機械より人間らしくなれるか?: AIとの対話が、人間でいることの意味を教えてくれる

制作 : Brian Christian  吉田 晋治 
  • 草思社
3.54
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本棚登録 : 300
レビュー : 45
  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794219008

作品紹介・あらすじ

「人間らしさ」を競う大会で優勝するには、どうすればいい?AIの人間らしさを測る「チューリングテスト」の大会。そこに人間代表として参加し、勝利することを誓った著者が探究した、AI時代における「人間らしさ」の正体とは?人間を見る目が変わる科学ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 「機械には思考ができるか」というテーマで、主にチューリングテストのサクラ役の経験をもとに、チャット・チェス・情報量(圧縮技術)の話題を織り交ぜながら語られている。
    人間らしさを獲得しようとするAI技術から、逆にどのような人間らしさが真似しにくいかを探ることで「人間らしさ」の本質を示そうとしている。
    勿論、これは本当の「人間らしさ」は機械には真似できないなにかであるという前提に基づいた議論である。
    AI技術が発達し人間に近づいていくことで人間の仕事や地球の支配者としてのアイデンティティが失われると危惧する人たちが多くいる中で、著者は逆に、AI技術が発達し限りなく人間に近づいてもなお真似できない「人間らしさ」が残るはずだと考え、そうしたときになってはじめて人間が純粋に「人間らしさ」だけとなると主張する。

    ところで、途中で紹介されていたディベートゲームは非常に面白そうだし教育にも良さそうだ。

  • 本書は,科学と哲学についてのノンフィクションライターである著者が「人間らしさとは何か」をテーマとして書いた本である。著者自身によれば「本書は人生について記したものである」(29頁)。具体的には,チューリングテストにさくら役として参加することになった著者が,「もっとも人間らしい人間」賞を獲得するために「人間らしい」とはどのようなことなのかを様々な角度から考えていくというものだ。

    著者がチューリングテストにさくら役として参加することが決まったところから話は始まる。チューリングテストとは,まるで生身の人間であるかのように会話できるチャット・プログラムを競い合うというテストである。つまり,チューリングテストとはコンピュータが「人間に似ている」のか「人間に似ていない」のかを見極めようとする試みなのだと言える(61頁)。しかしながら,サクラ役としてテストに参加した著者の目的はそれとは異なる。著者の目的は,本物の人間が自分を「本物の人間である」と審査員に信じさせられる会話を展開することである。では,人間らしい会話とはどのようなものなのだろう?

    本書では,非常に多くのテーマを扱いながら「人間らしさとは何か」を考えていく。魂と心,チェスの定石,合理的経済人にデータ圧縮など。これらの幅広いトピックを通じて,「人間らしさ」を形作っていると著者が主張するものは大きく二つあるように思える。一つ目は,全体を通じての統一感や人間としての一貫性である。チューリングテストでは,相手が人間かどうかを判断するための手掛かりは文字を通じた会話しかない。その会話の一部を取り上げたときに,その部分がどれほど「人間らし」かったとしても,全体的な統一感に欠けているとそれは人間らしい会話とは言えない。「人間らしいとは(...)一つの視点を持つ特定の人間であるという(51頁)」ことであり,「人間らしさの断片を寄せ集めたところで,人間らしくなれるわけではない(54頁)」のである。言い換えると,多くの知識を持っていたり言語の仕組みに精通していたりしても人間らしい会話はできないということだ。日常的に目にする文章を理解するためには語彙や文法の知識を持っているだけではなく「世界の仕組み」を理解している必要があるのである(95頁)。

    二つ目に,状況に応じた対応力(=どれだけサイトスペシフィックに対応できるか)が人間らしい会話を成り立たせているというのである(117頁)。言い換えると「会話の定石を用いた会話」は会話っぽくならないということだろう。著者のことばを借りれば「具体的な会話の「メソッド」を教えてところであまり役に立たず,営業マンやナンパ師や政治家の言葉が人間味に掛けるのは,そのせいでもある(130頁)」ということだ。就職活動の面接での会話を思い浮かべるとこの指摘にはうなずけるのではないだろうか。

    本書はあまりにも幅広いテーマが扱われているため,とりとめがない印象を受けることは否めない。それでも,読み進めていくうちに,その部分が本論と関係することがわかってくる。しかし話が唐突な感じがして読みにくいという印象は受けるかもしれない。それと関係して,本書のテーマとの関係性が見えにくいために,何を主張したいのかが分かりにくい部分も少なくないように思う。10章の「人間らしさとデータ圧縮の関係」を述べた箇所は理解しにくい。また比喩がわかりにくく比喩の役割をはたしていないと感じる記述も多い。しかし,読みにくいところはそのまま読み飛ばしてしまっても概ね全体を理解するのに支障はないかもしれない。

  • 実際の大会には触れないまま終わってしまったけど、哲学的で、科学的で非常に読みごたえのある本

  • タイトルに惹かれて購入。

    「チューリングテスト」という名の人間 VS ボット(AI) で行われる競技大会。

    それはコンピュータ端末を使用して、
    審判員が見えない人間(サクラ)とボット(AI)交互に5分間チャットを行い、
    その相手が人間かボットか判断し、その得票数を競うというものでした。

    その結果、人間と判定された最多得票数のAIには 
    「最も人間らしいコンピュータ」賞、
    また、人間と判定された最多得票数の人間には 
    「最も人間らしい人間」賞が与えられるというものです。

    これは、その「最も人間らしい人間」賞を受賞すべく奮闘した著者のお話です。

    内容の大半は実際に行われたテストの話ではなく、
    著者がその準備として意見を求めた専門家との話やその考察となっています。

    テーマ自体は面白いのですが、著者が多彩な分野に精通しているためか、話が飛びまくり、
    最終的に何を述べたかったのかが自分には良く分かりませんでした。

    チェスやボットプログラムについてのくだりは、良いのですが
    哲学的な部分が長すぎて焦点がぼけてしまった感じです。

    人間と言えどもルーチン化されたような会話しか出来なければ、
    ボットが同等又はそれ以上の会話が出来てしまうという
    現在の技術に考えさせられるものはありました。

    • ベージュさんさん
      コメントありがとうございます。

      本のボリュームも結構あるので、ざっと一読されてから購入を決めるのも良いかもしれませんね。
      コメントありがとうございます。

      本のボリュームも結構あるので、ざっと一読されてから購入を決めるのも良いかもしれませんね。
      2012/08/23
  • *****
    たとえば,コンピュータは計算が得意であるという事実によって,人間はある意味で活動する舞台を奪われるのだろうか,それとも人間的でない活動から解放され,より人間らしい生活を送れるようになるのだろうか。後者の見方のほうが魅力的に思えるが,将来「解放」されずに残る「人間的な活動」が嫌になるほど少なくなるかもしれないと思えば,それほど魅力的には感じられなくなる。もしそうなると,どうだろうか。(p.27)

     機械の世界では,パスワード,暗証番号,社会保障番号の下四桁,母親の旧姓といった「内容」に基づいて本人かどうかを認証する。だが人間の世界では,顔つき,声,筆跡,署名といった「形式」に基づいて本人かどうかを認証する。(p.32)

  • 資料ID:W0169368
    請求記号:007.13||C 58
    配架場所:1F電動書架A

  • 日経書評、2012-07-15

  • 【選書者コメント】人工知能より人間らしい、というのはどういうことかちょっと気になりました。
    [請求記号]0070:2283

  • 友人の父親である心理学の教授さんがお持ちだったものを拝借して読む。ノンフィクションのエピソードの中に興味深い知識が混ぜられていて、楽しく読んでしまう。

  • チューリング・テストに挑む人間、つまりサクラ役の情熱溢れるエッセイである。題材から想像するより多分に文学的な作風で面白く読めた。人間と見紛うチャットボットの向こうを張って自分が人間であることを認めさせる、更には居並ぶサクラ達のなかでも「最も人間らしい」という評価を得る、という難事業は、取りも直さず人間同士のコミュニケーションで起こっていることを精密に腑分けし、その中核を触れに行く旅でもある。

    人間的な会話、あるいは文字表現というのがどういうものかを、チャットを舞台として考える様々な思考は、審査員の興味を引くという申請書における課題や、「自然な会話文とは何か」という小説における課題の異母兄弟のようなものだと思う。そういう興味を持った人の書評が読みたいのだがなかなか無い。

    人間らしいチャットボットについての技術的な解説書では全然ないので、それを期待するのは不毛。

    あと卒論の指導教員としてブライアン・エブンソンが出てきた。

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プロフィール

ブラウン大学でコンピュータサイエンスと哲学の二重学位を、ワシントン大学で詩の美術学修士を取得。文学作品と科学ジャーナリズム作品を執筆している。

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