「うつ」は炎症で起きる

  • 草思社
3.50
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本棚登録 : 127
感想 : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794223944

作品紹介・あらすじ

うつ病になるのは「心」のせいだけじゃなかった。
精神医学の世界的権威が最新理論をわかりやすく解説。

数十年にわたり進展がほとんどなかったうつ病研究に、いま、革命が起きている。
もっぱら「心」と「脳」の病気と考えられていたうつ病が、実は身体の炎症に原因があるという証拠が次々と挙がっているのだ。
社会的ストレスから発症するうつ病も、ストレスによって炎症が起こることが原因と考えられる。
近い将来、精神科医はうつ病の診断に炎症を調べる血液検査が使うようになり、
検査結果からその患者に最適の抗炎症薬や免疫療法を選択して処方するようになるかもしれない。
既存の抗うつ薬で効果がなかった患者に、救いがもたらされる可能性は大きい。
数多くの人々を苦しめる病気の治療に見えてきた、革命的進展の兆しと将来への展望を、世界的権威がわかりやすく解説する。


●幼少期に炎症マーカーが高いと成人後うつになりやすい
●肝炎の免疫療法で人工的に炎症を起こすと3分の1の人がうつになる
●ストレスが高まると炎症が起きて、うつになりやすくなる
●肥満・歯周病・免疫疾患などによる炎症はうつのリスクを高める
●慢性炎症を治療すると併発していたうつ症状も消える例が多い

感想・レビュー・書評

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  • 【★★★☆☆(星3.5)】
    最近「炎症をおさえれば病気が治る」的な本を目にするが、この本が元ネタなのではないだろうか?
    詳しくて分かりやすく、かつ説得力もある。

    内容はタイトルのとおり。

    読んでいて好感が持てたのは、科学者らしく事実に基づいた内容展開を行っており、事実なのかそれとも推測なのかをしっかりと分けて書かれていること。

    精神疾患に限らす健康本には「●●をすれば必ず治る」「●●の原因は△△だった」など医学的に確定していないことを断定的に書いているものが多いような気がするが、この本は異なる。
    不確かなことは不確であること、分からないことはわからないこととしっかりと書いてある。

    いい本だと思うのだが、説明がくどくて読んでて疲れたので少し評価を落とした。

  • 「鬱」が炎症で起きるのかどうかは、本当のところは分かっていないということでしたが、炎症が関与(増悪したり、きっかけになったり)するのは間違いなさそう。
    C反応性タンパク(CRP)が上がっていて、統合失調症の人に炎症があるといわれても、医学の知識がないとCRPを改善すれば、すぐ薬になりそうじゃん、と誤解を与えそう。
    著者もわかっているし、医薬品の開発を始め、医学に通じている人もわかっているはずですが、ちょっとしたことですぐ上昇してしまうものなので、あくまでも本書の後半に述べている通り、バイオマーカーの事例として読むべきでしょう。
    ブロックバスターのビジネスモデルが崩壊してしまったのも、医薬品業界にいるとすごくうなづけますし、案外といか結構、面白かったなぁ~という感じでした。
    本書を読んでも、統合失調症の対処はわかりません。あくまでも医者が、進んでいない精神科の治療に対して、神経免疫学のアプローチが「鬱」が炎症で起きるのかどうかは、本当のところは分かっていないということでしたが、炎症が関与(増悪したり、きっかけになったり)するのは間違いなさそう。
    C反応性タンパク(CRP)が上がっていて、統合失調症の人に炎症があるといわれても、医学の知識がないとCRPを改善すれば、すぐ薬になりそうじゃん、と誤解を与えそう。
    著者もわかっているし、医薬品の開発を始め、医学に通じている人もわかっているはずですが、ちょっとしたことですぐ上昇してしまうものなので、あくまでも本書の後半に述べている通り、バイオマーカーの事例として読むべきでしょう。
    ブロックバスターのビジネスモデルが崩壊してしまったのも、医薬品業界にいるとすごくうなづけますし、案外といか結構、面白かったなぁ~という感じでした。
    本書を読んでも、統合失調症の対処はわかりません。あくまでも米国の医師が、進んでいない精神科の治療に対して、神経免疫学的アプローチが期待できる、という学術書でした。 

  • もし既存の抗炎症薬でうつ病の治療ができたら、なんと良いことだろう。

  • なんとなく、歯周病がうつの原因になるとかの話をきいていたが、そのメカニズムを解説した本。
    非常に良書。今の最新の医療コンセンサスを理解できる。
    翻訳もわかりやすい。
    最近は翻訳がわかりやすい本が多くて良い。

    つまり免疫系による炎症反応は、体でも脳でも変わらず、
    体で起きれば、リウマチ、歯周病などを発病し、脳で起きれば、うつやアルツハイマー病・双極性障害などの精神的な症状を発症する。

    つまり体と精神は分かれておらず、連動している。

  • 正確なタイトルは炎症でも「うつ」は起きる、といったところか。炎症で起きるタイプのうつがあるっていうのは新発見だが、治療方法が確立していないところがつらい。著者同様、この10年で研究が進むことを祈る。

  • ◆炎症が「うつ」を引き起こすという科学的証拠が積み上がっている◆ うつ病はもっぱら心や脳の問題だと考えられてきましたが、このところ、身体の炎症によりうつ病になるという証拠が、多くの研究により示されています。このことが長年にわたり停滞気味だったうつ病治療の進展に革命をもたらそうとしています。本書はその「革命」の現状や意義、これまでの経緯を、精神医学の権威がわかりやすくまとめたものです。
    本書で紹介されている研究結果は、驚かされるものばかりです。たとえば、9歳のときに血液中の炎症マーカーが高かった子は、18歳でうつ病になる確率がそうでない子の1.5倍という研究があります。高齢者でも、慢性炎症と言えるほど炎症マーカーが高かった60代女性の場合、その8年後にうつ病になる確率はそれ以外の人の3倍という結果が出ています。より短期間の影響としては、肝炎治療のためにインターフェロンを使って患者に人工的に激しい炎症を起こさせると、3分の1ほどの人がうつ状態に陥ることが知られています。また、うつ病患者は平均値より有意に炎症マーカーの値が高いことも示されています。さらには、心理的社会的ストレスによって炎症が起きることも最近の研究で明らかになっており、ストレスがうつ病を引き起こす際にも、炎症が重要な役割を演じていることが示唆されます。
    ◆長年停滞していたうつ病の治療法開発に、ようやく光が見えてきた◆
    精神科医である著者が本書の中で告白していますが、じつはうつ病は、驚くほどわかっていないことが多い病気です。うつ病には、血液検査などで測れるマーカーがないので、うつ病の診断は問診に頼りがちになっています。「セロトニン」と呼ばれる脳内伝達物質が不足することが原因だと考えられていますが、個々の患者のセロトニンを測る方法はありません。そのため、セロトニン不足を解消する「プロザック」などの薬が効いているかどうかも、患者に尋ねるしかありませんし、実際、効かないことも多いのです。このような状況もあり、新しい薬や治療法の開発は長年にわたり苦戦してきました。
    しかし、炎症がうつ病の原因となるなら、すでに内科で使われているような炎症マーカーが、うつ病の診断や、あるいは進行・回復を評価する方法に転用できる可能性があります。さらには、さまざまな病気に使われてきた既存の抗炎症薬や免疫療法が、うつ病治療に転用できるかもしれません。これらの治療法は、すでに安全性は確かめられているので、効果が実証されれば比較的早く実用化される可能性があります。著者は今後、5年から10年で、実用化されるのではないか、と論じています。
    うつ病はどの人にも関係のある病気で、人口の10%がうつ状態にあり、25%が生涯に1度はうつ病になると言われています。社会的にも大きな問題となっているこの病気の将来に見えてきた展望を、患者さんにも、そのご家族にも、本書で是非、知っていただきたいと思います。

  • 血液脳関門が絶対的なものでないことや、絶対視する見方の背後にあるデカルト的発想に対する指摘には目を見開かされるものがあった。本書の主張する仮説ついては、今後検証進んでいくのだろう。

  •  うつは身体の炎症が引き起こす!?

     センセーショナルに聞こえるかもしれないが、特段そんなことはなく、いわゆる心身相関について書かれた本。
     身体の炎症がうつ症状を引き起こすことがある。一部のうつの治療ではそこを念頭に置いた方がいいものもあるのではないかといった内容。
     心身二元論を見直そうと盛んに書いてある。

  • 精神と身体は別ものとされてきたが、歯や臓器の炎症がうつ症状を引き起こすこと、うつ症状の人は炎症反応物質の濃度が高いこと、などは既知の事実である。進化的には、感染症に対するうつ状態が患者や集団の生存に寄与してきた。

    個人に合わせた遺伝子ターゲット薬の時代、と言われますが、それはつまり、万人に効く薬が開発され尽くしたということでもあるのだと知りました。

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著者プロフィール

エドワード・ブルモア(Edward Bullmore)
ケンブリッジ大学の精神医学科長および臨床神経科学学科のウルフソン脳イメージングセンター長。ケンブリッジシャー&ピーターバラNHSファウンデーション・トラストの精神科の名誉専門医、および研究開発部部長でもある。文学士、医学士、博士、王立内科医協会員、王立精神医学会員、イギリス医学院会員。オックスフォード大学を経て、ロンドンの聖バーソロミュー病院で医学を学ぶ。香港大学で内科医として勤務した後、ロンドンのセントジョージ病院、王立ベスレム病院、モーズレイ病院で精神科医としての教育を受け、キングス・カレッジ・ロンドンの精神医学研究所で臨床科学者としての教育を受ける。1999年より、ケンブリッジ大学精神学科教授。2005年から、グラクソ・スミスクラインで非常勤勤務をしており、現在、うつ病のための新たな抗炎症薬の開発のために産学協同体を率いている。神経科学およびメンタルヘルス分野の世界的エキスパートである。

「2020年 『文庫 「うつ」は炎症で起きる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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