マネジメント・開発・NGO―「学習する組織」BRACの貧困撲滅戦略 (開発と文化を問う)

制作 : Catherine H. Lovell  久木田 由貴子  久木田 純 
  • 新評論 (2001年10月1日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794805379

マネジメント・開発・NGO―「学習する組織」BRACの貧困撲滅戦略 (開発と文化を問う)の感想・レビュー・書評

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  • バングラディッシュの農村振興の草の根活動が丹念に記述されています。貧困撲滅に向けた開発のあり方について深く考えさせられるとともに、フィールドワークを志す学生にとっても非常に参考となる一冊です。

  • バングラデシュで貧困と闘うために総合開発アプローチを取る組織、BRAC
    その開発分野は教育から保健、法律・人権、経済の下位セクターに対する介入など、本当に幅広い。
    そしてなんといってもマイクロファイナンス(MF:小口融資)がメインのプログラム。

    貧困とはあらゆるdimensionにおける欠乏の総体である。
    たとえば、教育の欠如は文盲を意味し、それは書類に書かれているはずの不利な契約を結ばされる可能性を上昇させ、また就労機会を奪う可能性も孕む。お金がなければ医療施設に足を運ぶ機会も著しく減少するであろうし、そういった不健康な状態が彼らの就労を阻害することもあるだろう。
    そしてそんな彼らが就ける仕事といえば、小規模な、生産性の低いビジネスであり、低収入が彼らを教育から遠ざけ(子どもを学校にやる金がない、またはやっても意味がないと思っている)、次世代に貧困が連綿と継承されていく。

    どの分野に対する投資(援助)が最も対貧困削減に効果的なのか?
    答えはすべての分野であり、まさにBRACの援助アプローチなのである。

    もちろんBRACも最初から手広く開発援助プログラムを行っていたわけではない。
    パイロット村での試行錯誤を繰り返し、発展させてきた独自のプログラムをバングラデシュ全域に拡大してきたという、草の根アプローチの典型例がBRACなのだ。

    彼らのプログラムはVO(Village Organization:村に入っていき、女性たちを組織。だいたい50人前後から成る)を通して行われる。
    ここで少しバングラデシュの社会風土を説明しておかなければならない。
    バングラデシュ(イスラーム社会)において、女性は男性によって厳しくコントロールされている。買い物に行くにしても、親族の誰かしらが付いてこなければ、近くのバザールにさえ行けない。そうやって女性の移動性から家計での発言権まで、規制されている状態なのだ。(都市の富裕層は比較的自由。知り合いの家の女性らはかなり自由だし、ブルカ(ヴェールで顔・頭を覆う風習)など何のそのという感じだった)
    女性のこれらの劣位性に加えて、バングラデシュ農村では貧困層の圧倒的な立場の弱さというものがある。
    そういったわけで、VOでの活動はまず、女性メンバーたちの「意識化」から始まる。これは彼女らを取り巻く社会問題、女性の問題から子育て、健康の問題などを話し合い、分析することを促す。

    そしてそれらの準備期間を経て、彼らはBRACの提供するさまざまなプログラムを選び取ってゆく。

    MFは貧困削減に本当に効果的なのだろうか?という批判がよくなされる。
    ある研究者は、グラミーン銀行などのMFに特化したアプローチでは効果はあまり出ず、それを補完するような健康や教育などのプログラムを組み合わせて初めて、効果があると語る。

    私はBRACのシンパでもないし、「MF=貧困削減ツール」という図式が絶対的なものとして受け止められ、それがMF機関を増殖させていると考えている。その弊害は、MFとLoanshark (高利貸)との距離をまた縮めたとこにあり(グラミーン銀行は元々、高利貸に頼らざるを得ない結果、女性たちが十分な利益を上げることができないという現実を打破するために創設された)、それがインドなどにおけるMF利用者の自殺に繋がっていると思われる。
    いうなれば、MFという衣を纏った無慈悲な悪徳業者を増殖させ、無法地帯と化しているのではないだろうか。

    MFの増殖が意味するものは、利用者のMFへの慣れに繋がるとも考えられる。いまではひとつの村において2,3のMF機関が活動していることも普通の光景となりつつあり、あるMFI、Aに返済するために、他のMFI、Bにお金を借り、、、という自転車操業のようなものになりはしないか、というより、そのような事例も見受けられ、なりつつある。そうなると、MFIから簡単にお金が借りられるという状況が、利用者の所得創出活動の意欲を削ぎはしないだろうかという危惧が私のなかにある。

    話が逸れてしまった。

    一見、BRACの総合開発アプローチの結果、女性は自身のエンパワーメントを達成しているかのように見えるが、いくつかの論文では、その限界性も示唆されている。

    BRACのメンバーは各種のプログラムを活用しつつ、MFプログラムによって、所得が向上した。そしてその経済面でのエンパワーメントが、心理的エンパワーメントに繋がり、家計への発言権を得る者や、娘の結婚に対して異議を唱えることのできた者がいるのも事実である。
    そうやって螺旋階段を登るようにして、エンパワーメントを達成してゆき、最終的には彼女らを取り巻く環境を変える「social transformation」を成し遂げることが期待されている。

    しかし、女性自身がエンパワーメントを達成しても、その周りの環境が整備されていないため、その能力を十分に生かせていない。
    つまり、彼女を取り巻く夫や義父、農村における宗教指導者など、男性側に女性らの変化を受け入れるだけの準備ができていないため、女性が内的変化を経験し、表出させたとしても、それを受け入れるだけの社会環境が整っていないため、黙殺、抑圧されてしまうのである。

    よってこれからの段階としては、BRACを含め、NGOsには女性と男性の溝を埋めるような調整者としての役割がこれまでより求められるのではないだろうか。
    その役割を担うと思われる「Popular Theater」も今はまだ発展プロセスにあるので、まだまだ先は長いのかもしれない。

    BRACの手法は現地社会からプログラムの中核を担うスタッフを有償・無償で採用するので、凡庸性が高く、他の国にも適用し易いという利点がある。
    南南協力の先駆けになってくれればと強く思う次第でありますです。
    長かったー。

  • シリーズ7冊目。NGOのマネジメント強化の重要性を、バングラデシュのNGO「BRAC」の実践を例に解説しています。BRACの開発プログラム、マネジメント、未来に項目分けされ、それぞれ緻密に分析が成されています。

    学習する組織とは、「創造したいと思うものを創造する能力」を常に強化し、コミュニティに何かをもたらしたいと希望する人々の集まりである。学習する組織の特徴は次の5つに要約できる。共通のビジョンの確立、自己学習、固定概念の払拭、チーム学習、システム思考の推進(p.247)。

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マネジメント・開発・NGO―「学習する組織」BRACの貧困撲滅戦略 (開発と文化を問う)はこんな本です

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