古本屋の誕生 東京古書店史

  • 草思社 (2025年2月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (288ページ) / ISBN・EAN: 9784794227669

作品紹介・あらすじ

「知と文化の集積地」はいかにして作られてきたか?

江戸時代の「書店」の誕生から、明治以降の東京古書界の変遷まで、
本の街の歴史を詳細にたどる。

<内容より>
●本のセドリの誕生と江戸時代の「本屋仲間」
●古書の価値創造の先駆者、江戸末期の達摩屋五一(だるまやごいち)
●幕府崩壊で大口顧客を失った東京古書界が生き残れた理由
●明治前半まで芝神明町・日蔭町が東京随一の古書街だった背景
●有斐閣、三省堂、冨山房…大古書街・神田神保町を生んだ第一波
●大正・昭和期の代表的古書店・一誠堂の「店員教育」
●戦後の古書界の復興と業界の未来

感想・レビュー・書評

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  • 江戸時代に誕生した古本屋だが、新刊書と古本は区別なく
    販売されていた。それが明治時代になり法律等の施行により、
    分業化され、様々な変化の道を歩むことになる。
    現代に至る古本屋の歴史を、主に神田神保町古本屋街に
    焦点を当てて語ってゆく。
    序章 本屋はなぜ新刊本屋と古本屋に分かれたか
    第一章 セドリと古本屋の誕生 江戸時代までの書店ビジネス
    第二章 大デフレと本屋仲間の解体 明治ゼロ年代
    第三章 一大古書街・芝神明と漢籍ブーム 明治十年代〔一〕
    第四章 東京大学誕生と神保町の台頭 明治十年代〔二〕
    第五章 東海道線全通と神保町第二の波 明治二十年代
    第六章 靖国通り開通と神保町第三の波
            明治三十年代頃から大正二年の大火まで
    第七章 古書組合の誕生と関東大震災 明治末から大正末まで
    第八章 古本屋の学校・一誠堂の躍動 昭和ゼロ年代
    第九章 戦争をくぐり抜けて 昭和十年代
    第十章 戦後の復興と発展 昭和二十年から昭和後期まで
    終章 古本屋の現在と未来
    ・あとがき

    平安時代の経師が古書ブローカー、つまりセドリの先駆。
    安土桃山時代末期から江戸時代初期に出版する本屋が出現、
    大坂、そして江戸にも波及してゆく。
    現代とは異なる写本と印刷の種類。出版・取次・新刊販売・
    古本販売の四業態併存体制が江戸時代には続いていた。
    だが本屋仲間の販売システムや市とセリに入札、セドリなどは
    当時、既に確立されていた。
    明治時代となり、本屋仲間の解体と改正出版条例での変化。
    更に時代の変遷が古本屋に大きな試練と変化を与えてゆく。
    寺社が多い芝神明町・日陰町での漢籍を扱う古書店街。
    神田・一橋地区への東大の誕生とその移転により本郷にも
    古書店街が。それら以上に発展を遂げたのが、
    多くの教育機関が誕生した神田神保町の古書店街だった。
    靖国通りの開通と区画整理等により古書店が神田神保町に集結。
    木版印刷から活版印刷へ。和本から洋装本へ。和紙から洋紙へ。
    書物の変化に伴い、洋書や洋装本など扱う本も変わる。
    大正2年の大火や関東大震災、戦時中の苦心はあれど、
    東海道線の全通により関西や地方にセドリや取引に
    赴いたり、大出版社や大取次が誕生したりと、生き残る。
    新しい組合発足も江戸時代から続く下地があってこそ。
    そして、時代の変化の中の古書バブルと衰退の繰り返し、
    流行はジェットコースターの如し。かつては藩や富裕層の
    蔵書売り立てで豊富な供給があったし、全集・百科事典の
    ブーム、貸本屋の衰退からの漫画本。またオタクの登場も。
    反面、バブル崩壊、人口の減少と教育関係の納品縮小、
    デジタル化の問題が影を差す。
    それでも神田神保町の古書店街は残ると思います。
    かつての“古本屋の学校”で学んだ店主たちもいるし、
    それぞれの店が個性を表し、ジャンルの専門店も増え、
    本好きが店を巡る愉しさはこの上ない喜びになるのだから。

  • 【インタビュー】鹿島 茂(フランス文学者・73歳)「古書コレクターは世界中にライバルがいる。勝つには長生きするほかない」 | サライ.jp|小学館の雑誌『サライ』公式サイト(2023/6/14)
    https://serai.jp/hobby/1118721

    注目のブックビジネス【前編】鹿島茂が手がける「PASSAGE」&「ALL REVIEWS」の革新性|Real Sound|リアルサウンド ブック(2022.11.02)
    https://realsound.jp/book/2022/11/post-1168365.html

    「鹿島茂の息子として文化のために何ができるか考えたい」……書評サイトALL REVIEWSからシェア型書店へ、次男の思い : 読売新聞(2024/10/04)
    https://www.yomiuri.co.jp/culture/book/articles/20241002-OYT1T50112/

    鹿島 茂の著作一覧 | 書評家 | ALL REVIEWS
    https://allreviews.jp/reviewer/8/books

    古本屋の誕生 鹿島 茂(著/文) - 草思社 | 版元ドットコム
    https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784794227669

  • ▼鹿島茂さんの、つまりは日本の書店の簡単な歴史、神田神保町の歴史です。気負いなく手に取り気軽に楽しく読みました。

    ▼江戸時代からの新刊本/古本の歴史。日本の古書を大いに買って帰った明治以降の外国人たち。戦災からの復興。せどりの名人たち。本好きとしては「へ~ふむふむ」と堪能しました。江戸時代から「版木」に価値がついて取引がなされていた、というあたり、印象に残っています。

    ▼鹿島さんの本に「神田神保町書肆街考」というのがあって。興味深いのですがあまりにも分厚くてちょっとしんどいなあ、と。そうしたら、この「古本屋の誕生」が手ごろな分厚さで、まあ似てるんだろうなあと手に取りました。読了してみたら、最後の方に、鹿島さん本人が「神田神保町書肆街考、を、要は手短にした本なんです」と書いてらっしゃった。需要があったんですね(笑)。

  • 1. 古本屋の歴史と発展
    - 古本屋の起源: 古本屋は江戸時代に起源を持ち、古典籍の流通が始まった。
    - 市場の形成: 17世紀には古本を取り扱う市場が設けられ、徐々に整備されていった。
    - 出版業界の変化: 明治時代に入ると、出版業界は新しい商業形態を取り入れ、古本市場も影響を受けた。

    2. 古本の価値と流通
    - 古本の重要性: 古本は多品種少量生産の特性を持ち、需要が高い。
    - 流通のメカニズム: 古本は市場での需給に応じて価格が変動し、特定の地域や時代により売れる本が異なる。
    - 古本と新刊の関係: 古本の供給が限られているため、新刊の発行と復刊が重要となる。

    3. 古本屋の商業戦略
    - 相合株の仕組み: 出版リスクを分散させるため、複数の本屋が共同で出版する「相合株」が発生。
    - 市場の取引形態: 本屋間の相互取引が発展し、証券化された「板株」が登場する。
    - 商業形態の進化: 古本屋は新しい出版システムを取り入れ、販売戦略を進化させていった。

    4. 文化的存在としての古本屋
    - 教育の場としての役割: 反町茂雄が一誠堂で「古本屋の学校」を設立し、効率的な教育システムを導入。
    - 文化的貢献: 古本屋は文化的なアーカイブとして、歴史的資料や文学作品を保存・提供する役割を果たす。

    5. 震災後の古本業界の変化
    - 関東大震災の影響: 震災後、古本の需要が急増し、古本屋の社会的評価が高まる。
    - 復興と成長: 古本や古典籍の需要が高まり、新たな市場が形成される。

    6. 現代における古本屋の位置づけ
    - デジタル時代の挑戦: デジタル化が進む中で、古本屋はその存在意義を見直す必要がある。
    - 新たな顧客層の開拓: 若い世代をターゲットにした新しい販売戦略やマーケティング手法が求められている。

    7. まとめ
    - 本書では、古本屋の歴史、商業戦略、文化的役割、震災後の変化、現代における課題と展望が強調されており、古本屋が日本の文化と歴史にどのように寄与してきたかについて深く掘り下げている。

  • 古本屋の歴史は、日本の出版の歴史に通じる。
    江戸時代の「本屋」の話から、明治大正期、戦前戦後の古本屋の成り立ちや特徴、神田神保町古書店街の遍歴をまとめる。
    定点観測のような細かさが面白くもあり、他の地域の話(関係性)も知りたいとも思う。

  • 【本学OPACへのリンク☟】

    https://opac123.tsuda.ac.jp/opac/volume/731345

  • 古本屋の歴史が詳しく記されている。江戸から明治にかけての古本屋または書店、出版社の栄枯盛衰が語られている。明治以降はなにか社史のような流れになっているのが残念。もっと時代との関係や地方との関係にも広がっていればもっと面白くなったのに。

  • 「神田神保町を世界遺産に!」という著者の主張を聞いたことがあるような気がしていました。てっきり本のタイトルだと思っていましたが、そんな著作はなく雑誌の記事のタイトルか、あるいは大著「神田神保町書肆街」の宣伝のコピーか、はてまた自分の記憶捏造か…しかしこの本を読んで本の街、神田神保町の特異な成り立ちを知り、本当に世界遺産にしなければならないのでは?と思ったりしました。毎年秋の神田古本まつりに溢れる人を見るとこの街の愛され方を感じる一方で、未読ですが「町の本屋はいかにしてつぶれてきたか」という最近の新書の題名にあるように普段の生活圏から本屋さんが消えていくのも目の当たりにしています。先ず本書を読んでの最大の発見はそもそも本屋は古本販売、出版、新刊販売、取次という四業態を意味した、ということ。今はそれぞれが違うビジネスになっていますが「古本から復刻本、復刊本へ、そこからオリジナルな新刊本へというのが進化の方向性なのである。」(P49)!なるほど!現在放送中のNHK大河ドラマ「べらぼう」も出版社の話なのか本屋の話かわからないところがありましたが、これですっきりです。そしてなぜ蔦屋重三郎が日本橋進出を拒まれるのかも納得です。(本日これからの放送がその結末ですね。)「本屋さん」とは商品を置いてあるスペースを意味するのではなく本の価値を正しく値付けできる人のことだとするとスペースとしての街の本屋さんの価値は下がり、価値のプロデューサーとしての本屋さん、というビジネスは知の集積によって反映する、ってことなのかもしれません。この本によって提示された大きな歴史から考えると本書の最終章の「古本屋の現在と未来」は古本販売だけでなく、出版、新刊販売、取次にとっても見取り図になるのでは、と思いました。

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著者プロフィール

1949(昭和24)年、横浜に生まれる。東京大学大学院人文科学研究科博士課程修了。2008年より明治大学国際日本学部教授。20年、退任。専門は、19世紀フランスの社会生活と文学。1991年『馬車が買いたい!』でサントリー学芸賞、96年『子供より古書が大事と思いたい』で講談社エッセイ賞、99年『愛書狂』でゲスナー賞、2000年『職業別パリ風俗』で読売文学賞、04年『成功する読書日記』で毎日書評賞を受賞。膨大な古書コレクションを有し、東京都港区に書斎スタジオ「NOEMA images STUDIO」を開設。書評アーカイブWEBサイト「All REVIEWS」を主宰。22年、神保町に共同書店「PASSAGE」を開店した。

「2022年 『神田神保町書肆街考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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