ヤマダ電機の暴走

著者 :
  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794217851

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  • 『ヤマダ電機の暴走』立石泰則(草思社)

    ヤマダ電機の創業者・山田昇が前橋の松下系列の電気店から身を起こし、年商2兆円の家電量販店に成長させるまでの過程と現在を批判的に追った企業ルポ。批判的に書かれているが、当時画期的だったカラーテレビの色調補正サービスを行って売り上げを伸ばしたこと、メーカー支配の家電業界の中で値引きや商品の買い取り、店舗土地の買収を果敢に行ったこと、自動車での買い物客のためにピロティ式店舗をいち早く採用したこと、POSシステムの活用など、ヤマダ電機の成長の要因が垣間見える。「暴走」と言われるが、コスト・リーダーシップ戦略だって立派な戦略だし、バイイングパワーやスケールメリットを追求するために拡大路線を取ることだって決して間違っていない。POSシステムによる本社主導の売り場づくりだって、POSシステム自体が現場の販売状況をリアルタイムに反映させるものなのだから、氏の言うように現場主義の放棄とはいえないだろう。アフターサービスの弱み、ニッチ商品の切り捨てだって、コスト・リーダーシップを優先した戦略とも取れる。メーカーのヘルパーの問題だって、なにもヤマダ電機に限らず業界全体の問題だと思う。
    正直にいって僕も個人的には、ヤマダ電機の激安戦略や挑発的な出店戦略は、はっきり言って大嫌いだ。ただヤマダ電機が業界一位の売り上げを挙げていることは厳然とした事実だし、とにかく一円でも安い商品を買いたいという客から支持されているのも事実だ。コジマやビックカメラなど競合店と繰り広げた「上州戦争」や「池袋戦争」によって、結果として「ヤマダは安い」というイメージを消費者に植え付けたのならば、やはり作戦勝ちである。
    ただ気になる点は、郊外型店舗で成長してきた同社が、まだ一度として都市型店舗で勝ちパターンを築けないまま、中国を含めた拡大路線を続けているということだ。また山田一族の持ち株はわずか2パーセント弱でありながら親族経営を続けていること、外国人投資家の持ち株が6割近いというのもリスク要因だ。これまた個人的な意見だが、安売りだけでは長期的なファンは獲得できないような気がする。僕は買った後に後悔したくないから、店員の知識とか、アフターサービスとかがしっかりしていて、初めて「家電を買うならこの店」って思うようになる。

  • 2010/11/28fin

著者プロフィール

ノンフィクション作家、ジャーナリスト
 1950年、福岡県北九州市生まれ。中央大学大学院法学研究科修士課程修了。経済誌編集者や週刊誌記者を経て、1988年独立。
 92年に『覇者の誤算─日米コンピュータ戦争の40年』(日本経済新聞社)で第15回講談社ノンフィクション賞を、2000年に『魔術師─三原脩を西鉄ライオンズ』(文藝春秋)で99年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞する。
 著書に、『ソニーと松下』(講談社)、『さよなら! 僕らのソニー』(文春新書)など多数。

「2017年 『日本企業が社員に「希望」を与えた時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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