人はどこまで合理的か 下

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794225900

作品紹介・あらすじ

「理性に従う」ことは、カッコ悪いのか?

理性こそが、進歩と繁栄を導く――。
理性的思考のための最強ツール群を、倫理学や経済学、統計学、
ゲーム理論など幅広い学問から抽出。その考え方を解説、伝授する。

この1000年あまりの間に、人類は本来持っている合理性を拡張すべく、
数多くの合理性のツールをつくり出してきた。
そのツールとは、「論理」「批判的思考」「確率」「統計」「意思決定理論」
「ゲーム理論」など幅広い学問分野から生まれた、
合理的に思考するための数多くの“道具”である。
こうしたツールは、危険な選択を修正し、疑わしい主張を値踏みし、
おかしな矛盾に気づき、人生の浮き沈みや悲劇について洞察を得るのを助けてくれる、
人生にとっても社会にとっても、非常に重要なものだ。
にもかかわらず、これらツールをすべてまとめて説明する本はこれまでどこにもなかった。

本書は人類の英知の結晶である、最強の合理性ツール群をまとめて解説・伝授する、初めての本である。
ハーバード大学の人気講義が教える、理性の働かせ方!

感想・レビュー・書評

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  • ●パスカルの賭け。神を信じるべき理由。神を信じているのに神が存在しないなら、祈りが無駄になる程度のことだが、神を信じていないのに神が存在するなら、君は永遠に神の怒りを買うことになる。
    ●限界効用逓減。
    ●プロスペクト理論。プラスになるときは確実性を、マイナスになるときはリスクを選択する。
    ●知らぬ間に命をかけている人は大勢いる。1分でも時間を節約しようとして、制限速度を無視した事は無いだろうか?道路を横断中にメールのチェックをした事は無いだろうか?
    ●ナッシュ均衡。2人とも相手が最適な戦略を選ぶと言う前提で、自分も最適な戦略を選んでいて、どちらかが一方的に戦略を変えても得にはならない均衡状態のこと。

  • 著者は、「信じなければいけないものとされるものは一切信じない」と断言する。人間の客観的な幸福を示す多くの指標は、時系列的にプロットすると満足のいく増加傾向を示すが、それは何かの力や弁証法や進化法則が人類をよいほうへ押し上げているからではない、と表明している。そして、以下の一文には単なる共感を超え、感動すら覚える。
    「「進歩」とは、この容赦のない宇宙のなかで、人類がかろうじて示すことのできた抵抗と、無理やりもぎ取った勝利の総体を指す略語であり、説明を要する一現象のことである。そしてその進歩を説明できるものが合理性である。人類の福祉を向上させるという目標を掲げ(栄光や贖罪といった疑わしいものを追い求めるのではなく)、自分たちの創意工夫を制度にして他の人々と共有できるようにしたとき、時折、人間は成功する。そしてその成功を維持し、失敗を防ぐことができたとき、時折、利得が蓄積される。この全体像を「進歩」と呼ぶ。」
    この進歩を説明するための合理性ツールについて、いくつか紹介してくれる。論理学、確率、ベイズ推論、ゲーム理論、相関と因果など。いくつかの領域は、本書を読むだけでは十分に理解が及ばないものも含まれる。しかし、このようなツールがあることを理解し、ある程度でも踏まえて生活することが個人的にも社会的にも肝要であることを改めて認識させられる。

  • 医学部分館2階集密 : 115.3/PIN/(2) : 3410170155
    https://opac.lib.kagawa-u.ac.jp/webopac/BB50385781

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/789761

  • 【#Rationality #人はどこまで合理的か】
    とても難しい本でした。
    『合理的』と言う言葉の定義を再認識させられる内容です。
    .
    僕は『自分は合理的な人間』だと思ってましたが、この本を読んだ後ではそんなことは言えなくなりました。
    .
    この本にこんな言葉があります。
    『合理性は公平無私のものである。合理性はどこでも、誰にとっても同じであり、それ自体の運動方向と運動量を持つ。したがって、人間にとっては厄介事にも障害にもなり得るし、侮辱にさえなり得る。』
    .
    つまり、個人的な思想や考えは一切加味せず、データや確率を用いて数学的に解析し、傾向や法則を見つけ出すこと。
    それが『合理的』と言うことみたいです。
    たぶん。笑
    #難しいから半分くらいしか理解出来てない
    .
    そもそも、この本を読みたくなったのは疑問があったからです。
    帯にも書いてますが、
    「どうして合理的な発言をしている人が、非合理的な行動したりするんだろう?」
    とても不思議でメカニズムを知りたかったのです。
    .
    この疑問に対しての答えは見事に解決。
    てか、僕がふんわり思ってた事が力強く、明確に書かれていたので納得したって感じです。
    (知りたい方は下巻の10章を読むだけでOKです)
    .
    とにかく、読むのに苦戦したので、しばらく難しい本に手を出すのはやめときます。笑
    #カフェ #小松島 #自家焙煎 #コーヒー #ヒガシネコーヒー

  • 陰謀論が流行る理由は、この本のハイライトだと思うが、さ程説得力がある議論が展開されているわけでは無い。
    人間の認知には、日常生活用の「現実マインドセット」と、自分とは遠いものに対する「神話マインドセット」があり、現実マインドセットが扱う事柄では、真実かどうかの判断が行われるが、神話マインドセットに属する事柄(遠い過去、遠く離れた場所、予見できない未来など)については、真偽は問題にされず、楽しみや刺激となる。現代は、元々神話マインドセットに属する物まで、現実マインドセットに組み込もうとして(真偽、黒白をつけようとして)、または、ある人にとって神話マインドセットの事柄が現実生活に関わってくることによって起こるというのは、ちょっと面白い。

  • 上巻に続きとてもわかりやすく内容も素晴らしい。講義を聞いているかのような文章なのでするすると読める。統計の本は数冊読んだが、重回帰分析をこれほどにわかりやすく解説している本はなかったように思う。
    環境問題が囚人のジレンマだという説明はとてもすっきり理解できる。多くの人に読まれてほしい。

  • 人がいかに非合理的な認識になりがちか、そしてそれがどういったことから派生するかが詳細に解説されいます。
    最終章の以下の2点は肝に銘じたいと思います。
    ・合理性は知性だけでなく、思慮深さ、開かれた心、そして認知ツールを使いこなす能力も必要とする
    ・道徳の進歩を導く合理性の力は、物質的進歩と人生の賢い選択を導く合理性の力と一致している

  • 下巻も引き続き合理可能性分析である。10章から、ようやく本題。本書では最近の不合理なニュースを参照しつつ、人間の不合理な行動の原理を分析し、いかにすれば合理的に生きていけるかと、その重要性を説く。無神論者で舌鋒鋭い人はいるが、ピンカーのその口調はちょっと違って、嫌みが少なく説得的な感じがする。
    しかしながら本書の弱い部分は、「不合理を克服する」についての具体的あるいは、画期的な方法が示されていないことである。最終章での結論は、お馴染みのジョンロックやトマスジェファーソンの言葉と、それに追従する女性解放運動家や黒人解放運動家の言葉の引用と共感で終わっている。ここに著者独自の具体的・画期的な克服方法が勇気を持って提案されていれば、良書になり得たかもしれない。しかし、いかに現代を代表する知の権威の一人とて、その方法を思い付かなかったのだろう。

    世の中の様々な統計データや情報、特に人の特性の相関と因果を扱うものが真かどうかは、さまざまな統計計算式を念頭において判断するべき。しかし実際に計算してみると、その不可能性が見えてくる。最近行われた大規模な研究では、膨大なデータとAIなどあらゆる最新技術を使って、人の社会的達成の可能性率を測った。しかしその結果は「最良の予測もさほど正確とはいえないものであった」と結論されている。いかに人の行動原理を予測するのが難しいことか。170

    空の高いところに私たちには見えない人がいて、その人が宇宙を創造したんだというと、ほとんどの人がそれを信じる。
    ところがペンキはまだ乾いていないよというと、みんな触って確かめずにはいられない。@ジョージカーリン174

    認知心理学者の研究はQアノンの出現を予測出来なかった180

    今日の非合理社会の原因は「ソーシャルメディアの登場だ」というのは、ソーシャルメディアをスケープゴートにしているに過ぎない。
    人類は歴史上、いつも非合理なことを語り、信じてきた。
    聖書の語る奇蹟の数々も、結局のところ、超常現象のフェイクニュースと変わらない。181

    陰謀論を信じている人がなぜ減らないのか?それは「信じる」が何を意味するかによるから。
    ピザゲート陰謀論では、本気で銃を持って店に突っ込んだ一人を除き、論を信じたとする多くの人がGoogleにピザ屋の悪評価を書き込むぐらいだった。彼らは「現実として信じる」のではなく、言わば宗教のように「形而上学的に信じる」のだ。それを彼らは、自分達の生活の範囲外の計り知れない遠い世界の真実として信じる、これと現実生活の「真」は別と考えている。同じように宗教神話や国家神話もこのような形態をしている。つまりこの神話は、映画やテレビドラマの脚本と同様だ。したがって、この神話の真偽を検証してはっきり決着を着けようとするのは無意味199

    人が陰謀論に陥るのは人類史において、同族に裏切られて殺される危険への警戒が本能に刻まれているから。他人を常に疑うことが、生存競争で有利に働いた。212

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著者プロフィール

スティーブン・ピンカー(Steven Pinker)
ハーバード大学心理学教授。スタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学でも教鞭をとっている。認知科学者、実験心理学者として視覚認知、心理言語学、人間関係について研究している。進化心理学の第一人者。主著に『言語を生みだす本能』、『心の仕組み』、『人間の本性を考える』、『思考する言語』(以上NHKブックス)、『暴力の人類史』(青土社)、『人はどこまで合理的か』(草思社)などがある。その研究と教育の業績、ならびに著書により、数々の受賞歴がある。米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」、フォーリンポリシー誌の「知識人トップ100人」、ヒューマニスト・オブ・ザ・イヤーにも選ばれた。米国科学アカデミー会員。

「2023年 『文庫 21世紀の啓蒙 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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