「偉大なる将軍様」のつくり方

著者 :
制作 : 荒木 信子 
  • 草思社
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本棚登録 : 12
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794217424

作品紹介・あらすじ

誰よりも大きく写し、画面中央に置く専属カメラマンたちの涙ぐましい努力!韓国の若手記者が「1号写真(金父子の写真)」のイメージ操作を解析。人民統治の巧みな手法を明らかにした画期的な調査研究。

感想・レビュー・書評

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  • 今日2月16日は、朝鮮民主主義人民共和国いわゆる北朝鮮の最高指導者・金正日の68歳のお誕生日。

    昨年後半あたりから、ひょっとするとすでに亡くなっていて、様々な場面に登場するのは4人いる影武者たちではないのか、死去したとは国家戦略上・国民統制上どうしても口が裂けても言えないのでは、などとまことしやかにささやかれてもいますが、本当のところは不明です。

    ところで、苦労して勇敢に抗日パルチザン闘争を闘った、朝鮮革命を成し遂げた父親である金日成には、レーニンやスターリンと同じく当初から独裁する意識があったはずはなく、民族の自由と独立のために命をかけて解放闘争に起ち上がったに違いありません。

    それが、資本主義という皮をかぶった帝国主義に、包囲され経済攻撃され孤立化する中で、自らを守るため独裁主義化せざるをえなかった歴史的事実を、よおく認識しなければ正しい現実把握とはいえないなどというまやかしは、今や誰も信じませんよね。

    でも、映画『パッチギ』で描かれていたように、北朝鮮は夢のような豊かで自由な理想の国、という幻想を信じてだまされた人が、実際1959年から74年までおよそ93,300人も、北朝鮮への帰還船で地獄への出発をしているのです。

    歴史的には、たしかに日本の朝鮮侵略支配がいかにひどい抑圧・破壊的なものだったか、あるいは在日というかたちを作りだした元凶、そして大村収容所や入管問題を現出させた事実は、けっして忘れてはいけない過ちですけれど、北朝鮮は今も拉致問題やテポドン発射でやっかいな物騒な国に変わりはありません。

    この本は、韓国の報道写真家が、「労働新聞」に載っている金日成・正日親子の写真を綿密に検証して、他の誰よりも大きく写し出し画面の真ん中に位置させ、反復・演出・広角レンズの頻繁な利用でもって、いかに神秘的いかに神格化して国民を支配しようとしているか、その巧妙なメディア戦略を暴く斬新な画期的な調査研究の本です。

    その問題意識は、多木浩二の『肖像写真』や『天皇の肖像』、そして我が敬愛する柏木博の『肖像のなかの権力』や、あるいは我が愛する草森紳一の『ナチス・プロパガンダ 絶対の宣伝』に通底するものがありますが、本書は、よりスキャンダラスな、なりふり構わぬ強引な末期的症状の独裁国家の、とんでもないだましのテクニックの真面目な実証分析ですが、涙ぐましい努力を抱腹絶倒するしかない本です。

  • 偶像崇拝的な使用のされ方がされている金正日・金日成親子の写真の特性をカメラマンとしての立場から書いたというユニークな本。新聞に掲載される写真の1枚1枚の細部にまで気を使って統制されていることがよくわかる。北朝鮮報道を見ていると、写真一枚から勘ぐり過ぎだろ、と思っていたんだけど、ここまで徹底されった統制のされっぷりを読んでしまうと、いろいろ勘ぐりたくなるのも無理ないのかな。

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