- 本 ・本 (560ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794219398
作品紹介・あらすじ
盛者必衰の理は歴史が多くの事例によって証明するところである。
だがなぜ隆盛を極めた社会が、そのまま存続できずに崩壊し滅亡していくのか?
北米のアナサジ、中米のマヤ、東ポリネシアのイースター島、
ピトケアン島、グリーンランドのノルウェー人入植地など、
本書は多様な文明崩壊の実例を検証し、そこに共通するパターンを導き出していく。
前著『銃・病原菌・鉄』では、各大陸における文明発展を分析して環境的因子が
多様性を生み出したことを導き出したが、
本書では文明繁栄による環境負荷が崩壊の契機を生み出すという問題をクローズアップしている。
ピュリッツァー賞受賞者による待望の書。遂に文庫化。
感想・レビュー・書評
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アゲアゲの高揚感を伴う歴史物語では全くなく、極めて現実的であり、冷徹な目で社会を見つめた科学の成果である。ある時期には繁栄を誇った文明社会が、その後下降線を辿り、なぜ崩壊の憂き目に遭ったのか、考古学の証拠や文献調査を通じて、明らかにしている。従って、勧善懲悪のような、わかりやすい面白みはなく、ああそれが現実だよなという類の、ある種冷たい分析である。しかし、この研究を根底から支える思考法が私には興味をそそられた。つまり、専門用語で難解極まりないという欠点はなく、文体は流暢で長たらしいが、ストンと腑に落ちる説明のうまさがある。私も別に専門知識はないのに、議論の筋を追うのにさほど難儀しないのだ。この分野の研究をするつもりではないとはいえ、思考を革新する斬新さが感知された。
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邦題は少し大げさで、原題の「Collapse, How societies choose to fail or succeed」からも分かるように、人間社会(文化)が崩壊するのはなぜか、という内容だ。世界各地の文化が、対立や孤立、衰弱を経て滅びるのは、その社会に内在する本質なのか、あるいは、自然災害や外敵の侵入など偶発的なのかについて検証する。著者は、主な要因として、自然環境の悪化、気候変動、隣接する敵対集団、友好な取引先、環境問題に関する社会の対応(適応)という次の5つの要素を挙げる。ただし、たとえばイースター島では、森林皆伐が社会の崩壊の引き金ではない可能性があるというなど、最新の学説もある。しかし、史実がどのような内容であったにせよ、著者が訴えるのは、持続的な社会を維持するためには、環境に対する意識を変え、行動することだという。全体を占める整った学説に対し、締めくくりとして語られる「環境意識の訴え」は、必然的帰結と言うより、プロパガンダと言えなくもなく、その点は多くの読者に指摘されているようだ。しかしながら、社会を価値観的に表現するなら、そのような前提があっても良いのかもしれない。
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偉大なるダイアモンド先生の二作目に挑戦。
っていうか、自分が最初に読んだ「銃•病原菌•鉄」より遥かにパワーアップしている気がする。
元々は鳥類学者らしいが、数々の論拠を打ち立てる造詣の深さに圧倒され、もはやこの人は何が専門かわからなくなる。
地質学?進化学??気候学???
良くわからないけど、あらゆる学問に精通してるスーパーじーちゃん、といった感じ。苦笑
さて、人類(文明)の発展に民族毎に差異が生じた理由を解き明かそうとしたのが「銃•病原菌•鉄」なら、本著はその対局とも言いえる数ある文明の中が滅び去った理由を解こうとしている。
また、「銃•病原菌•鉄」は、その発展の歴史を地理的に追っていく様が旅行記みたいだったけど(長い時間を旅するという意味では時間旅行記とも言えるかな?)、本著はまるで物語の様。
イースター島、マヤ文明等一カ所ずつに焦点を当て、その文明が誕生・発展してから滅びていく理由を解説している。
そしてそれは、決して物語ではなく紛れもない真実。
それだけに真に迫っており感動できる。
必死に生き自らのコミュニティを発展させようとしたものの、それが叶わず滅び行く様を見ていると、やり切れなさや虚しさと共に泣きそうになる。
まさかこの手の本でウルッと来るとは思わなんだが…
第一章が若干長く冗長に感じるが、それを超えると一気に読める。
といってもハードカバーで450ページあるけど。
印象に残り面白かったのはイースター島とポリネシア人の下り。
まだまだ上巻が終わっただけで物語は続くが、とっても満足。
やっぱりすげえな、この人は。
【メモ】
不適切な条件のもとで人々が頑迷にこだわる価値観というものは、過去に逆境に対する最も偉大な勝利を得たものでもあるのだ。
→進化の過程で生き残るのは強い者ではなく、変化に対応できる者とはよく言ったものだね。 -
ジャレド・ダイアモンドによる時空を跨いだ壮大なスケールで描く歴史観。ただし、テーマは「滅亡」。
まず最初に現代のアメリカの自然豊かなモンタナについて語られます。経済至上主義とは縁のないように見える
自然豊かなこの地域にも避けがたい現代的な問題、特に環境破壊問題の波が押し寄せており、それによって
限られた土地・水の争奪戦、それによる人間関係の問題があぶり出されます。ここから過去に滅びた文明に話がうつり、
滅亡の原因について分析が始まりますが、それらには著者独自の崩壊パターンがあり、おおざっぱかもしれないけれども
的を得た議論のように思えます。それは当然、現代文明にも当てはめることができ、過去の文明から未来の在り方を学ぶことが
できるかもしれない。
例えば環境破壊。製鉄、薪、放牧などによって森林伐採や草原の消失がそれらの回復力を上回ってしまうと、土壌が露出し、雨により
養分が流され、ますます草木が育たない土地へと変わる。過去に栄えた文明では、もともと森林豊かだった場所が多いというのはよく聞く話。また、貿易相手国が環境破壊によって滅びたために、そのあおりを受けて 滅亡もしくは悲惨な目に遭ったというパターンもある。
特にこのパターンはグローバル化がなにも現代初のシステムではなく、すでに過去において実践されているシステムであり、そのリスクも
経験済みであることを意味しているが、 経済的なメリットばかりに焦点が行きがちなため、再び同じ轍を踏む可能性がある。
上巻では滅亡の事例を挙げて終わっていますが、この先どのように展開していくのか。ジャレド・ダイアモンドは悲観論者ではなかった
はずだったので、過去の事例をもとに将来どうあるべきか、その答えを聞くことができるのかが下巻の楽しみ方になりそうです。 -
イースター島、モンタナ州、マヤ文明、グリーンランドなどの何故そこにあった文明はなくなってしまったのかに関しての本。
自然環境が非常に大きいんだけれど、思っていたよりちょっとした偶然で繁栄したり、簡単に滅んだりもするんだなって知った。
グリーンランドやイースターに関しては特に人間の固定化した信念がもたらした崩壊って結構呆気ないというか。
とりあえずヴァイキングに友好的と言う言葉はないんだなって思った。 -
上下巻併せて約1000頁あるので、途中中だるみもしたが、とても楽しめた。
「銃・病原菌・鉄」が文明興隆の条件について述べたものであるのに対して、本作品は反対の文明崩壊の条件を述べたもの。下巻でも作者が述べているが、単純に過去の文明崩壊を現在に当てはめることはできなくても、それから学び賢明な対応を考えることは可能なことである。
単純な楽観主義にも悲観主義にも与しない、「慎重な楽観主義」という作者の主張には感銘を受けた。 -
過去の文明崩壊を現代と絡ませながら語る。読ませる本だった。日本については、江戸時代の林業政策で褒めつつ、現代の途上国での森林開発で叩いてる。土壌流亡や森林伐採が文明崩壊に繋がるのがわかる。
バイキングやアフリカ、マヤについて、ひいては世界史について、もっと知りたくなる。 -
あれだけ栄えていた文明がなぜ滅んだのか・・・環境、闘争、いろいろな観点に光を当て、解き明かしていく。現代文明への警鐘でもある。1,200円の分厚い文庫本。
著者プロフィール
ジャレド・ダイアモンドの作品





