文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)

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レビュー : 539
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794218780

作品紹介・あらすじ

アメリカ大陸の先住民はなぜ、旧大陸の住民に征服されたのか。なぜ、その逆は起こらなかったのか。現在の世界に広がる富とパワーの「地域格差」を生み出したものとは。1万3000年にわたる人類史のダイナミズムに隠された壮大な謎を、進化生物学、生物地理学、文化人類学、言語学など、広範な最新知見を縦横に駆使して解き明かす。ピュリッツァー賞、国際コスモス賞、朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位を受賞した名著、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • とてつもない力作でした。
    この本を書くには、非常に膨大かつ網羅的な知識が必要で、著者の野心とバイタリティには大変感服しました。

    この本の内容を一行で要約するならば、
    「人は人種による生物学的な優劣はない」ということです。それを証明するために、上下巻で膨大なページを割いて説明しています。

    取り扱う内容が広範囲に及び、またそこそこ古い本でもあるため、細かい指摘はあげればキリがないと思います。
    しかし、人類のはじまりから現在に至るまで壮大なスケールで人類史を紐解いていく様は、一度読んでおいて損はないです。

    以下、私が個人的に知れてよかったことを箇条書きでまとめておきます。
    ○アメリカ大陸先住民は、コロンブスの発見以降ヨーロッパ人が意図せず持ち込んだ伝染病により95%が死んだ。
    伝染病は、銃や騎兵等の武力よりアメリカ大陸支配の直接的要因となった。
    ○パプアニューギニアの一部民族による食人文化は、
    生物相や環境要因によるタンパク質不足にあったのではないか(という推測)。
    ○技術は少数の天才によって突然つくられるものではなく、幾つもの発明が積み重なって完成するもの。また、技術は必要に応じて発明されるのではなく、発見したあとに用途が見出されることが多い。
    ○ルソーの社会契約説では、人々が理性的に人民の相違として単純な社会を放棄するとき、国家が形成させると説いた。しかし、歴史上の記録をみる限りそのような事例はなく、主権の放棄は征服または外圧によってのみ起こっている。
    ○中国では地理的結びつきが強かったことが逆に作用し、技術的にヨーロッパに遅れをとった。地理的結びつきにより政治的統一がはやい段階で達成できていたため、支配者の一存で技術の進歩が妨げられることが多々あった。

  • 第9章まで読み進めて3年程そのまま放置していましたが、第11章は感染症の話題なので新型コロナとの付き合い方を考えるのに良いかと読み進めました。

    これまで人類は幾度となく様々な感染症と戦ってきたが、今回の新型コロナのように突然大流行する感染症に共通する特徴が記されている。
    ・まず感染が非常に効率的で速いため、短期間のうちに集団全体が病原菌にさらされてしまう。
    ・これらの感染症は「進行が急性」である。感染者は短期間のうちに死亡してしまうか、完全に回復してしまうかのどちらかである。
    ・一度感染し回復した者はその病原菌に対して抗体を持つようになり、それ以降おそらく死ぬまで同じ病気にかからなくなる。
    ・感染したままいつまでも生きつづけることはない。
    ・感染者の数の減少とともに、人間の生体中でしか生きられない病原菌もそのうち死滅し、それとともに大流行も収束する。
    ・つぎの大流行は抗体を持たない新生児がかかりやすい年齢に達し、集団外部から新たな感染者が訪れるまで起こらない。

    今新型コロナで不幸にも多数の死者が出てしまっている国は、抗体を持った人も多数いるはず。
    逆に少数の死者に抑え込んだ国は、大流行に至る前に収束しているので抗体を持っていない人が多いはず。
    今収束に向かっている中国、韓国、台湾は国外からの感染者に十分注意しないと第2波にさらされる。

    この新型コロナウイルスが地球上から無くなることも、地球人全員が抗体を得ることもないでしょう。
    ピンポイントでウイルスをやっつける薬も作れそうにありません。
    進行を抑える薬、抗体を作るワクチン、抗体の有無を調べる検査キットが出そろうまで要注意ですね。

    本書の本質的なレビューでなくてスミマセン。

  • 2019/06/29
    土地やその土地がもたらした環境が、人類を支配する側と支配される側に分けたという考察。そこに至る過程が様々な文献、事象を基にとても詳しく分かりやすく述べられている。これを読むとあのいわゆる世界史の教科書がいかに勝者の歴史であり文字を持った者たちの歴史であるかということが思い知らされる。それにしても紀元前何千年の人類の営みや生息していた動植物なんかのことがここまで明らかになっているのかと驚かされた。人間ってすごいな。その執念。
    すごくおもしろいけど一旦小説でも読んで休憩して下巻読もう。濃いわ。

  • かなり前から放置してた。

    数ある人類史をテーマにした本の中ではかなり有名です。中途半端な知識欲だけではなかなか読めません。
    好奇心が必要なのです。

    内容は多岐に渡る。文明の発達において、どこの地域で何が起こり、人々の営みが何に依存していたのか。これまで無かった視点で綴られたノンフィクション。
    ノンフィクションとはいえ、思考は別だ。事実を考察した結果、導かれる答えは一つではないことに留意しなければならない。

    正直、難しい話だし、興味を持って読まなければ楽しめない。
    単純な思考を持って解説される部分もあるにはあるが、人類史をいくつも読まれている方には、より楽しめる内容なのではないでしょうか。

    下巻へ。

  • 人類の歴史が非常に分かりやすく解説され、質の高い世界史の講義を受けているような感じ。

    上巻では、各地域で発展した人類の発展の差がどのように生まれたかが解説されていた。

    人類が文明を進化させる為には、まず食料の確保が重要であり、食料が十分に確保されれば、人口が増え、余剰食糧を確保することにより、官僚(王や特権階級)や常備軍などを養うことができる。そのためにはやはり、狩猟民族よりも農耕民族が有利となってくる。
    さらに、家畜や疫病との関係により人類はより進化していく。

    人類全体の進化を説明した『サピエンス全史』よりも、本書は人類の地域ごとの発展や文明の進化の違いに特化されており、その点はより理解がしやすかった。

  • 個人的に「サピエンス全史」に続く衝撃の良書。本書は、「サピエンス全史」で考察されていた一部分を、別の角度から深く掘り下げたような内容だ。始まりからワクワクしっぱなしで、知的好奇心が満たされていく。翻訳が簡潔で読みやすい。この手の本は再読時に自分の変化を感じることが出来るため、是非手元に残しておきたい。上巻を読み終えたばかりだが、数年後の再読がもう楽しみで仕方がない。

  • 歴史・人類史に漠然とした興味を持ち始めていたので気になっていた1冊だったが、堅いタイトルに怯んで?手を出さずにいた。何度目か本屋で目次をパラパラ見た際に、第3部(第11章)がこのコロナ禍に読むのにぴったりな内容だったのでようやく読んだ。

    普段文芸書ばかりでこの様な本を読むのは初めてだったが、非常に興味深い内容だった。途中何度も同じことを言っている場面が多く感じたりもして、頑張って読み進めたところもあるが、上巻で言いたいことはP.153の図4-1に尽きると思う。大陸の形がこれほどまでに色々と影響を及ぼすとは、考えたこともなかった。

    それとやはり期待通り第3部(第11章)はとても面白かった。感染症についての歴史や知識を知れて、この章だけでも読む価値があると思う。
    この本を読む際には、傍に世界地図や地球儀があるといいな〜と思った。

  • コロナの影響で一時的に在宅勤務指令が出て、家で仕事をするはめに。家だとついダラダラしてしまうので、仕事するだけで精一杯になってしまい、他の集中力を要することに力を割くことができなくなってしまった。
    おかげで、プライベートのネット時間、および読書時間が激減中。

    この本は、特に集中力が必要とされる本なので、読み終わるのに恐ろしいほどに時間がかかってしまった。
    しかし、本当におもしろい。

    最初のプロローグを読んで、体が震えるほど興奮した。激しく好奇心が掻き立てられて、かぶりつくようにページをめくったのを覚えている。そして、章を追うごとに、そのプロローグで提示された命題が少しずつ解き明かされていく。
    まるでおもしろすぎる海外ドラマを見ている時のような精神状態に。
    うおー、そういうことか!
    ええっ、うそでしょ?
    えーっ、そうだったの?
    ・・・みたいな。
    続きが気になるのもドラマと同じ。

    著者のストーリー・テラーぶりには本当に驚く。
    こんなに複雑な話を、いとも簡単に、大変にわかりやすく展開していくので、私の愚鈍な頭にも実にすんなりスッキリ入っていく。こんな壮大な話なのに、どうしてこんなに分かりやすいのか。
    とにかくその筆力に茫然。同じ人間とは思えない。それこそ、生物学的差異があるとしか・・・(笑)

    NHKでこの本の解説ドキュメンタリーやってくれないかなぁ。著者が直接語るところを聞きたいし、この内容をビジュアルを駆使して展開したものがぜひ見たい。やってほしいなぁ。

    コロナのせいで、病原菌のところは特に興味深かった。
    しかし、恐怖心は増幅された。
    今って、全地球規模で人が往来しているから、病原菌に必要な出生率は常にどこでも維持されている状態になるのね。
    一風土病も地球規模に流行する条件がすっかり出来上がっていることは、今、まさにコロナが証明している。
    おそろしい~。人口の95%が疫病で失われたと推測されるアメリカ先住民の恐怖は、こんなものじゃなかっただろうけれど。

    著者が「この本を執筆した最大の理由」についてもいろいろと考えさせられた。それも書き留めておきたいところだけれど、ひとまず続きの下巻を読んでから・・・・

  • 大変ボリューミーな上下巻からなる歴史本をやっとのことで読み終わったので、メモを残しておきます。

    著者ジャレド・ダイアモンドがあるニューギニア人から聞かれた問いから始まる。「あなたたち白人はニューギニアに多くのものをもたらしたが、なぜニューギニア人は白人に何ももたらさなかったのだろう」

    つまりは、世界を征服した旧世界側 (ヨーロッパ系・中国系を始めとしたユーラシア大陸側) と征服された新世界側 (アメリカ大陸、オーストラリア大陸、アフリカ大陸、その他多数の島国など)、その決定的な差はなんだったのか。大陸によって技術、文明の発展に大きな差があったのはなぜか。

    例えば、センセーショナルな歴史的出来事で言うと、南米で強大な帝国を築いていたインカ帝国をスペインが征服できたのはなぜか。直接的要因はまさにスペインが「銃・病原菌・鉄」を持っていたからだ。銃で圧倒したという話はよく知られるが、一方で実は旧世界にしかいなかった病原菌が新世界を襲ったという事実もよく知られている。(スペインによる殺戮より、病原菌で死んだ人数のほうが多い)
    しかし、ではなぜスペインは「銃・病原菌・鉄」を持っていて、インカ帝国は持っていなかったのか。他の新世界・旧世界の各国にも同様に。これがこの著作で最も重要な論点。

    著者の結論は「それは人の差ではなく、その環境の差」だったと言う。決して、人種の能力の差ではない。ただヨーロッパ人・中国人はラッキーだったのだ。例えば、農耕・牧畜と言った食糧生産を行う民族は歴史的に強い(そうでない民族を圧倒している)ことがわかっているが、しかし、それは人種・遺伝子的な差異ではなく、偶然、そこに肥沃の三日月地帯のような食糧生産に適した環境があったためであり、偶然ユーラシア大陸は東西に長いからこそ、その技術を伝播することができた。
    このような論理を人類史における様々なシーンから説明する。今、恵まれている人々もただただ自分たちはラッキーだっただけ、ということを忘れてはいけないし、間違っても優れた民族なのだ、などとは考えてはいけない。

    非常に興味深い本であることは間違いないが、一方で、著書の解釈次第じゃないかと思わせる部分もあったり、遥か昔のことなのに異常に当時の様子が克明に描かれていたり、信憑性がやや怪しい部分があるので、その違和感は忘れずにいたいところ。少なくとも「日本人が不便な漢字を使い続ける理由は、漢字は社会的ステータスが高いからだ」というのは大間違いだと思う。(下巻p72、230)

    あと、タイトルが若干釣りっぽいというか、確かに歴史において銃、病原菌、鉄は重要な要素として紹介されるものの、一番重要な主張は前述の通り。

  • 1500年代、スペイン軍は新大陸アメリカに乗り込み、インカ帝国を滅亡させる。戦闘はわずか200人のスペイン兵士が8万人のインカ軍に圧勝した。勝因は、棍棒しか持たないインカ軍に対して、スペイン軍が銃・鉄剣・軍馬、そして伝染病への免疫力を持っていたからだ。

    この勝利をきっかけにヨーロッパ白人は文明が遅れていたアメリカやアフリカを次々と征服しては植民地化する。白人がリードする時代の始まりだ。

    では、なぜ銃や鉄、病原菌の免疫をインカ人は持たず、ヨーロッパ人は持っていたのか。なぜ人類文明の進歩は地域ごとに格差があるのか。地球上の最初の人類はアフリカで誕生したのに、なぜアフリカの文明進歩は一番じゃないのか。

    本書の上巻ではこうした人類文明進歩の地域格差を主に農業、畜産の拡がり方から考える。ユーラシア大陸が東西に伸び、アメリカやアフリカ大陸が南北に伸びていることが格差の大きな理由となったという説はなかなか興味深い。

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著者プロフィール

カリフォルニア大学ロサンゼルス校地理学教授
1937年ボストン生まれ。ハーバード大学で生物学、ケンブリッジ大学で生理学を修めるが、やがてその研究領域は進化生物学、鳥類学、人類生態学へと発展していく。カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部生理学教授を経て、同校地理学教授。アメリカ科学アカデミー、アメリカ芸術科学アカデミー、アメリカ哲学協会会員。アメリカ国家科学賞、タイラー賞、コスモス賞、ピュリツァー賞など受賞多数。

「2020年 『危機と人類(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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