文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

制作 : 倉骨彰 
  • 草思社
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レビュー : 440
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794218780

感想・レビュー・書評

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  • とてつもない力作でした。
    この本を書くには、非常に膨大かつ網羅的な知識が必要で、著者の野心とバイタリティには大変感服しました。

    この本の内容を一行で要約するならば、
    「人は人種による生物学的な優劣はない」ということです。それを証明するために、上下巻で膨大なページを割いて説明しています。

    取り扱う内容が広範囲に及び、またそこそこ古い本でもあるため、細かい指摘はあげればキリがないと思います。
    しかし、人類のはじまりから現在に至るまで壮大なスケールで人類史を紐解いていく様は、一度読んでおいて損はないです。

    以下、私が個人的に知れてよかったことを箇条書きでまとめておきます。
    ○アメリカ大陸先住民は、コロンブスの発見以降ヨーロッパ人が意図せず持ち込んだ伝染病により95%が死んだ。
    伝染病は、銃や騎兵等の武力よりアメリカ大陸支配の直接的要因となった。
    ○パプアニューギニアの一部民族による食人文化は、
    生物相や環境要因によるタンパク質不足にあったのではないか(という推測)。
    ○技術は少数の天才によって突然つくられるものではなく、幾つもの発明が積み重なって完成するもの。また、技術は必要に応じて発明されるのではなく、発見したあとに用途が見出されることが多い。
    ○ルソーの社会契約説では、人々が理性的に人民の相違として単純な社会を放棄するとき、国家が形成させると説いた。しかし、歴史上の記録をみる限りそのような事例はなく、主権の放棄は征服または外圧によってのみ起こっている。
    ○中国では地理的結びつきが強かったことが逆に作用し、技術的にヨーロッパに遅れをとった。地理的結びつきにより政治的統一がはやい段階で達成できていたため、支配者の一存で技術の進歩が妨げられることが多々あった。

  •  昨今、歴史認識という奇妙な言葉が独り歩きしているように思う。私がここで「奇妙な」という形容詞を用いたのには理由がある。歴史を学問の一つとして捉えるならば、認識という主観を伴う表現に疑問を感じるためである。歴史が学問でないのであれば、それは想像の産物であり、余暇を楽しむための遊戯であり、個の中で閉じた世界である。より広い世界において物事を語り合うためには、その世界で共有される言語が必要であり、少なくとも今の世の中において、それは「科学」と呼ばれている。
     この本では、人類史という観点から歴史を「科学」することに努めている、あるいは努めようとしている。偏見を伴う思考から導かれる安直な結論や論理の飛躍、意図せずに行われてきた根拠に乏しい仮定などの思考停止を排除し、ある種妥当と考えられる論理を用いて、人類が何故かくある歴史を築き上げてきたのか、別の歴史を歩まなかった必然性とは何かを問う作品である。故にこの本は歴史の真実を書き下したものではなく、当時のより妥当だと思われる推論を展開した文章に過ぎない。「科学」とは真理を問う行為そのものを重視するのではなく、妥当な推論を重ねることで真理に近づこうとする過程に意味を見出すのである。
     この視点において、「銃・病原菌・鉄」は良く書かれていると思う。専門家にしか読むことのできない論文とは違い、一般読者向けに豊富な資料や参考文献も合わせて、始めから終りまで懇切丁寧に解説した文章には滅多にお目にかかることができない。文章の構成も分かりやすく、まず疑問という形で命題が提示され、背景知識として幾つかの視点からそれが考察される。そして様々な調査による事実を根拠として挙げ、その事実が満たされるための妥当な推論を展開していく。最後に結論があり、最初の疑問と合わせてその回答が紹介される。多くの学術的な文章と同様な構成ではあるが、それでも読みにくいものはいくらでもある中で、これ程までの大作を書き上げることは至難の業だろう。そして何より日本人にとり重要なことだが、邦訳が実に親しみやすい文章である。原作と比較している訳ではないので誤謬の存在は否定できないが、文章として違和感なく読むことができることは珍しい。
     内容は下巻を読み終えた後で紹介することにするとして、この本の主題を一つ紹介しておく。それは文中でも幾度となく取り上げられるが、なぜ人に持つ者と持たざる者が現れるのか、富や権力、技術や知識に不均衡が生まれる原因は何かという疑問である。各民族の能力に差異があるとか、偶然の産物と結論付けることは単なる思考の停止である。かつて数学者パスカルが人を「考える葦」と表したように、人類の歩んだ歴史を「科学」という言葉で「考える」ことで、人類史に意義を見出そうとする。こうした意志を私はこの本から感じ取れるのである。

  • 結局 人類の発展は自然の法則に従ってるということ。

  • ユーラシア大陸の地理的、生物学的特性が、この大陸発の民族を覇者にしたという話。特に重要なのは、同緯度方向に伸びていることと、栽培可能な作物、家畜化可能な大型動物がたくさんいた、ということと理解。

    学術的な検証、考察がしっかりと書かれている分、非常に長いので星-1。各節の最初と最後の段落を読むだけでも内容は理解できる。

  • ニューギニア人の「なぜ欧米の人々は繁栄し、様々な物を生み出しているが、ニューギニアの人々は何も持たないのか?その差はどこにあるのか?」という質問に対して、博士が25年の研究成果をまとめ答えたものがこの一冊である。スペイン人がインカ帝国を滅ぼしたのはよく知られているが、その差が生まれたのは何故か?という疑問に明確に答えてくれるのが本書だと思う。文系的な考察によりがちな歴史学を分子生物学、考古学、言語学の「証拠」を元に論理的に説明してくれる本書は、理系の人にも本当に読みやすくて知的好奇心を満足させてくれること間違いなし!お勧めの一冊である!

  • 問題提起の質に感動。なぜ、アメリカ大陸はヨーロッパに征服され、その逆が起こらなかったのか。新たな視点で物事を考えるきっかけをもらえる一冊でした。

  • ボリュームにめげそうになりながらも面白く読了。
    なぜヨーロッパが南北アメリカを支配することになりその逆でなかったのか。
    ある時点で社会的技術的戦力的に差があったからということは認めるとして、その差はいつからどのようにできたのだろうか。それはなぜだろうか。
    フムフム。
    これこそが教養であり歴史を学ぶ意味。高校の世界史、高校が無理なら大学の教養課程で、教科書として取りあげて欲しい本。
    目に見える事象のもう一つ外側を考える訓練になるし、前提を前提としてではなく別の因果関係の結果として読み直す態度が身に付くし、個人と社会の関わりを見直す契機になるし、食べ応えのある本だった。
    長い間読みたいと思っていた本なので、文庫化してくれた草思社に感謝。

  • 昨今の差別思想を科学的に覆す良書。

  • ■印象に残った部分
    ・ニュージーランドの先住民マオリ族による
    チャタム諸島のモリオリ族の侵略
    安定気候と不安定気候差→農耕革命→人口の増加
    資源の差→鉄器、銃器

    ・スペインの皇帝ピサロによる
    インカ皇帝アタワルパの侵略
    頭を採る、

    ・農耕革命
    (狩猟採集民族から農耕民族への転換が
    もたらした恩恵
    定住生活→分業体制→社会の組織化→文明の発展

    ・武力の差
    病への免疫
    航海技術
    政治機構
    文字

    ・アンナ・カレーニアの原則
    「幸福な家庭はどれも似たようなものだが、
    不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである」
    →家畜に適した動物と適さない動物
    →農耕に適して作物と適さない動物

  • まず何を探ろうとしているのかを提示した上で、例を詳しく説明していく形でとても読みやすい。こういうことかなと予想しながら読めるのでとても良い。

著者プロフィール

ジャレド・ダイアモンド
1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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