文庫 データの見えざる手:ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則 (草思社文庫)

著者 :
  • 草思社
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本棚登録 : 266
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794223289

作品紹介・あらすじ

幸福は測れる。幸福感が上がれば、生産性は向上する。
AI、センサ、ビッグデータを駆使した生産性研究の名著。ついに文庫化。

著者は、ウエアラブルセンサを使って職場での従業員の行動を計測、そのビッグデータを人工知能で解析して生産性向上につなげるという画期的な研究を行ってきた。その研究によれば、生産性の向上は、従業員を「管理」するのではなく、逆に従業員の「幸福感」や相互のコミュニケーションを高めることで達成されるという――。
文庫版のために新たに「著者による解説」を追加、「日本の生産性はなぜ上がらないのか」「人工知能は人間から仕事を奪うか」「幸福の計測は何をもたらすか」「幸福になるとなぜ生産性は上昇するのか」など、現状分析と最新の研究成果を語る。


1  時間は自由に使えるか
2  ハピネスを測る
3  「人間行動の方程式」を求めて
4  運とまじめに向き合う
5  経済を動かす新しい「見えざる手」
6  社会と人生の科学がもたらすもの
著者による解説

感想・レビュー・書評

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  • 最後まで新しい知見に溢れた内容で、非常に勉強になりました。この内容で2014年に書かれているのが本当に驚きです。人の行動を読み解くことで、今まで科学とは無関係に考えられていた「運」との関係性の説明は非常興味深いものでした。 
    本のタイトルだけでは、書かれている内容についてイメージが沸きにくいかもしれませんが、人の行動記録から読み取ることのできる考察は、本当に凄いです。また、読み返したい本です。

  • 面白い(主観)!
    最近読んだ本の中ではダントツ(主観)!

  • この本 もっと早くに読んでおくべきでした。得られた知見が本当に多かった。まず、データを取って客観的にみることですね。

    まず、技術者らしくエネルギーの保存則の話から。これらの方程式が自然法則の基本であり、それらがすべて保存則、とくに「エネルギーの保存則」から派生する式だとすれば、「エネルギー」の概念こそが、自然現象の科学的な理解の中心にあることから始まって、人間が1日に使えるエネルギーの総量とその配分の仕方は、法則により制限されており、そのせいで自分の意思のままに時間を使うことができないことをウエアラブルセンサの計測結果から示している。見事に指数分布(本ではU分布と書いてある)に従うらしい。そこには「繰り返しの力」という人間が普段感覚として意識していない力が働いて、世の中を動かしているという。学生時代に読んだフェラーの「確率論とその応用」でもそんな話が出ていたことを思い出した。勝ち負けは偶然に起こったとしても、それを繰り返していくうちに、凄く勝つ人と負け込む人に偏りが生まれるという話だ。にわかに信じがたい話だけど、ちょっと考えるとすぐわかる。例えば、最初に1回、偶然勝ったとして、+1とすると、+1の状態が-1になるためには2回続けて負けないといけない。その確率は1/4。つまり1度勝つとなかなか負け側には行かないし、逆もまた真。フェラーを勉強した時に、割と最初が肝心だと思った記憶があるけれど、その話がまた出てきた。「繰り返しの力」ってそういうもの。だから貧富の差ができる。実社会ではこれに本当の意味での能力差があるから、より格差は広がる。ただ、ここで言いたいのは格差のことではなく、人間の活動自体が指数分布に従っているということ。具体的には1分当たり60回以上の動きをするのは1日の半分だが、1分当たり120回以上の動きとなると1/4、180回以上となると1/8になるということらしい。筆者いわく1日の時間を有効に使うには、さまざまな帯域の活動予算を知って、バランスよくすべての帯域の活動予算(エネルギー)を使うことが大切だと気づく。これを無視して、ToDoリストを作ったり、1日の予定を決めたりしても、結局はその通りにはならないということらしい。

    あと、ハピネスは計測できるという話。まず、人間にとって、自分から積極的に行動を起こしたかどうかが重要らしい。心理学の調査結果によると、人は自ら意図を持って何かを行うことで、幸福感を得ることが判っている。具体的には人に感謝を表す、困っている人を助けてあげる、そういう日常の簡単なことで人間はハピネスを感じているらしい。つまり、行動を起こした結果、成功したかが重要なのではないく、行動を起こすこと自体が、人の幸せだというのだ。幸福な人は、仕事のパフォーマンスが高く、クリエイティブで、収入レベルも高く、結婚の成功率が高く、友達に恵まれ、健康で寿命が長いことが確かめられている。定量的には、幸せな人は、仕事の生産性が平均で 37%高く、クリエイティビティは300%も高い。重要なことは、仕事ができる人は成功するので幸せになる、というのでなく、幸せな人は仕事ができるということだ。そして、ハピネスと身体活動の総量との関係が強い相関を示しているらしい。ハピネスを研究しているリュボミルスキ教授とのコラボの結果は興味深い。毎週、「良かったこと」を書き出してもらった対象群と、単に「できごと」を書き出してもらった対象群では、「良かったこと」を書き出してくれた対象群の方がハピネス度が高かった。そして、その対象群の方が活動量が活発だったという実験結果が出ている。

    これを企業の生産性と結び付けるところもあって、研究によると、身体運動の活発度は、人から人へと伝染するらしい。まわりの人たちが活発だと自分も活発になりやすく、まわりの人たちの身体運動が停滞すると、自分も停滞する。結果、ハピネスとは実は集団現象だということになる。ハピネスは、個人のなかに閉じて生じると捉えるより、むしろ、集団において人と人との間の相互作用のなかに起こる現象と捉えるべきものらしい。そして、集団にハピネスが起きれば、企業の業績・生産性が高まる。「活発な現場」では「社員の生産性が高まる」し、一方「活発でない現場」では「社員の生産性が低くなる」のは普遍的・一般的な傾向ということになる。

    もうひとつ、運も計測できるという話。仕事がうまくいく人は、共通して「到達度」が高いというのである。「到達度」とは、自分の知り合いの知り合いまで(2ステップ)含めて何人の人にたどり着けるかというもの。あと「三角形」が多いことも重要らしい。つまり自分の知り合いAとBがお互いに知り合いであり、そこには「三角形」ができるということ。三角形が多いと、リーダーが直接的に介入しなくても、現場で自律的に問題が解決される可能性が上昇するためらしい。まあ、一言でいうと職場のコミュニケーションなのだけど、情報を集中させるのではなく流通させることで組織の成果は高まるということでしょうか。

    色々なセンサーで体の動きを計測すると、このコミュニケーションの密度も判るらしい。まあ、それは何となく判らないでもない。積極的に話に入り込んでいけば、体の動きも出るだろうし、興味がなければ、あるいは聞き流していれば、体は動かない。それが数値化できてしまうという話。

    最後はAIの話でしたが、これはこれで面白かったけど、ここまでの話の知見に比べるとそんなに新しいものではなかったような気がする。まあ、書かれた時期を考えれば凄いのかな。とりあえず、色々な知見を得られる良書でした。

  • ウエアラブル技術とビックデータ解析で世界を牽引してきた著者が、人間の行動を科学的に分析している。「どうすれば幸福感を高められるか」や「どうすれば幸運に巡り会えるのか」といった研究の中で実践方法を説明しており、知的好奇心をそそられる。科学的根拠にもとづいた組織マネジメントについても大いなるヒントとなるし、AIに関する考察も面白い。時間をおいて、再読したい本。  

  • 「データの見えざる手」
    読後、最適なタイトルだと思った。アダム スミスやピーター ドラッカーが理想とする社会が到来しようとしている。昨今のAI・ビッグデータ、働き方改革“ブーム”は本書が発信源でないかと思えるほど。『国富論』とともに『道徳感情論』を書いたスミスが言いたかったのは、「経済性と人間性とは、相反するものではなく、互いに関係しあうこと(p235)」。一見理系的な内容だが、「第1章 時間は自由に使えるか」や「第2章 ハピネスを測る」は良い意味で予想を裏切られた。すべての組織人に薦めたい久しぶりの最高評価!

  • 原子と力学の観点から、ミクロの行動を知らなくてもマクロの行動は法則に従う、という観点が面白い。その考えから、人の行動には法則がある、として、データから統計的に証明している点がすごい。
    運の章はとても参考になり、いいチーム、職場を作るときに、今の状態をつながりという観点で、分析するのは面白い。そして、それを運と呼ぶ著書もすごい観点!

    とっても勉強になった一冊でした。

    ハピネスを高める努力をして、生産性を上げるぞ!生産性を上げる努力ではない!!

  • ◾️概要
    「共感や積極的な行動という行為自体が、人のハピネスの正体」ということが、人のビッグデータ解析で示された。

    ◾️所感
    企業研究の成果とは思えない。営利目的の研究の域を、完全に脱している。膨大なデータ解析の結果、幸福の正体が成果でなく、行為そのものにあったことに希望を感じた。

  • とても興味深い内容だった。
    第一章、第二章はウェアラブルセンサー端末から得られた大量のデータをもとに
    ・人間には1日の活動量の総数が決まっている
    ・時間の使い方は自分の意思で自由に決められない
    (科学的に制御する事が可能)
    ・人により「活動温度」が異なり、長時間行える活動が違う
    ・幸せは自分から積極的に行動を起こすことで得られる。
    など、今まで科学の領域と認識されていなかった内容を客観的に論じている。

    著者が日立製作所のフェローという立場である事を鑑みても、本書で書かれた内容が何かしら製品という形で私たちの手元に来る日も遠くないと感じる。

  • もっと早くに読んでいればよかった。
    繰返し精読することを薦めたい。

    ヒトの行動がどれだけ定量的に解析できるか、IoT・ビッグデータはどう活用されるか、そういったバズワードが流行るたびに具体的なアウトプットやサービスがイメージできなかったが、これを読んでだいぶスッキリした

  • 人は進化した歴史からの性質を多く持つことはイメージしていたが、人の行動が、熱力学と同様なボルツマン分布によるところであるとは思っていなかった。新たな視点を得られた。
    データとハピネスの考え方についても得るところが多かった。

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著者プロフィール

矢野 和男(やの・かずお)
株式会社日立製作所フェロー。2004年から先行してウエアラブル技術とビッグデータ解析で世界を牽引。論文被引用件数は2500件。特許出願350件。「ハーバードビジネスレビュー」誌に、「Business Microscope(日本語名:ビジネス顕微鏡)」が「歴史に残るウエアラブルデバイス」として紹介されるなど、世界的注目を集める。のべ100万日を超えるデータを使った企業業績向上の研究と心理学や人工知能からナノテクまでの専門性の広さと深さで知られる。2014月に上梓した著書『データの見えざる手』(単行本)が、BookVinegar社の2014年ビジネス書ベスト10に選ばれる。博士(工学)。IEEE Fellow。電子情報通信学会、応用物理学会、日本物理学会、人工知能学会会員。日立返仁会 副会長。東京工業大学大学院特定教授。文科省情報科学技術委員。1994年ISSCC 最優秀論文賞、2007年BME Erice Prize、2012年Social Informatics国際学会最優秀論文など国際的な賞を多数受賞。

「2018年 『文庫 ソーシャル物理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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