137 物理学者パウリの錬金術・数秘術・ユング心理学をめぐる生涯

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794217936

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  •   物理学でも心理学でもない。物理学者パウリと心理学者ユング周辺の人間関係を描いた伝記だ、というのが個人的な分類。
      量子力学を大きく発展させた天才物理学者パウリ。高校時代にアインシュタインの相対性理論に関して論文を投稿した彼が、ボーア、ハイゼンベルクと出会い、異常ゼーマン効果の解決で挫折し、排他原理や第4の量子数発見などの業績を収めていく話。
      彼は「ジキルとハイド」のような、昼は研究、夜は歓楽街で淫蕩にふける、2重人格のような生活を送っていたという。
      心理学上、心は意識と無意識に階層分けされ、機能としては理性、感情、感覚、直観といった4つのベクトルがある。パウリは極端に理性偏重の意識だったから、感情、感覚、直観などの機能が未成熟となり、それらは無意識に追いやられて混沌としたままだった。だから夜に乱れた生活を送るように。
      やがて、心理療法を受けるパウリはユングと出会った。

      個人的には、過去の科学者達が、最終的には神学や錬金術等、当時の常識だった、「曖昧な(という表現で良いのか疑問だけど)」学問に取り組んだということに興味がある。科学、特に(分子生物学などの)還元主義的な科学は、ブルドーザーみたいだと思う。平地を開墾するにはブルドーザーは良いけど、崖みたいなところには向かない。遺伝子だけで人の心理とかを議論するのは限界があると思う。科学が進歩して文明が発展すれば、科学で解決できないことが積み残されて、非科学的な方向に揺り戻され、その間に科学が進歩してまた文明を発展させるような。

      量子力学とか心理学とかに関して専門的なことは書かれていないけど、CP対称性の話、ちらっとでてくるので、他の本でその崩れとかの話につなげていけば面白い、と思った。

  • 137。それはパウリの生涯の終りに待っていたとっておきのプレゼントだったのかもしれない。この本のタイトルにもなっている137は微細構造定数の逆数なのだが、この部分については最後のところで少し述べているにすぎない。この本においてページの多くを割いているのは、ユングとのやり取りであったり、精神の葛藤についての考察だといえる。また3から4への言及も本書では多く語られているが、ここにおいてはいったい何が言いたいのか(おそらく数秘術だとは思われるが)わからず、でも、その占める部分や考えがパウリにとっては大事なことであったことだけはしっかり伝わってきた。物理学者がただそれだけのことで悩まず他の領域にまで踏み込んだり、他の分野の人と触れ合うことを通して見えてくる人間的営みが、私の知的好奇心を刺激したことを最後に感想として残しておきたい。

著者プロフィール

ロンドン・ユニバーシティ・カレッジ科学史・科学哲学教授。邦訳されている『ブラックホールを見つけた男』(草思社)、『アインシュタインとピカソ』(TBSブリタニカ)のほか、『アルバート・アインシュタインの特殊相対性理論』『不確定性の64年』『天才のひらめき』など著書多数。

「2015年 『文庫 ブラックホールを見つけた男 上』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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