり、山上憶良の歌で終わる本書には、まどみちお・内田百聞・小池一夫・石牟礼道子・小林一茶・神谷美恵子・新渡戸稲造・小林秀雄・折口信夫・土門拳・・もうもう、載せきれないほどの錚々たるメンバーたちの言葉がある。
    ジェットストリームのオープニング・コピーまである。
    どれかひとつでも心に残ったら、じっくり温めると良いかもしれない。

  • 「せつない」気持ちを伝えたいとする。
    いくつの表現が思いつくだろうか。

    「ことば」は豊か。
    そのことを忘れてはいけない。

    • koshoujiさん
      「タイタニック」にハナマルいただき、ありがとうございます。
      先々週から3D版、公開しているんですね。
      ただ、どなたかのレビューを読んだら...
      「タイタニック」にハナマルいただき、ありがとうございます。
      先々週から3D版、公開しているんですね。
      ただ、どなたかのレビューを読んだら、「字幕だけ飛び出してくる」などと書かれていました。
      そんな馬鹿な…(笑)
      この本面白そうなので、私の本棚にストックさせていただきました。
      心の琴線にふれる言葉を紡ぎたいなあ、と思ってるので(^~^)
      ではでは<(_ _)>
      2012/04/16
  • 「日本語の世界の豊かさ、奥深さを伝えてきた『声に出して読みたい日本語』シリーズ。第5巻では「心の琴線にふれる言葉」というテーマを掲げ、私たちの心に響く言葉を集めてみた。心を鳴らし、心を耕してくれる言葉―琴がかき鳴らす調べのように、そこから生まれる響き合う和音は、心を豊かにしてくれる。日本語が奏でる心豊かな旋律を味わってほしい。」

    目次
    第1弦 いのちを奏でる
    第2弦 こころざしを奏でる
    第3弦 かなしみを奏でる
    第4弦 ぬくもりを奏でる
    第5弦 せつなさを奏でる
    第6弦 あこがれを奏でる

    著者等紹介
    齋藤孝[サイトウタカシ]
    1960年、静岡生まれ。東京大学法学部卒業。同大学大学院教育学研究科博士課程を経て、明治大学文学部教授。専攻は教育学、身体論、コミュニケーション技法。『宮沢賢治という身体』(世織書房)で宮沢賢治賞奨励賞、『身体感覚を取り戻す』(日本放送出版協会)で新潮学芸賞受賞。『声に出して読みたい日本語』(毎日出版文化賞特別賞)などがある

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99025858

  • その詩の背景を知ると、ただ文字を見るだけより作者の感情が伝わってくる。「琴線」という言葉の由来も詩的で気に入った。色んな時代から引用されているが、違う文体でも良い詩はいつ読んでも良いものだ。

  • 2016/9/22

  • 「なんとなく、いいな」そう感じていた歌や、文章の裏側にあるエピソード、作者の思いを知ることで 美しい文章に込められた切ない思いを知ることができます。知ると、味わいが広がる。言葉を大切にすることで、より深いレベルで共有することが出来そうです。

  • シリーズ名 声に出して読みたい日本語 ; 5
    ISBN 978-4-7942-1593-2
    入手条件・定価 1300円
    全国書誌番号 21243114
    個人著者標目 齋藤, 孝 (1960-)∥サイトウ,タカシ
    普通件名 引用句∥インヨウク
    →: 関連語: 格言∥カクゲン
    NDLC KE223
    NDC(9) 908.8
    本文の言語コード jpn: 日本語
    書誌ID 000008555082

  • 歳を重ねたせいか?

    経験が積まれたせいか?

    詩や短歌・俳句といった、
    広大な意味を含み、
    長いドラマを想像させる言葉を読めるようになった。


    言葉は限りがあり、
    そして
    言葉は魔法である。

    今ここに起こってほしくない時代を生き抜いた人の言葉をいただけること、

    だから、
    その時代をほんの少し垣間見て、
    今時分の足元のありがたさをかみ締めることができたりする。

    そんなやさしさと厳しさをくれる言葉があふれている一冊。

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著者プロフィール

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程を経て、現在明治大学文学部教授。教育学、身体論、コミュニケーション論を専門とする。2001年刊行の『声に出して読みたい日本語』が、シリーズ260万部のベストセラーとなる。その他著書に、『質問力』『段取り力』『コメント力』『齋藤孝の速読塾』『齋藤孝の企画塾』『やる気も成績も必ず上がる家庭勉強法』『恥をかかないスピーチ力』『思考を鍛えるメモ力』『超速読力』『頭がよくなる! 要約力』『新聞力』『こども「学問のすすめ」』『定義』等がある。

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