データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則

著者 :
  • 草思社
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レビュー : 113
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794220684

作品紹介・あらすじ

社会現象や経済を科学的にコントロールすることは可能か。先端サイエンスが人類究極の問いに答える。
なぜ思った通りに毎日の仕事をこなせないのか、どうしたら受注率を上げられるか、店の売上を上げるにはどうすればいいか、組織統合を短期間に成功させるには…。人間行動のビッグ・データを人工知能で解析することで、このような問題に明確に答え、驚愕の成果を生む新しい科学が誕生! 人間行動の法則性を明らかにし、人間が「幸福」になることこそが利益の源泉であるとデータから示す、革新の一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 日立の人工知能「Hくん」の開発者が、ビッグデータ解析技術を用いた人間科学、社会科学上の成果を実例を使って分かりやすく解説した書。

    第1章では、人間の活動が自然法則、熱力学の法則に従っている事が示されている。当たり前のようでもあるが、我々の行動が統計的に見て物理法則に厳密に従っているとしたら、我々の意志や感情っていったい何なのだろう。単なる揺らぎに過ぎないのだろうか。

    第2章では、人は(行動の結果が成功したかではなく)積極的に行動を起こすことで幸福感を感じ、しかも身体運動の活発度と強い相関がある事、身体運動の連鎖が集団全体にハピネスをもたらし、モチベーションが高まることがが示されている。ということは、体を活発に動かしながらコミュニケーションをとること、このようなコミュニケーションがとりやすいような職場環境を調えることが生産性向上に繋がる、ということだ。すぐにも実践したくなる、目から鱗の何とシンプルな法則。

    第3章では、「1/Tの法則」=「最後にある人に会ってからの時間をTとすると、再開の確率は1/Tに比例して減少していく」法則が示されている。これは、「去るものは日々にうとし」、あるいは、「続ければ続けるほど、止められなくなる」を表しているのだという。

    第4章では、運を、人との繋がりの量(知り合いの知り合いまでで何人に到達できるか=到達度)と定義して、到達度を高めることが、組織の問題解決速度を向上させることが示されている。これは常識的な結論だが、センシングデータの分析により、企業合併の際などに誰と誰を繋げるのが効果的か、といった具体的な処方箋を示せるところが凄い。

    第5章でやっと、人工知能の話になる。人工知能に出来ること出来ないこと、人工知能の役割と人間のやるべきこと、が、明快に示されていて納得。人工知能は、問題を設定することができず、目的が定量化可能でこれに関わるデータが大量にある問題にしか適用できず、結果に責任をとらない。人工知能が人を超えるというのは、少なくとも現時点では飛躍した夢物語であることがわかって少し安心。
    人工知能を使ったビッグデータ解析が、社会に共感とハピネスをもたらすという著者の展望は、明るい未来を予感させる。本当にそうなって欲しい。

    とても読みごたえのある、面白い本でした。

  • とても面白かった。日立製作所の研究所に在籍する筆者が、ウェアラブルセンサによる人間行動の膨大なデータを集積し、時間の使い方、幸福の感じ方、運といった人間行動の法則化を試みている。その試みが、冒険のようでもあり、感動すら覚える。ハピネスの半分は双生児の研究などにより遺伝で決まっている。お金や人間関係、健康といった環境要因からのハピネスは40%。残り10%は積極的に行動してるかどうか。そんな「ハピネスの方法」をビッグデータから裏付ける。ジョブズがノーベル賞教授とたまたま昼食会で隣り合わせたことが復帰の糸口なったことを例に、運=人との出会いの多さととらえる。名札型センサにより、企業内の人と人の出会いをデータ化。知っている人、その人が知っている人という2段階までの人の数を「到達度」とし、それを多くすることが運につながる、と結論づける。さらには、会話の中身も、双方向的であることをウェアラブルセンサによる動きから読み解き、共通目標のあるものが双方向のコミュニケーションをとることも、裏付ける。ビッグデータが、PCに演繹から帰納という革命を起こし、科学→応用→実装というリニアなモデルを変えていくことを、実例を通して語っている。

  • 人間の行動(腕の動き)が、実は一定の法則に従っているという。
    1日の中でエネルギーをうまく配分して活動しているらしい。もちろん日によってずれ(法則からの乖離)はある。
    しかし原則的にはある法則に従って人間は1日の行動(腕の動き)に使うエネルギー配分を決めている。
    確かに言われてみれば、生活の中で無性に力を抜きたい時間がある。身体を動かしたいと思うこともある。それが実は法則に従っていたのかという驚きがあった。
    1日の時間配分に対する考え方を改めるきっかけとなった。

    ビッグデータ活用についても筆者は述べる。
    従来型の「演繹的」なコンピューターの活用では、自明な結論しか得られないという。大量のデータを基にコンピューターが「帰納的」に法則、すなわち「方程式」を導き出すことが今後必要とされる。
    ホームセンターの売上向上の実例が取り上げられているが、目から鱗であった。人間にはとても見抜けない原因と結果の関係をコンピューターが解き明かしているように感じた。

  • とても興味深い内容で、新鮮なインプットであった。

  • 仮説検証では到達できない
    向上すべき業績を明確にする
    向上すべき業績に関係するデータをヒトモノカネに広く収集する。
    仮説に頼らず、コンピュータに業績向上策をデータから逆推定させる。

    時間の使い方は法則により制限される
    社員のハピネスを高めると会社は儲かる
    休憩中の会話が活発だと生産性は向上する
    身体運動は伝染する。ハピネスも伝染する
    行動は続ける程止められなくなる
    最適経験フローを測る
    運は人との出会いによってもたらさせる
    運の良い人は組織のどこにいるか
    運をつかむには会話の質も重要
    会話とは「動き」のキャッチボールである
    ビックデータでもうける原則
    人間のやるべきこと、やるべきでないこと
    >問題を設定する。未知の領域で意思決定。責任をとる。
    繰り返しの力
    腕の動きの総数は決まっている
    行動を起こすこと自体が人の幸せ
    今日あったよかったこと

    データーをいかに生かして、会社を楽しく稼げる場にするか。身体を継続的にやや速く動かせるような状況を創ること。行動すること自体がハピネス。会話は動きのキャッチボール。

    行動にうつせる状況、状態をつくる。制約をできるだけなくす。予算的にも、気持ち的にも。

  • ウェアラブルセンサを利用したビッグデータによる分析。
    最も興味深かったのは「運の引き寄せ」をビッグデータにより科学した章。
    以前学んだ組織論と同じ事を言ってたと解釈できたがアプローチがより科学的。とても面白かった。

  • ・腕の動きの激しさと発現確率は、U分布(指数関数)に従う。すなわち、60回/1分の運動は1日の1/2なら、120回/1分の運動は1日の1/4である。
    ・活発な会話をする人(会話中の身体運動量が多い人)は問題解決に優れた人の特徴である。コールセンターでの受注は、休憩中の会話の活発度に相関していた。
    ・続けば続くほどやめられなくなる。(ひとたびメールの返信をしないとその状態が続きがち/集中・熱中・没頭という状態が続く)

  • ・ 「行動の結果が成功したか」ではなく、「行動を積極的に起こしたか」がハピネスを決める
    ・ 人の身体運動が、周りの人の身体運動を誘導し、この連鎖により、集団的な身体の動きが生まれる。これにより、積極的な行動のスイッチがオンになり、その結果、社員のハピネスが向上し、生産性が向上する。
    ・ 組織ネットワークにおいて、三角形が多いと、リーダーが直接的に介入しなくても、現場で自律的に問題が解決される可能性が上昇する
    ・ 「建設」「追従」「懐疑」のなかでは常に「建設」が望ましい。
    ・ 会話の双方効率が高まるのに重要なのは、真剣に両者が交わり合うことが必要な挑戦的な目標が設定されていることなのである。
    ・ 今、ビッグデータの活用に求められているのは、むしろ「帰納」的な能力であり、これは従来、コンピュータが不得意だったものだ。帰納とは「個別的・特殊的な事例から、一般的・普遍的な規則法則を見いだそうとする」ものである。
    ・ ビッグデータで設けるための3原則
    1) 向上すべき業績(アウトカム)を明確にする
    2) 向上すべき業績に関するデータをヒトモノカネに広く収集する
    3) 仮説に頼らず、コンピュータに業績向上策をデータから逆推定させる
    ・ 営利活動は4層の構造からなっている。まず第1層が、向上すべき「財務」の層である。財務は業績を直接反映する。第2層が、「需要」の層である。需要とは、顧客のニーズや購買行動を指すが、お金を払う主体は顧客だから「需要」が第1層の財務に強く影響するのは当然である。第3層が「業務」の層である。需要あるいは顧客のニーズに応えるのが業務である。この成否が需要に影響を与えるのも当然である。そして、第4層が「設備と投資」の層である。業務の生産性や規模や品質を決めるのは、より中期的な設備や人材への投資である。インフラの整備や人の育成などがこの層に対応する。
    ・ 人間にしかできないところが3つ残る。
    1) 学習するマシンは、問題を設定することはできない。あくまでも与えられた問題に関して、データを活用して的確な情報と判断を提供するだけである。人間は、解くべき問題を明らかにし、学習するマシンを活用して得られた判断を実行することが求められる。
    2) 学習するマシンは、目的が定量化可能で、これに関わるデータが既に大量にある問題にしか適用できない。しかし、我々は道の状況であっても、前に進むところが求められる。目指すところが曖昧だったり、定性的だったり、過去のデータがない状況でも、霧の中で進むよう前進することが求められる。このような状況で意思決定するのは人間の仕事である。
    3) 学習するマシンは責任を取らない。そしてこの責任を取ることこそ、人間に固有の能力である。
    ・ 従来の単なる「便利さ」を超え、「生きる意味」信念」「夢」までを理解し、その実現を支援するサービスへの進化が求められよう。
    ・ 人工知能には3つの分類がある①運転判断型②質問応答型③パターン識別型

  • 衝撃的な内容

    科学者的なアプローチで、大変興味深い

  • 国内外問わずビッグデータ関連本のなかで最も示唆に富んだ一冊である。類書はバズワードやデータ処理の進化に焦点を当てた本が多いが、本書はさらに踏み込んだビッグデータから読み取れる人間行動の法則に迫っている。

    動作が1/Tに従うU分布になっている様は神の意思さえ感じさせる。さらに筆者はエントロピーを持ち出しカルノー効率を語られ人間もエネルギーの法則に従って生きていることを実感させられる。またハピネス=主体性、運=到達率など、帰納的分析手法によっていよいよ人間が解明される段階になってきたのだなと感じさせられる。

    軽い気持ちで手にとったが大変興味深い一冊であった。

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著者プロフィール

株式会社日立製作所フェロー。2004年から先行してウエアラブル技術とビッグデータ解析で世界を牽引。論文被引用件数は2500件。特許出願350件。「ハーバードビジネスレビュー」誌に、「Business Microscope(日本語名:ビジネス顕微鏡)」が「歴史に残るウエアラブルデバイス」として紹介されるなど、世界的注目を集める。のべ100万日を超えるデータを使った企業業績向上の研究と心理学や人工知能からナノテクまでの専門性の広さと深さで知られる。2014月に上梓した著書『データの見えざる手』(単行本)が、BookVinegar社の2014年ビジネス書ベスト10に選ばれる。博士(工学)。IEEE Fellow。電子情報通信学会、応用物理学会、日本物理学会、人工知能学会会員。日立返仁会 副会長。東京工業大学大学院特定教授。文科省情報科学技術委員。1994年ISSCC 最優秀論文賞、2007年BME Erice Prize、2012年Social Informatics国際学会最優秀論文など国際的な賞を多数受賞。

「2018年 『文庫 データの見えざる手』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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