東京道路奇景

著者 :
  • 草思社
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本棚登録 : 93
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794222343

作品紹介・あらすじ

道路の上にもまた道路、上下8 層にも及ぶ多層構図。11 叉路まである複雑な多叉路。墓地や学校のグラウンド下を通る道路。いたるところにこんなに変な道路構造物がある都市は、世界広しといえど、東京以外にない!
そして、東京の魅力は、この道路に起因しているのではないか……? 東京の奇妙な道路=道路奇景を多数の図版と写真で紹介、東京の未来像を考える。スマートフォンなどで現地をすぐに確認できるQRコードも掲載。

感想・レビュー・書評

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  • 「東京は未完の都市」。
    ハッとさせられる言葉だけれど言われてみれば、それはそうなのだ。何せ都市計画も6割のところで停滞しているとのことだし、何より年がら年中どこかしら工事しているではないか。

    六本木の中央にある高架橋。海外からの観光客には驚きの光景らしい。
    確かにタイムズ・スクウェアやピカデリーサーカスの中央にああいう高架橋(首都高)が走るとは思えない。

    初台の交差点や池尻大橋のジャンクションなど奇景ともいえる(他の先進国の都市ではみられない)道路事情をこの本は紹介してくれる。生まれ育った土地が初めて訪れた観光客のように新鮮な驚きでみられる。

    ここ数年欧米の都市を訪れる機会に恵まれた。ベルリンやロンドン、フィラデルフィアやニューヨークから東京に戻るとこの街がいかに他にはない街かということに気が付かされる。

    著者はそのわけを短期間に発展せざる得なかったことが要因なのではないかと説いている。
    かつては水の都市といってよいほど水路が発達していた東京。この街を喫緊に近代化させる過程で道路網を整備するために水路(水田の用水路であったり玉川上水だったり)を埋め立てたりして活用したのだ。そのため格子状ではなくクネクネと曲がりくねり、土地の狭さを補うために高層に重ねたりした。


    何故、都市整備を急ぐ必要があったのだろう。昭和の東京五輪に合わせて首都高を作り環状線を広くして都市開発が行われた。
    東京出身のロックバンド=はっぴぃえんどは「街の雪など汚れた当たり前 そんな馬鹿な 誰が汚した」と東京五輪で変わりゆく街を嘆いた。

    そして、今年また五輪がこの街で催される。
    また「汚され」たのだろう。

  • 東京にはなぜ奇妙な道路が、多いのか?


  • 改めて、東京の道路は面白いと思った。
    昔、先輩の家で惑星ソラリスを見たとき「コレって首都高なんだぜ」と言われたことを思い出した。

  • 道路プランのマニア向け。都市に埋め込まれたロジスティクス・システムの3次元的構造について、思いを巡らす楽しさ。

  • 「ブラタモリ」以降、雨後の筍の如く出版され続ける地形本。本書も一応はその流れの一端に位置付けられるが、ここでは東京を縦横に巡る「道路」のネットワークに焦点が当てられている。工学部出身の著者にしては技術系の話題は少なめで、むしろ意外なほど真っ当な歴史的/社会的側面から、インフラとしての道路を切り口として東京の都市形成過程が紐解かれて行く。

    最初に羽田空港から新宿新都心までの山手通り沿いに現れる「奇景」スポット巡りにより東京の奇景が類型化され、さらに海外主要4都市との比較の中で「なぜ東京には他に見られない非日常的光景が日常として溶け込んでいるのか」が考察される。著者によればそれは「都市間交通網の整備が脅威でしかなかった中央集権国家としての近世日本が、急速に西欧にキャッチアップしようとして移動手段の整備を先行させ、相対的に遅行した道路インフラをカバーしようとして首都高が急速かつアドホックなやり方で建設されたから」ということになり結論としてはやや在り来たりの感はあるが、立体的視点から描かれた豊富な図表の挿入により極めて直感的で分かりやすい構成となっている。東京各所の混沌とした景観に「未完の美」の香りを嗅ぎ取り、そこに都市としての「伸びしろ」を見る著者の視点には自分としても共感するところが大きかった。

  • 2016/12/5

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著者プロフィール

川辺 謙一(かわべ・けんいち)
交通技術ライター。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。メーカーで半導体材料などの研究開発に従事した後に独立。鉄道・道路・都市に関する高度化した技術を一般向けに翻訳・解説している。おもな著書に『図解・地下鉄の科学』『図解・首都高速の科学』『図解・燃料電池自動車のメカニズム』(講談社ブルーバックス)、『東京総合指令室』『図でわかる電車入門』(交通新聞社)、『東京道路奇景』『日本の鉄道は世界で戦えるか』『東京 上がる街下がる街』(草思社)などがある。

「2022年 『世界と日本の鉄道史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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