フェリカの真実 ソニーが技術開発に成功し、ビジネスで失敗した理由

著者 :
  • 草思社
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本棚登録 : 146
レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794217905

作品紹介・あらすじ

「スイカ」「パスモ」「イコカ」などの電子乗車券や「エディ」「ナナコ」などの電子マネーには、すべてソニーが開発した「フェリカ」という非接触ICカード技術が使われている。電源を搭載せず高速で正確に認証できる、世界でも図抜けたレベルの技術開発に成功したソニーが、じつはこの技術が生み出す新ビジネスの展開には失敗しているという。どういうことか。開発当事者をはじめとする広範な取材から「フェリカ」をめぐる技術とビジネスの問題を徹底検証する。

感想・レビュー・書評

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  • フェリカの生い立ち、目指そうとした所(物販ではなく管理者としての収入)、チップの構造、現在の乱立の原因など、興味深く読んだ。
    フェリカのプログラミング本もあるそうで、それを読むのも面白いかもしれない。
    それにしても、最近Androidで入ってきているnfcを見ると、なにやら切なくなってしまいます。

  • 2010年11月刊。
    本屋さんで表紙の FeliCa ロゴが目に留まり、読んでみました。
    非接触 IC カード「FeliCa」(フェリカ) の開発ドキュメンタリーです。
    サブタイトルに「ソニーが技術開発に成功し、ビジネスで失敗した理由」とあります。
    技術的な話よりも、ビジネス寄りの話が中心です。

    最初はビルの入退場 IC カードからスタートして、電車の電子乗車券、そして電子マネーへ。

    Edy も Suica も nanako も WAON も、みんなソニーが作った同じ FeliCa という規格で作られている IC カードなのに、なぜ別々の電子マネーになってしまったのか。

    FeliCa の開発者は「本来は、電子マネーが乱立するはずはなかったんです。ひとつの決済手段として、みんなが共通に使える電子マネーになるはずでした」(p.13) と言います。

    FeliCa の電子マネー機能は、本来は IC カードで利用したサービスの代金を回収する手段として用意されていたものだったのが、ソニーが立ち上げた Edy のビジネスによって、「電子マネー」そのものが目的に変わっていく様子が描かれています。

    驚いたのは、JR東日本は最初は Suica の中に電子マネーとして Edy を入れようとしていたのに、ソニー側(ビットワレット)がそれを拒絶したというエピソード。
    「Edy は単独で展開するビジネスだから、JR と組む必要はない」との経営判断だったそうですが、現在の電子マネーの利用率では、Suica がトップ(2位は PASMO)で、Edy は Suica の半分に留まっています。

    もし、Suica の中に Edy が入っていたら、Edy が電子マネーのスタンダードになって、電子マネーがこんなに乱立することも無かったかもしれませんね。

    (2011/01/21 読了)

  • フェリカの開発と、そのビジネス展開に関して。
    フェリカの技術的な開発は、宅配系の管理から始まり、それがポシャったあとに、オクトパスカード、JR等に採用されていき、順調に進む。オクトパスカードでは、マイフェアと争い、その際に技術開発が進んだ結果、採用された。
    ビジネス的な面では、JR 東と組まずに、単独で Edy を運営していこうとしたことが、失敗した原因として挙げられていた。当初、JR 東は Suica マネーを独自に運営せず、Edy を電子マネーとして Suica に入れることを考えていた。開発担当者であった Sony の日下部さんもそのように考えていた。しかし、事業部では Sony 単独で事業を進めることにこだわり、Edy が Suica に乗らないような領域を使う仕様にしてしまった。
    もし、その時 Edy が Suica に乗り、FeliCa で唯一の電子マネーとして使われていたら、もっと便利になっただろうし、 Sony の FeliCa 関連の事業も発展していただろう。
    消費者に真に便利なものを提供することを考えていく必要性を考えさせられた。

  • 今さらながら読んでみた。途中技術的な部分でやや分かりにくい説明はあったものの、全体的に面白かった。理由は二つで、単純に読み物として面白い、もう一つが NFC やフェリカというものがどういったものなのかが理解できた事。

  • ・パスモ成功
    ・モノ売りからサービス売りへ
    ・セキュリティ高

  •  同僚がスマホでおさいふケータイでアプリでカードを選択して支払いしてるのを見ていて、ずっと疑問だったんだよね。

     なんでおさいふケータイ一台でnanacoもWAONもSuicaも使えんの?
     プラットフォームは別なんじゃないの?と。

     本書を読んで、日本におけるICカードの規格のほとんどがFelicaをプラットフォームにしているという事を初めて知った。
     しかも作ってるのがSonyだったことも知らなかった。

     え?SuicaってJR東の独自開発じゃなかったんだ...へぇ~...。


     香港の交通系ICカードに参入したのち、さらに、シンガポールにも納入しプラットフォームとしてのFelicaは成功を収めたと言ってもいい。

     しかし、日本国内の現状はICカードの乱立を招いている。それは消費者にとってもマイナスである。

     フェリカが技術開発に成功し、ビジネスに失敗した理由とはなんだったのか。

     ビジネスは出口戦略を考えてスタートアップさせないと失敗する。
     手段を目的としてはいけないというのが、フェリカの失敗から読みとれる。

  • 身近にあるビジネスケースの背後を読む上で考えさせられる。
    ソニーは本当に失敗したのか…

  • プロジェクトX、その後。迷走するFeliCaの軌跡。Edy失敗の後、乱立する電子マネーはすでに通貨ではなく交換ポイントとなり、開発者の夢は果たされていない。”全て自社製品で”というのは音響映像系メーカの悪い思考習慣と感じる。

  • ソニー日下部進氏の立場でのフェリカビジネスモデルの推移と考察。

    ビルの個人認証システムから始まり、JRとの協業へ。
    磁気のクオカードに先を越されるものの、
    1994年、香港のオクトパスカードでカードのハードのみだが、採用になる。
    JRの国家クラスのビジネスで採用のためにはISO規格準拠がWTOでは必須。
    ISO審議で非接触近接型カードとしては負け、近接通信でISO化し死守する。
    勝者はtaspoや住民基本台帳カード、パスポート、運転免許証で日本にも普及する。

    電子マネープラットフォームとしてのビジネスモデルを考える現場に対して、
    会社トップはハードのみを切り売り、似たようなカードが乱立へ。
    しまいには、NTTと合弁会社を作り、子会社ビットワレットは最終的に楽天に売ることに。
    docomoのおかげで他社含めケータイの必須機能になり、発行数は増えたが、
    いちばん使われているのは、SUICAであるのも現実を端的に表している。

    ユーザー目線でない囲い込み路線まっしぐらの悪しきソニーの時代の象徴。

  • 前にレビューした『さよなら!僕らのソニー』の著者がソニーのFelica開発の舞台裏を取材したもの。
    『さよなら!~』が2011年秋発行、本書が2010年発行だからちょうど1年の間隔で似たテーマの本を上梓したことになるが、使い回しされた内容はほとんどなかったのはさすが。

    さて内容については、全編通して「ミスターFelica」と呼ばれるFelicaの生みの親を主人公にしてストーリーが進み、フェリカ技術がどのようにSuicaに搭載されて日本中に広がり、しかしそれ以上の成功は生まなかったのかが臨場感をもって語られている。

    ということで『プロジェクトX』的な読み応えは十分にあるが、その外側の事実については大変あっさりとしていたのが残念。副題が「ソニーが技術開発に成功し、ビジネスで失敗した理由」とあるのでその理由というものをぜひ知りたかったのだけど、結局は「技術開発に成功」したのは才能豊かなエンジニアが頑張ったからで「ビジネスに失敗した」のは経営陣が阿呆だったからという話で終わってしまっている。

    本書を読んで一番強く感じたのは、メーカービジネスの難しさ。SuicaをはじめあらゆるICカードや携帯電話に搭載されているチップと聞くと誰もが「大成功ではないか」と思うが、部品メーカーからすると「たかだか数千万個」という感覚だということに驚くだろう。確かに、単価はべらぼうに安く、消耗品ではないので毎年同じ数だけ出荷できるものでもないし、民生品のように次々と新技術を採用した新製品を投入するわけにもいかない。やはり売り切りビジネスは報われないものだということがひしひしと感じられた。
    その意味で、Felica技術を柱にプラットフォームビジネスを展開させるという本書の主人公の先見の明は素晴らしく、もし彼のビジネスアイデアが実現されていたらと思うと本当に残念だ。

    最後に一つ。上で経営陣が阿呆で終わっていて残念と書いたが、ソニーが電機メーカーから脱却できなかったのは、正確には「しようと頑張ったができなかった」というのが正しいだろう。経営陣同士の権力争いや国際交渉力の低さだけでなく、過去の成功体験や既存ビジネス、あと関連会社や製造拠点とのしがらみも非常に大きいのはまさに古典『イノベーションのジレンマ』で知られている通り。経営陣が阿呆でビジネスに失敗したという論調は市井の読者からは受けるだろうが、結果論なので深みは全く無い。この著者の守備範囲ではないかもしれないが、できればその深い取材力と鋭い分析力をもって将来に向けた提言などにチャレンジしてもらえたらと思う。

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著者プロフィール

ノンフィクション作家、ジャーナリスト
 1950年、福岡県北九州市生まれ。中央大学大学院法学研究科修士課程修了。経済誌編集者や週刊誌記者を経て、1988年独立。
 92年に『覇者の誤算─日米コンピュータ戦争の40年』(日本経済新聞社)で第15回講談社ノンフィクション賞を、2000年に『魔術師─三原脩を西鉄ライオンズ』(文藝春秋)で99年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞する。
 著書に、『ソニーと松下』(講談社)、『さよなら! 僕らのソニー』(文春新書)など多数。

「2017年 『日本企業が社員に「希望」を与えた時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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