生と死を分ける翻訳 聖書から機械翻訳まで

  • 草思社
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794226976

作品紹介・あらすじ

その翻訳、機械まかせでいいですか?
AI翻訳時代におくる、
翻訳・通訳の本質を学べるいまこそ読むべき一冊!

いまでは機械翻訳が発達し翻訳が身近で手軽になりましたが、歴史を振り返って見ると、
聖書の布教、第二次世界大戦、冷戦、そして『千夜一夜物語』やボルヘスなどの作品翻訳…と、
翻訳・通訳者は数多くの命にかかわるような歴史の重大局面にかかわってきました。
表舞台には出てこないそれらの者たちによる時に自身の命をかけた、涙ぐましいほどの努力、
創意工夫、勇気によって、これまでの平和や文化の発展は支えられてきたのです。
本書から先人の知恵を学び、翻訳の本質を理解しておけば、翻訳に人間が介在する重要性が理解され、
未来の機械翻訳との付き合い方もおのずと分かります。
現役の翻訳者ならではの視点でスリリングに語られる、今こそ読みたい翻訳と通訳の歴史と未来の物語!

■本書のトピック
・フルシチョフが執拗にくり返す「クズマの母親」とは誰なのか?
・雪の降らない土地で、宣教師が聖書の『雪のように白く』を『菌のように白く』と言い換えてもいいのか?
・ヒトラーやムッソリーニなどの独裁者の通訳は一般人のそれと違うものなのか?
・通訳のしかるべきサービス化のための制度が必要なのでは?

「翻訳できない作品は存在しない。存在するのはただ、まだ翻訳者が見つかっていない作品だけだ」
「「世界が深刻な危機に瀕した状況においては、翻訳(通訳)という行為そのものが
激しい文化衝突として歴史の表舞台に立ち現われる。そこでは、訳語の選択一つで歴史の天秤が傾いてしまう」
「翻訳の可能性の広がりを最も顕著に示す例は、意味の多義性から生じる。それは、呪いであると同時に祝福でもある」
(本文より)

感想・レビュー・書評

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  • 冷戦期のロシア語・英語の通訳、エセーの英訳、人質をとった山賊の仲介としての通訳などさまざまな場面における通訳・翻訳のもった役割と結果、そしてかかえた問題などが紹介されている。
    なかなか翻訳の現場の話を聞く機会はなく新鮮で非常に面白く読めた。

    紹介されているすべてのケースでその後生き残れるかがわかれるわけではないが、冷戦期や山賊のケースなどではまさに生死に直結すら問題で、通訳者の判断が少なからずが影響して命を失った人もいるよう。
    さらに問題なのは通訳は正しくおこなっていても内容の問題で交渉に失敗した場合も通訳者が批判を受ける事が多いということ。

    こうしてみると通訳の影響力は大きくかなり重大な役割ということがわかるが、本書でも指摘されている通り通訳者の評価は不当に低くなっていて、最近はそれが進んでしまっている。

    AIの発達が進んだとはいえコスト削減として通訳者への報酬を減らし通訳の質を落としては本末転倒な結果が見えるし、社会全体で通訳・翻訳の重要性を共通して認識していく必要がある。

    そして通訳者・翻訳者の地位が向上し、通訳・翻訳の質が落ちることによる分化や社会の低迷を回避できることを願う。

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