最重度の障害児たちが語りはじめるとき

著者 :
  • 草思社
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本棚登録 : 27
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794219992

作品紹介・あらすじ

「かんなかあさんがすきめいわくばかり」
これは最重度の重度重複障害児として生まれ、まわりのことを何も理解していない
と思われていた緩名ちゃんが、九歳のときに初めて表現した文章です。生まれつきの重度障害によってまわりとコミュニケートとれない子どもたちは、これまで「言葉をもたない」とみなされてきました。ところがパソコンや筆談、指談(しだん)などを使う特別な方法が開発されたことで、じつは豊かな言葉を心のうちに持っていたことがわかってきました。
 これらの一つ、ドーマン法を紹介したNHKドキュメント「奇跡の詩人」には疑惑が集中しましたが、本書ではさまざまな方法でコミュニケートしはじめた人たちのケースが紹介されます。はたしてそのすべてがニセ物でしょうか。
 多くのケースについて丁寧な取材をもとに書き下ろされた本書は、障害者とその家族の苦しみと喜びに寄り添った感動の書です。と同時に、「言葉とは?」「意識とは?」「人間とは?」という人間存在の根本を問い直す重要な示唆にも満ちています。

感想・レビュー・書評

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  • 相手の言うことが分かっているのに、自分の思いを伝えられない。
    自分がわかっているということすら、伝えられない。
    それはどんなにつらいことだろうと思います。想像を絶します。
    「この子はなにも分かっていない」と思われていた人たちが、わずかな体の動きによって意志を伝えていると、誰かに気づいてもらえた瞬間というのは、どんなに、どんなに、うれしかったことでしょう。その喜びの深さも測り知ることができません。
    セクシャルハラスメントも花粉症もDVもそれに名前がついていなかった時は問題自体が人に見えませんでした。
    一度も言葉を話したことがない人は、意志や人間らしい感情があると認められてきませんでした。が、彼らが音声によらない、機械や通訳を介した言葉を獲得した時、初めてその人に人間として名がついたのかもしれません。

  • 前半はどのように障害児から話を聞いたかをいくつかの事例で紹介。中盤から始まるNHKでほうそうしたりした「奇跡の詩人」についての話が書かれていてこちらのほうが興味深い。「奇跡の詩人」に特定しての話に特化した内容ではないので、ものたりない人もいるかもしれないが。

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著者プロフィール

1960年、鳥取市生まれ。九州大学法学部卒。NHK記者を経てジャーナリスト。専修大学社会科学研究所客員研究員。九州大学大学院、法政大学、大妻短大等で「平和学」「地方分権論」「多文化コミュニケーション」等担当非常勤講師を歴任。著書に『占領は終わっていない――核・基地・冤罪そして人間』(緑風出版)、『最重度の障害児たちが語りはじめるとき』、『認知症を生きるということ――治療とケアの最前線』、『脳障害を生きる人びと――脳治療の最前線』(いずれも草思社)、『被爆者が語り始めるまで』、『奇跡の人びと――脳障害を乗り越えて』(共に新潮文庫)、『「被爆二世」を生きる』(中公新書ラクレ)、『名前を探る旅――ヒロシマ・ナガサキの絆』(石風社)。共著に『スペイン市民戦争とアジア――遥かなる自由と理想のために』(九州大学出版会)、『スペイン内戦とガルシア・ロルカ』(南雲堂フェニックス)、『スペイン内戦(1936~39)と現在』(ぱる出版)ほか。

「2018年 『マツダの魂 不屈の男 松田恒次』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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