原爆を投下するまで日本を降伏させるな (草思社文庫)

著者 :
  • 草思社
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本棚登録 : 24
レビュー : 1
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794218353

作品紹介・あらすじ

トルーマンはなぜ日本に原爆を投下したのか。なぜ8月6日、9日でなければならなかったのか-そこにはトルーマン大統領とバーンズ国務長官が密かに進めていたある策略があった。「時局収拾」をめぐる日本の指導部、背後でうごめくソ連の動向、そして秘密裡に進められていたアメリカの原爆開発計画。夥しい文献と精緻な分析で原爆投下に至る4つの日付を検証し、核心に迫る。戦後から現在に至る日本人の史観を問い質す衝撃の書。

感想・レビュー・書評

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  • おりしも、NHKスペシャルが8月6日と9日の再放送で『原爆投下 活かされなかった極秘情報』という衝撃的なドキュメンタリー番組を放送したばかりです。

    米国に負けるものかと日本陸軍も原爆製作を独自に開発していたことは以前から知っていましたが、なんと驚くことに広島も長崎も、原爆投下のために来襲したB29を数時間前に正確にキャッチしていたのに、いっさい空襲警報を鳴らして知らせなかったために、両方あわせて20万人を超える一般市民が、ドロドロになったり真っ黒焦げになったりして殺されてしまったのです。

    その後、攻撃情報を入手していたことの隠蔽工作に懸命になるということも含めて、この陸軍参謀本部幹部たちの破廉恥な犯罪的な行為は絶対に許せません。

    そして空襲警報さえ鳴っていればほとんどの人が助かったのに、見殺しにされた人たちのことを思うと、はらわたが煮えくりかえって来て正常ではいられなくなり、軍国主義はもちろん国家そのものを憎悪する気持ちにもなります。

    思わず興奮してしまいましたが、その原爆投下は、日本の軍部が降伏の意志もなくズルズルと時間が過ぎていくなか、ソ連が侵攻して来て共産主義化されることに危惧して米国が思い切った策を講じたように教えられてきましたが、とんでもない嘘で、米国の白人という人種は、黄色人である日本人を人間としても認めていなくて、そしてどうしても2発の原爆の威力を試してみたくてたまらなくて、ちょうどいい機会とばかりに大義名分をかざして、どういう死に方をするのかどんな被害が出現するのかを、日本人をモルモットに原爆を爆発させたというわけですが、この本では、それどころかルーズベルトの後の大統領トルーマンと国務長官バーンズが結託して、原爆の威力を証明するために原爆投下が終わるまで日本に降伏させなかったということが克明に分析されているのです。

    それまでに巨額の資金が投じられた原子爆弾の製造が、やがては議会にその正当性を示さないといけなくて、一瞬にして一つの都市を木っ端みじんに吹き飛ばす威力を、実際の事実で証明すれば説明は省ける、ということと、戦後のソ連共産主義の拡大阻止を図るためには原爆投下は威嚇する絶好の機会・手段となるということ。

    トルーマン個人の思惑は、ミズーリ州の田舎町者で、エール大学出身でもハーバード大学でもなく、二流と思われている大統領だけれど、今や原子爆弾をガッシリ握っている自分がソ連を震え上がらせたら、もう誰にも小物扱いされることはなくなる・・・。

    彼らには、日本に原爆を投下することが至上の命題になるわけです。

    ソ連が攻めて来て降伏を早めると原爆の効果を示すチャンスが失われることは間違いなく、それに日本の戦後処理が米国主導でなくなる。原爆の完成・日本に降伏勧告・ソ連参戦・原爆投下、このタイミングをピッタリの筋書きで進行されなくてはならないことなどなど。

    こうして、小心者のふたりの男の自己顕示欲と自己保身のために原爆はむりやり広島と長崎に投下され、空襲警報で知らされて防空壕に避難していれば助かった広島市民と長崎市民の20万人以上の命も、日本軍参謀本部幹部たちの卑劣な知らせないという行為によって奪われたのでした。

    戦争そのものが理不尽きわまりない無意味な愚挙ですが、そのなかにあって誠意とか思いやりとかいう動かし難い最低限度の人間としての行為も踏みにじられて・・・、そうか、それもこれも含めて、すべてをないがしろにするのが戦争という暴挙なのだということです。無念でなりません。

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著者プロフィール

1928年(昭和3年)、東京牛込に生まれ、横浜に育つ。水産講習所を経て台湾政治大学へ留学。台湾独立運動に関わる。現代中国史、日本近現代史研究家。主な著書に『昭和二十年』(既刊13巻)『毛沢東五つの戦争』「反日」で生きのびる中国』『原爆を投下するまで日本を降伏させるな』(いずれも草思社刊)など。本書執筆には1975年ぐらいから準備し40年ほどを費やした。親左翼的な史観にとらわれていた歴史研究に、事実と推論を持って取り組む手法で影響を与える。2013年1月急逝。享年八十四。




「2016年 『文庫 昭和二十年第13巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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