文明崩壊 下: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)

制作 : Jared Diamond  楡井 浩一 
  • 草思社
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レビュー : 60
  • Amazon.co.jp ・本 (547ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794219404

感想・レビュー・書評

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  • ・成功・存続した社会
    ・アフリカの人口爆発
    ・ドミニカ共和国とハイチ
    ・中国
    ・搾取されるオーストラリア

    文明社会はその絶頂期に人口を大幅に増やし、周辺環境を破壊して滅亡に至るのか。
    環境が許容できる以上の人口を持ってしまった社会の結末は。
    環境問題解決の2つの道;トップダウンとボトムアップ
    中規模な社会はなぜ滅亡に至ったか。大規模な中央集権体制が鍵か?
    イースター島やマンガイア島などの中規模の社会は、島全体を治める中央主権的な政治組織を持てず、分裂した集落が互いの争いで環境破壊を促進した。

    景色健忘症:徐々に進む環境変化に要注意。
    変化は突然訪れない。はい進む常態なのだ。イースター島の樹木は徐々に少なくなり、重要性を失って行った。最後の一本が切り倒された時、木は、とうの昔に経済的な意義を失っていたのだ。

    当然ながら、それぞれの環境にはその環境が許容できる人口がある。環境が回復に必要な時間以上に消費が早いのであれば 、その文明は崩壊する運命にあると言える。

    翻って、現代社会はどうか。
    持続可能な社会保障な統一的な機構を現代社会は持っているのだろうか。それぞれの国家が互いの争いで環境破壊を促進してはいないだろうか。

    ルワンダの事例は、環境問題と社会的な構造が破滅的な結果を招いた事例だ。世界はこの方向に進んでしまわないか?

    ドミニカ共和国とハイチの例も、同じ環境でも社会が異なることで結果が大きく異なることを示している。

    中国はその巨大さから、その将来が人類の将来に大きな影響を及ぼす。そして中国は振り子というべき歴史的な特徴を備えている。
    中国はその統一された政治体制から、国民とその環境を大きく変更させることが可能なのだ。

    オーストラリアは絶望的なほど脆弱な環境状況で、今後改善する可能性はあるのかな?
    破壊される環境と環境を懸念する民間と政府の対抗措置の2頭だての競馬は果たしてどちらが勝つのだろうか。

  • マヤ文明とかエスキモーとかの話含めて、人が生きるには何が必要か?サステナビリティとはなぜ必要か?それが綺麗事でなくわかる本。

  • いろいろ示唆に富んでいて、得たものは多かったのだが、特に一つ言えるのは、『土壌』が消耗される資源だという認識はコレを読むまで一切無かった。
    オーストラリアが食料(主に小麦)輸出国なのは当たり前だと思っていたが、かなり無理矢理な形なのか(そして、であるからこそ、いつまでも続くものではないのか)

  • 「文明崩壊(下)」(ジャレド・ダイアモンド:楡井浩一 訳)を読んだ。
    『イースター島の最後に残った一本のヤシの木を前にした島民が、それを切り倒しながらどういう言葉を吐いたのか』(本文より)
    我々人類は今その時の彼よりもより多くの情報に接しているのだ。希望はまだあるはずだと思いたい。

  • 下巻では崩壊を免れ存続した社会についてから始まるのだが、そこで日本の事例が出てくるのが興味深い。また現代における事例として中国、オーストラリア等が挙げられていくのだが、中でもルワンダでのフツ族同士にまで及んだ虐殺を環境的要因から考察していくのは目から鱗であった。またドミニカとハイチという、一つの島を二分する国同士の事例は、残酷な現実を浮き彫りにしながらも、環境問題とは環境に適した正しい経済や制度が選択されることが重要であることを明らかにしている。これ程までの知的興奮は、そうそう味わえるものではないスゴ本。

  • 下巻の最初は過去に社会の崩壊を組み止めたいくつかの社会を取り上げている。人知れず数千年間独自に灌漑を続けていたニューギニア高地、南太平洋の珊瑚海のはずれわずか5平方キロの孤島ながら3000年に渡り人が住み続けたティコピア島、そして江戸時代の日本。

    江戸時代といえば実は日本人の身長が一番低かった時代で、小氷期に入って気温は低下しているにも関わらず、人口は関ヶ原の頃の1200万人が明治維新の頃には3300万人と人口が増えており、しかも鎖国のために現代と違って食料は自給するしかないし木材やほとんどの金属品も自給している。1570年から1650年にかけて城や寺社の建造の木材伐採で森林破壊が進んでおり、1657年の明暦の大火をきっかけに幕府による森林管理システムが作られた。また人口も1721年2610万人に達した後1828年には2720万人と一機に人口増を抑制している。江戸時代の米価と出生率の変化が連動しているということから食料不足に対応したものらしい。1707年の富士山の大噴火、1783年の天明の大凶作、1833〜36年の天保の飢饉と厳しい気候条件だったようだが他の社会が目先優先で森林伐採をし結果として食料不足に陥ったのに対して、江戸時代の日本は耐えて生き延びた様だ。確かに昔の城の写真なんかを見ると今と比べて緑が少ない。日本の森林は回復している一方で現在の日本は世界最大の木材輸出国でもあり、ジャレド・ダイアモンドは森林破壊を輸出していると厳しく批判している。

    現代の環境破壊の代表は誰もが思いつく中国と少し意外なオーストラリア。中国の状況はよく知られているので今更書くこともないのだがこの本の出版が2005年で10年前にすでに大気汚染はひどいものだったらしい。ジャレドは一人っ子政策や1998年に始まった国家的な伐採禁止など時に中国の政策は一機に進むことがあると期待している。逆に振れた場合には大躍進政策や文化大革命など桁外れの悲劇も生んでいることも知りながらだが。広大なオーストラリアだが小麦の栽培に適した土地は限られており、地力の回復が弱い土地が多い。オーストラリアの場合、温室効果ガスの削減に最も有効な手段は牛を一掃することだという。土地の開墾や羊の放牧とイギリスから持ち込まれ大繁殖したウサギも土地を劣化させる要因になっている。

    過剰な人口は内戦や社会崩壊の直接の原因とは言えないにしても、社会を不安定化する大きな要因になっている。ハイチとドミニカ共和国は同じ島を二分した国でスペインとフランスのサトウキビのプランテーション政策に振り回され今に至っている。先に入植したのはスペインだったがその後は力を入れず、西端に後から入植したフランスが連れて来たアフリカからの奴隷の子孫が反乱を起こしハイチになった。この時東部の入植者がスペインに助けを求めこちらが後のドミニカの基礎となっている。どちらも政情不安をへて独裁者が現れたが偶々ドミニカ側では工業化や現代化と森林保護に力を入れたのに対し、ハイチは先に農業経済を発展させ裕福になったが後に森林破壊と地力の劣化のため増え過ぎた人口を支えきれなくなった。

    ブルンジとルワンダといえば当時アフリカで最も人口密度の高い国であり、ルワンダでは少数のツチ族が多数のフツ族を支配する植民地時代の歴史から両国が独立するときにも民族対立と多数の殺戮があった。94年フツ族大統領の乗った専用機が着陸前に撃墜されたのをきっかけに起こったのが有名なフツ族によるツチ族の大虐殺で6週間でルワンダ総人口の11%にあたる推定80万人のツチ族が殺害された。しかしあまり知られていないのだがこの時フツ族同士でも殺し合いはありあるフツ族の村では人口の5%が殺されている。増え過ぎた人口に対して相続される農地は減る一方であり土地の相続を巡って家族や親族間で殺し合いが起こっていた。

    ジャレド・ダイアモンドはいくつかの希望の道も述べている。例えば搾取や環境破壊といえばたいてい悪役になる石油会社だが、パプア・ニューギニアのシェブロンが管理する石油鉱区では他の場所と比べても森林が保護されている。住民に取っては森林を切り開いて農業をするよりも補償金の方が大きく、シェブロンもより環境を破壊しない開発の方が最終的に安上がりになると計算した。石油に比べ大規模に土地を収奪する金属鉱山の場合でも例えばティファニーは供給元に環境への保護という条件を入れている。これは宝石店の店頭でのデモが効果を現したらしい。企業は当然ながらどちらが得かで動くし、企業イメージの低下を怖れる理由があるからだ。

    比較的楽観的な予測では世界の人口は100億人になる前に飽和するというが、この人口が今のアメリカの生活をすることはできない。イノヴェーションが解決するという楽観論もあるが、これができない場合は貧困を固定するのかハードクラッシュか。ジャレド・ダイアモンド自身は資源の適正な管理や短期志向に陥らない政治決定などがあれば希望はあると慎重な楽観主義者だと言うのだが。世界が江戸幕府の様であれば人口を増やさず、貧しくはなっても生き延びることができるということか。

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  • 一方で問題解決に成功した文明もある。江戸時代の日本、ティコピア島などはどのようにバランスを保つことが出来たのか。さらに現代の危機としてオーストラリア、中国の惨状を分析する。しかし現代では世界のあらゆる地域が密接な関係をもち過ぎていて、特定の場所の文明だけが滅びるということが可能なのだろうか。情報の共有、資源の輸出入、ライフスタイルの平準化によって全人類が共倒れになってしまう危険を感じてしまう。問題の解決は非常に困難だと思われる。

  • この前の著書「銃・病原菌・鉄」の読後感は、偉大な先人たちの足跡を知り、知識欲が満たされたのでしたが、今回は焦燥感にかられた読後感でした。過去にあったことは(文明崩壊)、大昔のことだからと決して無視できることではなく、現在から未来に繰り返し起こりうることです。
    全世界の様々な民族、地域の歴史を辿り、検証を繰り返した著者が導き出した結論は、単なる読み物の結末でないだけに勇気を持って読む内容になっています。この地球上の人類はみんな運命共同体です。人類は今、あたかもあの大型豪華客船タイタニック号に乗り、目の前に氷山が近づいていることに気がつかず今宵、宴会にふけっているかのようです。
    それでも著者が、慎重ながらも希望の兆しがあると述べているところに、私たちひとりひとりの心がけ次第で、世界の命運が変わる可能性があることに気がつきます。
    環境に配慮しない生産活動は、脆弱な環境に負荷がかかる状態を生み、更に人口が過密化していくと、経済的に困窮した住民の不満から政治的混乱、崩壊を招く。住民はその土地から脱出し始め、内戦やテロリストの温床になっていくという負のスパイラルの現象は、現在のソマリアやルワンダといった貧困で政情の不安定な国があてはまるのですが、世界中が密接なつながりのある現代社会の生活は、遠い国だから関係ないこととはもう誰もいえない仕組みになっています。
    ・・崩壊しつつある社会を支配する裕福な人たちは、自分や自分の子供たちの権益を確保するのではなく最後に飢える人間、最後に死ぬ人間となる特権をやみくもに買いに走る傾向にあるようだ。・・と皮肉ぽっく書いていますが、結局はひとり勝ちしても最後は何の得にもならないということなのでしょう。

  •  現代を中心に環境破壊を防いだ例と防ぐことができなかった例を示して、その分岐点を探っている。江戸時代の日本、現代のドミニカはそれを防いだ例として挙げられているが、共通するのは強力な統治者の存在である。しかし、その統治者がミスを犯した例としてオーストラリアが挙げられている。オーストラリアは現在でこそ環境意識の高い国となっているが、かつては環境破壊先進国であったという。ミスの例として原生植物を根絶やしにすることに補助金を出したり、オーストラリアの土地に適さないヒツジやコムギの導入推進などが挙げられている。これは環境に影響をおよぼすことを予想できなかったというだけでなく、それを認めたくない心理、あるいは文化の維持に力点を置いてしまったため対応しなかったという判断が指摘されている。
     もう一つ現代の視点として企業の態度についても考察している。こちらはだれが誰に圧力をかけ圧力をかけられるのか、環境を守ることが利益につながるのか否かという規準によって環境保全に対する態度が決まっているという興味深い指摘がされていた。これは言い換えれば、環境保全をしないほうが利益につながると判断すれば企業は環境保全に取り組まないということであり、環境保全を謳っている企業を安易に信用してはいけないという事でもある。
     グローバル化が文明にもたらす影響についての考察はある意味あたりまえのことばかりが挙げられていたものの、改めて列挙されるとどこにも逃げ道がないことが分かる。文明を崩壊させる要因ともに崩壊せ汗ないためにできることも挙げられていたが、一番重要なのは関心を持つということではないかと思う。関心を持てば今対応できないことであっても将来対処できるかもしれないが、関心を持たなければそれを見逃してしまい何も対処できないからである。関心を持ち声を上げる、これが文明を存続させる一番の方法ではないかと感じた。

著者プロフィール

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)地理学教授
1937年ボストン生まれ。ハーバード大学で生物学、ケンブリッジ大学で生理学を修めるが、やがてその研究領域は進化生物学、鳥類学、人類生態学へと発展していく。カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部生理学教授を経て、同校地理学教授。アメリカ科学アカデミー、アメリカ芸術科学アカデミー、アメリカ哲学協会会員。アメリカ国家科学賞、タイラー賞、コスモス賞、ピュリツァー賞、マッカーサー・フェロー、ブループラネット賞など受賞多数。

「2019年 『危機と人類(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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