若い読者のための第三のチンパンジー (草思社文庫)

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レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794222800

感想・レビュー・書評

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  • ジャレド・ダイアモンドってそんなにいいのか?という疑問を解決すべく手に取った一冊。

    内容としてはラディカルな人間否定が中心となっているように見えた。「人類はXXをしてきた」「我々はXXという過ちを繰り返してきた」という原罪をたっぷりと盛り込んだ感じで、この辺りはちょっと面倒くさいというか、なんだか「生きててスミマセン」みたいな印象をもたらす。なんか他に書き方なかったのか?と思う。

    この自己否定感というか「全人類の自虐ネタ」の部分を除いてしまえば、内容としては進化生物学の本としてはダントツに読みやすく内容も濃い。

  • 罪もない市民を理不尽に傷つけるような凶悪犯罪者が、人権を盾にして刑を免れようとしている姿を見てやりどころのない怒りと虚しさを覚えてしまうのは、きっと僕だけではないと思います。
    そういう時に僕の頭をよぎるのは、いっそのこと、そんなことする鬼畜な犯罪者は人間じゃなくてチンパンジーなんだよ、ってことにしてしまえば、チンパンジーには人権なんか無いんだから極刑にでも市中引き回しでも、あるいは生体実験のサンプルとして利用するでも、なんでもできるんじゃないのか、という、ちょっと危ない思想だったりします。
    でも現実にはそんなことはもちろんできない。じゃあ一体、人間とチンパンジーの差って一体なんなんだろう、という疑問を持ったのが、僕がこの本を読むことにしたきっかけです。名著「銃・病原菌・鉄」の著者ジャレドさんならこの僕の疑問を簡単に解決してくれるだろうと。

    ところが、いくらジャレドさんと言えども、この疑問はそう簡単に解決できるものではないようで、本の中でも、この疑問に答えるために実に様々な視点で人間とチンパンジーとの違い、長い進化の過程でチンパンジーはいつチンパンジーから人間になったのかなどの研究と考察が語られていました。
    まず、遺伝子的に見ると、コモンチンパンジーやピグミーチンパンジーと人間の遺伝子は、98.4%が同じなのだそうです。このたった1.6%の違いが、人間に、チンパンジーを捕獲して檻に入れたり生体実験のために殺すことを許しているのか、と問われると、簡単にそうですとは言えない。
    じゃあ遺伝子構造以外で人間とチンパンジーの違いは何なのか。言葉を話す、繁殖期以外でも性行動をする、介護など他人の世話をする一方で他人を殺す、絵画や創作などの芸術を楽しむ、たばこや酒を飲んだりドラッグをやる(自傷行為をする)、ジェノサイド(大量殺戮)をやる、など。これらは、人間特有の行為なのか、そもそもなぜ人間はこういった行為をするのか、チンパンジーや他の動物はこういった行動を取らないのはなぜか、など、ジャレドさんお得意の「なぜ、を突き詰める」がこの本の中でも実践されています。

    この、人間とチンパンジー(あるいは人間以外の動物)の違いってなんだろう、その違いはなぜ生じたんだろう、という疑問が突き詰められていった結果、この本の最後の方では自分が人間であることが嫌になってきます。この地球に生きる生物の中で、自然を損ない、他種を絶滅危惧に追いやり生態系を破壊している唯一の生物が僕たち人間だけであるという絶望的な結論がこの本のクライマックスだからです(この本の後半1/3はほとんど人間が地球にもたらした害悪について述べられています)。

    凶悪犯罪者はもうチンパンジーってことにしていいんじゃね?、という良からぬ思想がきっかでこの本を読み始めた結果、凶悪犯罪者どころか自分も含めて人間みんなクソじゃん、という結論に至ってしまいました。そんな読了後のなんとも言えない後味の悪さを味わいたい方に、この本をおすすめしたいと思います。(←そんな人おらんやろ)。

  • なんか、タイトルを見て、勝手に、もっと哲学よりの本だと思ってたんだけど、めっちゃ思いっきり、人類学というか生物学というか的な内容だった(笑)。
    結構淡々と書いてあるから、しかも大発見があるというわけでもないから、その辺は、そんなに「面白い!」という物ではなく、じゃあなんでそんなにこの本が山積みだったのか??と思ったくらいだったが、どうやら、この著者、銃・鉄・病原菌、だかの著者だったらしい!何も知らずにタイトルだけで買ったんだけど(笑)、期せずして、興味のあった著者のを読んだことに(笑)。しかも、解説を読む限り、そのエッセンスは、十分本書にも入っている、と。大体展開は読めたゼ、らっきぃ。
    あと、こういう分野って、まだまだ未知のことも多いし、そもそも考古学的な世界の話になると、化石とかから仮説を立てて想像せざるを得ないから、結局、淡々と事実を書いているかのようにも読めるものの、このロジック自体が、この著者の独特な思想と知識によるもので、十分面白いものということなのだろうということも、解説等読むとすごく分かった。そこ理由だな。

    でも、もちろん、読んで面白かったことも結構あり。チンパンジーも200語以上の語彙を教えれば覚える(視覚情報を使用)のであって、知恵の差ではない、要は人間は、たまたま声帯が発達したからこれだけ言語が扱えるようになったんだ、とか、人間とチンパンジーの遺伝子の差は2パーセント未満、とか。地球外生命を探すとかいうけど、本気か??地球の歴史を考えれば、自分たちより発展した文明の人と出会った場合には確実に蹂躙されたり虐殺されたりすると思うが…信じられん。とか(笑)。確かに、って思った。進化の歴史を考えれば、同じタイミングで進化することなんて相当レアなのに、って。
    あとは、、何かまだあったはずだが…何だっけ。。あ、そうそう、農耕文明が何故ヨーロッパではすぐ広がったのに他の大陸では広がらなかったのか。これは、土地が東西に延び同じ気候だったから。ペトラが実は森林の中に王国があった(超衝撃だった)が、薪とかの取りすぎで滅亡したと思われ、侵略どうのではない、とか。他の文明も意外と同様とか。そんな感じで昔から人類は環境破壊と他種の絶滅を加速させてきたのであって、昔に戻るべきとか言う人もいるが、むしろ今の方が、いろんな不安要素もあるものの、一応は過去から学んだ行動を起こしているから希望があるのではないか、とか。人間以外の動物も虐殺的な、同種の殺しも行うらしいとか。
    個人的には、that's it !だけど、サクッと読める感じの本でこれだけ得られれば十分よね。

  • P222 キツツキと収斂進化
    いろいろな種類の生物がそれぞれ独立して進化していきながら、同じような特徴を帯びるように変化していったり、あるいは似たような生態的地位、つまり生存を可能にする環境を占めるようになったりすることを生物学者は「収斂進化」と呼んでいる。
    →これは梅棹忠夫が「文明の生態史観」で生物学の「遷移(サンクション)」の概念を用いて日本とイギリスが別々に独立して進化をした結果、どちらも近代化し、同じような文明にたどり着いたと説明したことを彷彿とさせた。
    本書の文脈とは全く関係なく、あくまでただの連想。

    本書では、収斂進化の存在を認めつつも、反例も多いことを根拠に、人類の考える方法による宇宙での同様の生命体探索に疑念を投げかけている。

著者プロフィール

カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)地理学教授
1937年ボストン生まれ。ハーバード大学で生物学、ケンブリッジ大学で生理学を修めるが、やがてその研究領域は進化生物学、鳥類学、人類生態学へと発展していく。カリフォルニア大学ロサンゼルス校医学部生理学教授を経て、同校地理学教授。アメリカ科学アカデミー、アメリカ芸術科学アカデミー、アメリカ哲学協会会員。アメリカ国家科学賞、タイラー賞、コスモス賞、ピュリツァー賞、マッカーサー・フェロー、ブループラネット賞など受賞多数。

「2019年 『危機と人類(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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