若い読者のための第三のチンパンジー (草思社文庫)

  • 草思社
4.01
  • (34)
  • (40)
  • (25)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 665
感想 : 36
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794222800

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 歴史を学ぶ意義とは過去の失敗から未来の教訓とすることだと痛感する。

    言語、農業、高度な技術を手に入れ大躍進を遂げた人類はジェノサイドだけでなく種の大量絶滅、環境破壊をもたらした。

    外来種などと言って駆除しているが元はと言えば人間が持ち込んだもの、人間側から見た時の害でしかない。

    ジェノサイドと聞きウクライナ侵攻を想起させる。
    確かに非人道的極まりなく直ちにロシアは侵攻を止めるべきと思う。
    ただ、第二次世界大戦以降、ウクライナに関わらず多くの地域で紛争・戦争が止むことはなかった。
    現代において珍しくヨーロッパを巻き込む大きな戦争ということで注目を集めている節は否めない。
    やはりヨーロッパ中心主義という無意識的差別が横たわっている気がしてならない。

  • テーマは異なるが、個人的には同氏の『危機と人類』のほうが好みだった。
    比較事例分析として、詳細までつっこんだ話のほうが読んでて納得度が高い。本書ではかなり大きな視点で複数のテーマを扱うため、読みながらも一部は反証の余地ありそうだなとか余計なこと思ってしまった。

    動物の分類・種としての”人類”を対象にかなり幅広い分野に渡って分析していく。自然人類学、地理、歴史、考古学、動植物の知識、哲学、心理学などに広くまたがって見識がある方でないと書けないのでは。まずそこに舌を巻く。
    専門用語がなく読みやすい。”若い読者のための”というだけあって、こういった学問に興味を持たせるための入門編としてベストと思う。

    個人的には「楽物・タバコなど自己を危機に晒す本能的な自傷性」「狩猟・採集社会から農耕社会への変遷に伴う光と陰」あたりのテーマは目からウロコな部分もあり、ぜひとも深掘りしたいと思った。
    自分がタバコ吸い始めた動機なんて、当時カッコつけたい(モテたい)という以外のなにものでもなかったが、これまでなんとなくごまかしていたように思う。本書を読んでやっぱりモテたい願望(ハンディキャップをものともしない強さアピール)が本質だったのかとなんだか照れ臭い気分になった。

    太古の昔から自然環境や周囲の種族(同族含む)に対して”我ら”本位に振る舞ってきた人類は、今後どうなるだろう?氏の言う通り希望はあるのか?

    何も知らずに安穏と生きるのは楽だが、思考を停止してはいけない、と改めて自戒。

  • 人類は霊長類仲間であるチンパンジーから大きく進化した存在であるのは間違いない。しかし仲間が持つDNAをどれほど克服できたのだろう? 戦争という名の共食い、自らの住みかを破壊し続ける利己主義、われわれは他の多くの動植物と同じく、誕生と同時にその崩壊を運命付けられている存在なのか? 著者は人類学や生物学の見地から人類史が多くの過ちを引きずりつつ今日に至り、最早元に戻せないほどの負荷を人間社会と自然環境にかけている。
    極めてロジカルで納得のいく展開であり、『銃・病原菌・鉄』に匹敵する名著だと思う。しかしなぜか結論の段階で環境保護主義者に変貌してしまう。このことに帰結させたいのであれば、「なぜわれわれ人類は環境保護に関心を向けるべきなのか」をロジカルに説明すべきだろう。人類は破滅してはならないというメッセージの背景を知りたい。

  • 某所読書会課題図書: サルから類人猿が分離したのが3000万年前.進化が続き2000万年前のテナガザルが分かれ、オラウータン、ゴリラ、ヒト、ボノボ、コモンチンパンジーと続く.ヒトとチンパンジーが分かれたの700万年前.その後直立して歩くようになり、手が有効に使えるようになる.言葉が使えるのがヒトと他の類人猿との最大の相違点だ.膨大な資料を駆使して書き上げられた物語は、現代を生きるヒトとして参考になる事項が満載だ.折を見て紐解くことにしよう.

  • 人間について学びたい、自分とは何かについて考えたい人にオススメの入門書。

    人間について広いトピックで語られている。
    例えば、人種が分かれた理由だとか、言葉の起源についてだとか、宇宙の向こうに誰かいるのかとか、種の絶滅についてだとか。
    語られている内容が幅広すぎてここには書ききれない。どれも面白いトピックで、そこそこの文量がある本書だが無理なく読み切ることができた。

    ただ、人類をよく理解するためには本書で得られる知識の枝葉の部分をよく調べていくべきだと思う。本書のコンセプトは「若い読者のため」であるから、本書は人類学に興味をもつきっかけを作っているにすぎない(とはいえ、膨大な知識量だが)。

    私は、現場を軽んじる指導者のようにならないためにも、人類学について色々な文献を調べていきたいと思った。


    まあ、長々と書きましたけども面白くて話のネタにもなるんで色んな人にオススメできるなーって思ったって感じです。

  • 人間を人間たらしめるものは何か。道具の発明か火の使用か言葉を持つことか。我々にとって真に重要なものはなにか、他の生物の行動や人間の起源などを深い知識をもとに考えることができる。自分はそういう読み方をした。
    人間がチンパンジーではないのは言葉を組み合わせて複雑な意味を伝えられるからだとすると、オンラインのコミュニケーションが増えるいま、言葉の使い方をより磨く必要があると再認識した。

  • 人間とは何かを様々な切り口で考察する本。現代人が特別に環境破壊的なわけではなく、これまでも森林伐採による破滅や乱獲による大量絶滅を何度も引き起こしてきたという点にショックを受けた。例えばアイヌは資源の保存に気をつけながら漁や収穫をしていたが、そういう慎重さを持っている集団の方が稀ということなんだろう。リカバリ不可能な状況まで進んでしまう前に、多くの人類が過去を学び過ちを繰り返さないように、なんとか間に合わせるにはどうしたら良いのか、真剣に考えないといけない。

  • ジャレドダイアモンドのいろんな本の内容をざっとさらった入門書的な立ち位置?ザザーっと興味のある所を読んで知的好奇心の刺激を得るには良い本。翻訳も癖がなく、読みやすい。

    人間を人間たらしめるのは「言葉」と「道具」なんだろうな。ホモ・サピエンスを読んでも思ったが。

    この二つの発達以後、身体的な意味での成長はほとんどないにも関わらず、短期間(この時間軸が面白い)で圧倒的な技術の進化を遂げていることが驚異的。

    先住民の独自の文化が失われることによる影響として、言語が絶えることで、その言語を使っていた人が話していた独自の世界観を知る方法も失われるってのは確かにあるんじゃないかと思った。

  • 友人からおすすめとして借りました。進化生物学者の書いた自然人類学的の入門書。いま話題の感染症にもふれてあるし、歴史や生物学、環境学など幅広い内容。悪く言えば広すぎてよくわからないけど、そもそも進化生物学(だけじゃないけど)を目的に書いてるわけで、各エリアの深掘りは他の専門書に譲るはず。そういう意味での入門書なんだろう。文庫で約400ページとけっこう多いが、読みやすい

  • マオリは虐げられた側という感覚があったが、実はニュージーランドの生態系を最初にぶち壊し大型生物を何種類も絶滅に追い込んだというのは発見だ。

著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジャレド・ダイアモンドの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ジャレド・ダイア...
クリストファー・...
宮部みゆき
ブラッド・ストー...
エリック・リース
ヴィクトール・E...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×