生き物の死にざま

著者 :
  • 草思社
3.96
  • (36)
  • (55)
  • (29)
  • (6)
  • (0)
本棚登録 : 1007
レビュー : 69
  • Amazon.co.jp ・本 (207ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794224064

作品紹介・あらすじ

2019年8月4日「東洋経済オンライン」記事「タコの最期は涙なくしては語れないほどに尊い」、そして8月25日「セミの最期は澄んだ空を見ることさえできない」で大反響!

すべては「命のバトン」をつなぐために──

子に身を捧げる、交尾で力尽きる、仲間の死に涙する……
限られた命を懸命に生きる姿が胸を打つエッセイ!

生きものたちは、晩年をどう生き、どのようにこの世を去るのだろう──老体に鞭打って花の蜜を集めるミツバチ、地面に仰向けになり空を見ることなく死んでいくセミ、成虫としては1時間しか生きられないカゲロウ……生きものたちの奮闘と哀切を描く珠玉の29話。生きものイラスト30点以上収載。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 以前読んでとても面白かった『世界史を動かした植物』の稲垣栄洋さんの最新刊。
    姿形は知っていても、どういう生き物か問われるとわからない身近な生物や、海の底や砂漠に住む馴染みのない生き物までを“死に様”という視点でエモーショナルに描き出す。
    文章が映像的でまるで映画を見ているようだった。
    「アカイエカ」はスパイ映画のようだし、「兵隊アブラムシ」はラノベ原作のSF映画のよう。
    “人の人生は一編の映画だ”とよく言われるが、その言葉はヒトの専売特許ではないな、と思った。
    主人公の“死”を扱っているので読む毎にセンチメンタルな気分になる。

  • 本書は、稲垣栄洋先生の生き物の死をテーマとしたエッセイ集。先生の本は植物、動物をテーマとした学術書を素人にも分かりやすく、しかも面白く描いてくれているので、本当に読んでいて知的好奇心が刺激され楽しいのだが、本書はエッセイということで、そのあたりの詳細な部分があまりなくてちょっと残念。でもいろいろな生物の生態の不思議な部分を垣間見せてくれ非常に興味深かった。

    本書は、セミからゾウまで29種類の生物について、それぞれの章で一つずつエッセイが書かれているが、特に興味深かったのが
      ○卵から産まれたばかりの自分の子供に自分の身体を食べさせるハサミムシの母
      ○成虫になると口もなくなり、生殖機能しかないカゲロウ
      ○メスの皮膚に吸着し、栄養をメスの皮膚から吸い、メスの身体に精液を注入するチョウチンアンコウのオス
      ○子供の時から兵隊として役目だけを行う兵隊アブラムシ
    など。これらの生物については別に専門書を読んで勉強してみたくなった。

    いずれにせよ、生物はなぜ「死」という命のあり方を選ぶようになったのだろうか。
    古代の生物には「死」というものは存在しなかったそうだ。
    古代生物は身体の分裂を繰り返して命を永らえさせていた。命は新たに生まれるのではなく、分裂することによって命のリレーを繰り返していたのだ。
    しかし、ある時、生物は命を永らえさせる方法として、新しい命を生み出し、古い命を殺す(死ぬ)という方法を選んだ。この方法の方がより種族を存続させることができると考えたからだ。そこには、どのような意味があったのだろうか。

    「死」は生物にとって最後の一大ビッグイベントだ。
    僕もいずれ必ず死ぬ。僕はもう40年以上それなりの人生を生きてきたので、いつお迎えがきても何の悔いもない(笑)。
    ただ、最後に「死の意味」というものをしっかりと認識しながら死へ旅路に出発したいものである。

  • この本もフォローしている方のレビューを読んで、興味が湧いて読んでみた。

    著者の稲垣さんは静岡大学大学院の農学研究科教授をされている。タイトルからすると固そうなイメージなのだが、エッセイというだけあって、超文系の私でも引き込まれるような柔らかな文章。
    身近な生き物から深海の聞いたこともないような生き物まで、著者の温かな愛情を感じずにはいられない。
    所々、小説や詩などからの引用もあり、感嘆。

    どんな生き物も生まれた瞬間、次世代を残すためのプログラミングにそって、その生を全うしようとする。
    そして、たいがいの生物が産卵とともに死を迎える。
    驚くほどシンプルな生命の潔さ。
    我々人間だけが、自然界のことわりから外れて存在している気がする。
    やがて、栄華を極めた恐竜が滅んだように、人間も自ら滅んでいくのではないだろうか…などと少々悲観的な気持ちになってしまった…著者は決して厳しい口調で書いているわけではないのに、人間の罪深さを噛みしてしまうのだ。

    以下気になった生き物たち。

    ベニクラゲ…不老不死のクラゲ。成体にやがて死が訪れたように見えるが、また小さく丸まって、幼体のプラヌラになる。ググってその可愛らしい姿に不老不死のイメージが合わずびっくり。

    ウミガメ…漁場に張り巡らされた定置網などに引っかかって溺死してしまう。網に引っかかって死んだウミガメの死骸をとらえた写真が賞を取ったとったと、先日新聞で読んだ。
    様々な困難を乗り越えて、産卵に至っても、海岸線が照明で照らされ明るくなり、また開発されて短くなってしまった昨今、ウミガメが戻れる砂浜は少ない。孵化したコガメたちも、自販機の灯りなどに惑わされ、海へなかなかたどり着けない。運良くたどり着けても、大抵は鳥や魚に食べられてしまう。

    イエティクラブ…雪男がどこかのクラブハウスで寛ぐ姿を思わず思い浮かべてしまうが、雪男のように毛深いハサミを持った深海に住むカニのこと。こちらも早速ググってそのマカ不思議な姿を確認。

    終盤は、人間と関わりが深いために、実験に使われたり、絶滅してしまった生き物について書かれていた。
    人間はどれだけ罪深い生き物なのだろうと嘆息。

    ゾウの墓場は根拠がないという話が最後にあり、昔子どもに読み聞かせた吉田遠志のアフリカの動物の絵本「おもいで」を思い出した。
    2020.2.10

  • セミは必ず上を向いて死ぬ。脚が硬直して縮まるからだ。ついでに、目の構造から空を見て死ぬことはできない。それでも、自らの役割を全うすることが昆虫としての幸せに繋がるとしたならば、そういう死に方は、別に惨めでもなんでもなく、多くは繁殖行動を終えた後のプログラミングなのだ。

    というようなことを冒頭6pは書いていて、延々と29の生き物についての死にざまを説明してくれている。「幸せ」という言葉は、私が付け足した。レビュアーの多くは彼らの行動を「切ない」という。でも、それは1つの解釈に過ぎない。「メスに食われながらも交尾をやめないオス」カマキリとか、「生涯一度きりの交接と衰弱しながら子を守りきるメスの」タコとか、その行動原理は唯一だ。如何に種として生き延びるか。それに尽きる。

    ところが、「もしかして5億年の間不老不死だったかもしれない」ベニクラゲの章が登場する。それでも、個体はウミガメに食べられてあっさりと死ぬという。プランクトンなどの単細胞生物はどうだろう。ずっと分裂を繰り返し、コピーして行き、38億年、生きものに「死」はなかったのかもしれないという。でも、それだとコピーミスによる劣化も起きる。新しくもなれない。一度壊して作り直す。10億年前、「死」が生まれた。これは「生物自身が作り出した偉大な発明」であるらしい。さらには「オスとメスという仕組みを作り出し、死というシステムを作り出し(環境変化に対応し、「進化」する仕組みを作った)」。単細胞生物のプランクトンは、寿命はないが、わずかな水質変化で死んでしまう。知らなかったが、身近な石灰岩は、有孔虫というプランクトンの殻が堆積して出来た岩らしい。

    面白い話が山のように語られるが、みんなさらっと終わるので深められない。もともと著者は、植物の専門家なのだ。専門に必要な「ちょっとした」知識が惜しげもなく語られているのかもしれない。

  • 子孫を残す為、命を懸けてとんでもない距離を泳ぎ故郷の川へ戻るサケ。
    普段は花の蜜や草の汁で生きている蚊。一度身籠ると命を懸けて吸血大作戦に挑む母蚊。
    三年も幼虫として過ごし、子孫を残すためだけにたった一日成虫として生きる、はかない命の代名詞カゲロウ。
    子孫を残すためにメスに補食されながらも交尾を続ける雄カマキリ。ジョロウグモの雄も然り。
    生涯でたった一度繁殖をし、献身的な子育てをする母タコ。
    老化しない奇妙な哺乳類、ハダカデバネズミはアリや蜂と同じように繁殖行為をする個体としない個体が役割分担する真社会性という性質を持つ。
    働き蜂はたった一月という短いその一生を懸けてスプーン一杯の蜜を集める。。
    それぞれの尊い命と種を繋ぐための残酷な現実が虫や動物目線で描かれた面白いエッセイ。
    それら様々な生き物の決死の一生に、我々人間も多大な影響を与えている。生きるため、食べるために。しかし死を前に無力なのは命あるもの全てに等しく同じなんだなー。

  • ブクログでの前評判、内表紙の「限られた命を懸命に生きる姿が胸を打つエッセイ」という一文、草思社という初めて聞く社名。全てがときめきを加速させる。名作の予感を持ちながら、ページをめくり始めた。

    文章が無駄なく、それでいてみずみずしさを感じる。まさしく自然や動物のような文章。

    その中に、筆者の愛と好奇心を感じる。それは決して大いなる流れに逆らうこと無く、佇むような印象を与える。

    知識としては知っている生き物の死に様。セミの死体を何度見たか分からない。けれど、そこに心を向けたのは初めてだ。

    本を通じて世界認識を再構築できた時、読書家でよかったと思う。それは紛れもなく読書の醍醐味の1つ。それをさらりとやってのける作者の力量に感服。

    生き物の死にざまという切り口はとても変化球なのだけど、読書家をあっさりと満足させてしまう完成度だった。自信を持って人のオススメできる一冊。

    (各章の詳しいメモや感想などは、長くなってしまうので省略。続きは書評ブログでどうぞ)
    https://www.everyday-book-reviews.com/entry/%E3%81%8D%E3%81%A3%E3%81%A8%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%8C%E3%81%A1%E3%81%8C%E3%81%A3%E3%81%A6%E8%A6%8B%E3%81%88%E3%82%8B_%E7%94%9F%E3%81%8D%E7%89%A9%E3%81%AE%E6%AD%BB%E3%81%AB%E3%81%96%E3%81%BE_%E7%A8%B2

  • めっちゃおもしろかった!
    身近にいる、生き物の生態について知った!
    この本を読まなきゃ、調べようとも思わなかっただろうし。

    嫌な害虫も、ちょっとやっつける前に考える。笑

  • 29種の生き物の死にざまに目を向けた話。
    繁殖行動を終えると死を迎えるようにプログラムされてるのであると簡潔な言葉で淡々と書きながら、そこにその生き物の生の物語を語ってくれる。稲垣栄洋さんの物語方が上手くて心に染みる。その死にざま(生きざまを語っているのだろう)は、哀しいけれど神秘的で潔く一生けんめいで愛しい。
    「死」は38億年に及ぶ生命の歴史の中で、生物自身が作り出した偉大な発明、だという。
    そうだったんだ!
    その偉大な発明、贈り物をありがたく受け取るために、生を全うしよう。他の生き物たちの真摯な生きざまを見倣って。

  • 春のお彼岸の時期である。
    祖父の墓前に子供たちを連れて行き、手を合わせた。
    両親も老い初めた。

    生き物は死ぬ。
    それは、絶対だ。
    今日か、明日か、はたまた10年後か、50年後か。
    できることなら、「やっと死んだ」と思われないで死にたいし、できれば、綺麗な姿で死にたい。

    それは私が「人間」だからそう思うのだろう。
    他の生物の死に方、生き方は壮絶で、あっけない。
    ハサミムシの母親は、行きながら自ら子供たちの餌となる。
    確かそういった生き物は他にもいたような。
    交尾を繰り返すアンテキヌス。
    かと思えば生涯一度きりしか交接しないタコ。

    多くの場合、メスは卵を守って死ぬ。
    子孫を確実に残す方法を多様な戦略の中から選び取って。
    ああ、メスは強くて悲しい。

    オスは?
    メスに喰われて死ぬ。
    メスに吸収されて死ぬ。
    選ばれなくて死ぬ。
    ああ、オスだって、悲しい。

    でも、それは本当に悲しいことなのか。
    増えすぎないように自然は淘汰する。
    力尽きるのは、仕方のないこと。
    生き物を人間に当てはめてしまってはいけない。
    そこにはそこの、ルールがある。

    大切なことは、人も、他の動物たちのルールを知って、不必要に彼らの生態を崩さないこと。
    それから、彼らのルールを人間に適用しない事(「男は外に出ていくもんじゃ、浮気は仕方ないとか、女は子を生んでナンボ、一人でも頑張るのが当たり前だ」といったようなもの)。

    死は怖い。
    でも、全力で生きていたら、いつか訪れるその時も穏やかになれ・・・・
    ないな、やっぱり、そんな綺麗事は言えないや。
    まだ、生きていたい。

  • 1番衝撃的な内容は、ハサミムシの子どもたちは自分の母親の体を食べて生きるということです。読んで思うことは生き物は種の保存の法則で進化するということです。人間もその法則から逃れられない。
    この本は「なぜ生きるのか」を考えることの参考になる。
    印象に残った文章
    ⒈ アンテキヌスは「次の世代のために生きる」という生きることのシンプルな意味を教えてくれている。
    ⒉ 生命は尊く、かくのごとく残酷なのである。
    ⒊ 「老いて死ぬ」ことは、生物が望んでいることなのだ。

全69件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

静岡大学大学院教授

「2020年 『はずれ者が進化をつくる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

稲垣栄洋の作品

生き物の死にざまを本棚に登録しているひと

ツイートする