- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794217820
作品紹介・あらすじ
円高、格差、消費税、財政破綻、温暖化、民営化、FTA…など、問題山積の日本経済を考えるための方法。日経新聞電子版を活用し、参考にしながら焦眉のテーマを分析。経済を学びたい人への格好の案内書。
感想・レビュー・書評
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日経新聞の記事を鵜呑みにすることなく、自分の中で基礎的な知識を持った上での読み方推奨。参考文献も紹介してくれてる。
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本書は、日経新聞の記事には、しばしば矛盾があって読者を混乱させていると主張している。なるほど、日経新聞の経済記事には、ちょっと首をかしげるような主張が、確かにある。その理由が、本書を読んで良くわかった。
日経新聞の記事を読むまでもなく、エコノミストや経済学者によって言っていることがまったく違う場合があることは常識となっているかと思う。見る視点によってそれぞれの主張が違うものであるが、経済学が実証科学である以上、時間の経過とともにどちらかの見解が正しいことはいずれわかるのだろうが、誤った専門家が「私は間違っていました」と懺悔することはほとんどないようだから、数年後、あるいは数十年後に誤りが証明されても、いちいち責任を追及されることはないのだろう。
本書は、その経済的諸問題についての専門家の見解の違いを詳細に分析し、かつわかりやすく解説したものであるが、読んでなるほどと納得できるわかりやすい解説書となっていると思った。
経済的問題について専門家は、さまざまな多くのデータを分析して結論を導くものであるが、ひとつのデータを省くか軽視するだけでまったく逆の結論を出すこともできるものであるということが本書でよくわかる。本書では、小泉政権時に構造改革を先導をした竹中平蔵氏が2008年当時にOECD報告書をもとに「小泉改革は格差を広げたと言われているがそれは嘘だった」と主張した事実を取り上げて、その誤りを論証しているが、なるほど「ジニ係数」「貧困率」「所得」「非正規雇用」「高齢化」等のデータの一部を軽視するか、見るの視点をゆがませるだけで、まったく逆の結論を出すことができることが、本書を読んでよくわかった。
本書での「円高」や「為替市場」についての内容をよむと、専門家の意見の違いや出てくる専門用語の多さに戸惑う。このような難しい問題は、平時には専門家に任せっぱなしにしたいと思うが、世界的経済危機とやらの影響を身の回りに感じざるを得ない昨今、庶民と言えどもある程度の興味を持たざるを得ないと感じた。その意味で、本書は経済問題をわかりやすく解説した書として興味深く読めた。
本書の最後に「全てが解決可能ではない」との項目がある。「回復しない日本の景気、財政累積赤字、破綻しそうな公的年金制度…その難問がちょっとした思い付きで解決するかのように論じる人たちが後を絶たない。しかしそれ以前に…はたして解決可能な問題なのか」と恐ろしい指摘をしている。できるものであるならば、経済学者が正しい解決策を提示し、政治家が大胆にその実行をおこなって、世界経済と日本経済の危機からの脱出をして欲しいものだと真剣に考えた。