日本の鉄道は世界で戦えるか: 国際比較で見えてくる理想と現実

著者 :
  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794223241

作品紹介・あらすじ

「世界一」というのは、思い込みに過ぎない。
日本の鉄道は、特殊すぎる。特殊すぎて、世界で役立つ場所が見つからない――。日英仏独米を徹底比較、日本の鉄道の「立ち位置」を探る!

「日本の鉄道は世界一」という誤解が日本の鉄道を苦しめている。
世界で初めて高速鉄道を実現した国、日本。毎年、新規開業や延伸があり、相互乗り入れや増発などでサービスも向上し続けたため、日本人は「日本の鉄道は世界一」と自然に考えてきた。だから新幹線輸出も当然、うまく行くはず、だった――。日英仏独米の鉄道を比較することで、日本の鉄道のあまりに特殊な立ち位置を明らかにし、漠然とした楽観主義に警鐘を鳴らす、国際比較鉄道論。

[内容より]
日本ほど鉄道に向いている国はない
日本の鉄道は特殊である
日本の特殊性が生んだ「鉄道万能論」
「世界一」というのは思い込みに過ぎない
過剰な期待が海外展開の障害となる

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、一般的に日本人が信じている二つの命題について、ファクトベースで厳しい現実をつきつけます。なんとなく分かっていたのですけど、携帯電話端末と同じく、日本という特殊な環境に過度に適用するように進化してしまったため、なかなかそのままでは海外で通用しなさそうです。そして、国鉄民営化以降も、多くの路線で乗車人員数が減り続けており、海外展開どころか、足下を見れば危機的な状況にあります。
    http://naokis.doorblog.jp/archives/Japanese_railway_facts.html【書評】『日本の鉄道は世界で戦えるか』(1)〜鉄道のファクト : なおきのブログ
    http://naokis.doorblog.jp/archives/History_of_railways_in_Japan.html【書評】『日本の鉄道は世界で戦えるか』(2)〜鉄道大国の道と衰退の足音 : なおきのブログ
    http://naokis.doorblog.jp/archives/future_of_railways.html【書評】『日本の鉄道は世界で戦えるか』(3)〜これからの日本の鉄道 : なおきのブログ


    <目次>
    はじめに
    第1章 日本の鉄道は特殊である
    1・1 鉄道利用者数が極端に多い国、日本
    1・2 なぜ日本で鉄道が特異的に発達したのか
    第2章 日本の鉄道を海外と比較
    2・1 英仏独米日の鉄道をくらべる
    2・2 鉄道史をくらべる
    2・3 鉄道の現状をくらべる
    第3章 日本と海外の都市鉄道をくらべる
    3・1 米英仏独日の都市鉄道をくらべる
    3・2 都市鉄道史をくらべる
    3・3 より具体的にくらべる
    第4章 日本と海外の高速鉄道をくらべる
    4・1 日英仏独米の高速鉄道をくらべる
    4・2 高速鉄道史をくらべる
    4・3 リニアとハイパーループによる高速化
    4・4 より具体的にくらべる
    第5章 空港アクセスと貨物の鉄道を国際比較
    5・1 空港アクセス鉄道
    5・2 貨物輸送
    第6章 イメージと現実のギャップ 172
    6・1 日本人は鉄道が好き?
    6・2 日本の鉄道技術は世界一なのか
    6・3 鉄道ができると暮らしが豊かになるのか
    6・4 鉄道に対する認識のギャップ
    6・5 認識のギャップが過剰な期待を生じさせる
    第7章 これからの日本の鉄道と海外展開
    7・1 鉄道の維持は難しくなる
    7・2 鉄道が時代の変化に対応するには
    7・3 鉄道の海外展開を成功に導くには
    7・4 「競争」から「融合」へ
    第8章 国際会議で見た日本の鉄道の立ち位置
    8・1 第9回UIC世界高速鉄道会議
    8・2 イノトランス2016
    おわりに
    参考文献

    2018.02.17 東洋経済オンラインより
    2018.05.20 読了
    2018.05.21 朝活読書サロンで紹介する。

  • タイトル通り、日本の鉄道が世界で戦えるかを検証した本である。そもそも日本の鉄道が世界一だという価値観に疑問を感じていたところではあったので、参考になった。

  • 続けて、2冊鉄道関係の本を読んた。
    1冊目はこれ。政府の「質の高いインフラ輸出」の掛け声に対する警鐘とも取れる本。実は東海道新幹線は、最先端ではなく、海外の既存技術の組み合わせで行ったとのこと。仏、独、米、英などとの都市交通の比較(歴史的経緯の比較も)も面白い。日本の良さを見るためにはきちんと海外のベンチマークをしながら、何がガラパゴスかを見極める必要がある。利用者視点で、高速鉄道だけでなく、都市内の交通、first/last one mile 含めたトータルで考えることが大事と改めて思った。
    そういえば、祖父は鉄道省の技術系役人だった。。。
    私が新人の時にいた某社某工場(当時は鉄道から発祥)の(大昔の?)地鎮祭に役人の一人として呼ばれたと話していたな・・・。

  • 請求記号 686.2/Ka 91

  • 本書の提案を読みながら一方で考えていたのが高齢者の自動車事故の増加。地域の交通事情は地域住民で考えるという提案自体には賛成だが行き着く先は地域の終焉のような気もしてきて悩ましい。

  •  常々思っているが、日本の鉄道技術は世間で言われているほどには世界一ではないと思う。

     例えば、高速鉄道における安全性能は世界一だと思う。
     ATCによる連続制御は、点制御のヨーロッパのETCSより安全性能は高い。
     しかし、双方向運転に対応できるヨーロッパ式に対し、逆線運転不可能な日本式(正確にはできるが著しく速度低下する)では、運転の使い勝手は劣る。
     そのATC技術を構成する信号機器は明らかにオーバースペックだ。

     部分部分を見れば世界一の技術を持っていると思うが、全体としてみればどうだろう。
     そもそも、世界一という漠然とした言葉の定義はいったい何だ。

     日本人の「世界一の鉄道」という幻想を捨てるところから考え直さないといけないという筆者は主張する。
     海外への鉄道インフラ輸出を進めているが、別にそれって日本式じゃなくても良くない?と思う。高いし。
     ”世界一の鉄道技術”の押し売りをやめて、もっと柔軟な鉄道システムの提供をしないといけないのだと思う。

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著者プロフィール

川辺 謙一(かわべ・けんいち)
交通技術ライター。1970年生まれ。東北大学工学部卒、東北大学大学院工学研究科修了。メーカーで半導体材料などの研究開発に従事した後に独立。鉄道・道路・都市に関する高度化した技術を一般向けに翻訳・解説している。おもな著書に『図解・地下鉄の科学』『図解・首都高速の科学』『図解・燃料電池自動車のメカニズム』(講談社ブルーバックス)、『東京総合指令室』『図でわかる電車入門』(交通新聞社)、『東京道路奇景』『日本の鉄道は世界で戦えるか』『東京 上がる街下がる街』(草思社)などがある。

「2022年 『世界と日本の鉄道史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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