- Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794221179
感想・レビュー・書評
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388.1
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そういえば、なんで昔話ってたいてい「むかしむかしあるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました」って定型文で始まるの?という、わりと誰でも一度は思いそうな疑問を突っ込んでくれている本。おじいさんってなんで「山へ芝刈り」に行ったりするの?とかね。
平安後期とか江戸盛期とか、女性の持参金が多額になる時代なんかに特に、そもそも男女とも結婚できる比率がぐっと下がることとか(英国のヴィクトリア時代を思い出す)、姥捨てとか、老人の社会的地位とか、色々面白い話が載っていた。
現代の日本のように子供より老人のほうがずっと多くなる時代には、どんな話が生まれたり、残っていくんだろうとふと思った。 -
物語の中には、その時の一般人の生活がよくあらわされている、という基本姿勢から、様々な「文学」として残る古典やおとぎ話の中から、当時の老人の地位を読み解いていくものです。
今日のような社会保障のない時代、老人の地位は危ういものでした。
現代でこそ、望めば結婚ができる環境にはありますが、かつては、「結婚できる」ということ自体がステータスで、独居老人も多く、また、結婚していても、子がいない、子がいても、若い夫婦から無駄飯ぐいと疎まれることも多いのが実情です。
そんなわけで、現代なら退職しているような歳でも、生きるために働いているのが当然で、そうした人たちのサクセスストーリーであれば、大どんでん返しといえるのだそうです。
「姥捨て」の話については、物語にはあるにせよ、日本で実際に行われていたという確証はないものの、他国にはその事実があるようですし、そこから伝来した可能性や、あるいは、無文字であった縄文時代の生活を引きずった口伝である可能性もあり、そこまでさせる過酷な状況がうかがい知れます。
異国の地では、老人を宝と考えるところもあるようですが、どうも、日本はお荷物のように考え、その地位は低かったようです。老人の性や様を笑ったり、嘲ったりするものも多く、しかし、昔語りの語り手となることで、老人たちは、自分たちの様々を伝えていくことの中で、若い人たちとのつながりを持っていたといえるようでもあります。
それで、多く、おじいさん、おばあさんを主人公とした物語が語られていくこととなったようです。
口伝のおとぎ話は、「昔々あるところに」と語るニュースの役割もあったと、以前、習ったことがあります。イキイキとした老人の話は、誰もの行く末として、興味のあるものになったことでしょう。
現在も、死に方に多く関心が寄せられ、死ぬ前に持ち物を減らしたり、年金の額に頭を悩ませたり、痴呆や介護におびえるなど、悩みは尽きません。
しかし、もっと貪欲に生きてもいいかな、そんな希望を持つのが健全だなぁ、なんて、少し気が軽くなりました。 -
「むかしむかし、あるところにお爺さんとお婆さんがいました」で始まるのがほとんどの昔話。なぜ昔話では、老人がこんなにも活躍するのか?
昔話や古典文学を読み解くと、「老人」知られざる実態が見えてくる。
年老いてなおあくせくと働き、時には厄介者として山に捨てられてしまう・・・決してお話の中だけではなかったようで。お年寄りは敬い大事にするものとした考えが割と新しいものだと知り愕然としました。さらに、老いは醜いと蔑まれバカにされていたとは・・・日本人は昔から若い女性(男性も)の方がもてはやされていたんですね。
ただちょっと、私の思ってた内容とは違いました。もっとお伽噺をメインに考察するのかと思っていたのですが、源氏物語とかの方が多かったです。 -
なぜ昔話に老人が多いのか。著者は、社会的地位の低い老人が、知恵や体力の無さ、鈍感さといった老人ならではの特徴により成功を収めるギャップや逆転の面白さから来ていると分析。加え、語り手が老人である事が多かったからだとも。
昔話は、語る方も聞く方も極貧の事が多く、夢物語りたいが故、老人が一発逆転する話が多いのだと納得した。老いた人は捨てられてきた社会、だからこそ庶民の夢が昔話には詰まっている。
子ども達に昔話をたくさん聞かせよう!という風潮が学校図書館では盛んだが、本当の昔話は学校では語れないものが多いな。。
本当は怖いグリム童話なんかより、日本の昔話の方が怖いな。。
最終章で、イカす老人達を紹介してくれた所に救いがあった。
面白く読めた。 -
昔は婚姻率が低く、独居老人も多かったなど知らないことが多かった。高齢化社会の現代と悩みは同じ。
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思っていたより研究書寄りの内容で面白かった。老人の地位を古典から読み解く、と聞くと地味なイメージだけど、読んでると引き込まれる。自分も子供がいないので老後の話は身につまされた。難を言うと、同じことの繰り返しの箇所だったり、過程を後回しにしている文脈があったりして構成がよろしくなかった。
最終章で『イカす老人』として紹介されている上田秋成、世阿弥、北斎とお栄は元々気になっていたのでもっと深く掘り下げて読んでみたい。 -
もっと「なぜ」にフォーカスしているかと思ったけど、記録から読み取れる事実の羅列のみで、なかなか「なぜ」にたどりつかず、消化不良。
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以前同じ著者の「本当はひどかった昔の日本」がとても面白かったので読みました…あの本とセットで読むとより面白いかもしれません。あの本で書かれていた部分を掘り下げたもので、実に興味深く…また、シビアで目をそむけたくなるような「現実」の数々…今回も読んでいて気が滅入りました…が、まぁ、これが現実というか、こういう状況、感覚だった時間の方が長かった、と思うと…なぜでしょうか、やはりあきらめにも似たような感情ですが「ホッとする」気がします。よくどの分野でも言われる「今のわかものは」「昔はもっと(なにやらあったかみがあるとかそういう言い分)」ですが、この本を読めば…何気なく読んでいた昔話のキャラクターのおかれていた環境や生活、描写がとても深く重いものにかんじます。そういえば昔話の終わりは、幸せにくらしましたとさ、で締められますが、だいたいその「幸せ」は経済的な豊かさだったな、と今になって気付きました…。物言いがものすごくハッキリザックリしているので、読んでいて苦痛ながらも爽快感がありました。面白かったよー。老人とは…の説明も的を射ていて愉快でした。最後に思ったのは「年を取る前にしにたい」ですかね。
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