デンマークのにぎやかな公共図書館-平等・共有・セルフヘルプを実現する場所

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  • 新評論
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794808493

作品紹介・あらすじ

平等・共有・セルフヘルプの社会理念に支えられた
北欧の豊かな“公共図書館文化”を余すところなく紹介!

 充実した福祉で知られるデンマークが、図書館サービスにおいても世界のトップレベルにあるということをご存知だろうか? 本書では、著者が実際に訪ね歩いたデンマークの個性的な図書館の事例を紹介しつつ、北欧公共図書館の豊かな世界にみなさんをご案内するものである。
 北欧各国は一貫して、格差のない平等な社会の確立を社会政策の中心課題として掲げてきた。その中にあって公共図書館は、情報への平等なアクセスを確保することによって、情報にかかわるギャップを埋める機関として社会的に認知され、生涯学習の拠点として住民から高い信頼を得ている。北欧では幼いころから保護者に連れられて公共図書館に行き、学齢期になると自ら学校図書館と親しむようになり、それから生涯にわたって図書館を利用するのだ。
 本書は様々な角度からそうした北欧公共図書館の魅力を浮き彫りにするとともに、公共図書館の成熟に平等・共有・セルフヘルプといった北欧社会の理念が密接に結びついていることを明らかにする。必要な資料を利用者一人ひとりに手渡していくこと―この当たり前とも言える図書館の原点を、北欧の公共図書館は淡々と守り続けてきた。なぜなら、人は誰しも一冊の本を通じて自分と社会を変えていく力があるから。厳しい吹雪の中を「ブックモービル」を走らせて本を届けたり、フィヨルドの奥地まで「図書館船」を運航するといったサービスが続けられてきたのは、そうした可能性を社会全体で示していくためなのである。
 本書には、誰もが一度は行ったことがある図書館の魅力を〈再発見〉するためのヒントがギュッと詰まっている。まずはページをめくりながら、北欧の図書館の世界を写真とともにゆっくり楽しんでください。
(著者 吉田 右子)

感想・レビュー・書評

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  • はっきり言って、最期のまとめ以外には、参考にし難い主観的な描写が多く、突っ込んだ質問・応答もされていないように感じてしまう。

    それはともかく、紀行として、体験談としては面白いし、気になるキーワードや紹介も多かった。
    本当に「入り口」としての1冊、だと思います。
    休みの日にのんびり読むのが良い感じ。

  • 読みやすいです。
    デンマークの図書館はすばらしいなと感じさせられます。ただ、それは図書館の力だけではなく、国・住民などみんなで作り上げられているからだと思います。
    日本の図書館も時代に合わせ進化し、誰もが訪れたくなるようになって欲しいです。

  • 北欧といったらやっぱりインテリア、ということでまずは外観に興味を持って読みはじめたが、内装や建築以上に、サービスが良い。
    隣の芝生は…ではなく、日本とは良い意味でかけ離れてる。
    図書館は空気だというほどの、利用者と図書館の密着率。
    やっぱり小さい頃にどれだけ図書館に触れているか、が大きいんだろうなぁ。
    以前映画にみる図書館のイメージという授業で色々考えさせられて、わたしは幼少期からの図書館利用が影響しているんではないかと考えたわけだが、
    ここの国の人たちは司書にどんなイメージを持っているんだろうか。
    図書館・司書へのイメージの寒暖をサーモグラフィーのように色で表して世界地図を作ったら面白いと思う。各国の図書館事情と照らし合わせればきっと面白い。元になるデータをとるのが大変だろうけれど、誰か作ってくれないかな。

    なんでも分けあうという、北欧の国民性も素敵だった。
    良い発見があって、読んで良かったと思う。

  • おしゃれな北欧。図書館の充実感があります。デンマークは本代が高いので図書館の利用者が多い。サポート力がすごい。分からない事は人に聞く。司書の存在が大きい。移民が多いので、マイノリティーの言葉の問題などにも取り組んでいたり、宿題サポートなどがある。
    しゃべってもよい部屋と静寂の部屋があります。デンマークの人は本が大好き。電車の中でも読者が多い。
    日本にも欲しい図書館です。

  • 2640


    本書では、デンマークの公共図書館をさまざまな角度から見ていくことによって、世界でもっともすぐれた図書館制度をもつこの国の公共図書館の秘密を探っていくことにしたい。それでは、早速、次章からデンマークの公共図書館を支える制度について見ていこう。

    デンマークの公共図書館の年間貸出冊数は、住民一人当たりに換算すると一三・五冊になる。年間貸出数が二〇冊に達するフィンランドには及ばないまでも、世界的に見るとかなり高い数値と言える。

    デンマークで親しくなった司書の一人は大の旅行好きで、長期休暇のたびに世界各国に出かけているらしい。つい最近は、「グリーンランドでトレッキングを楽しんできた」と話してくれた。長期休暇は、司書にとって仕事から離れて自分を取り戻し、リフレッシュして現場に戻るための重要な充電期間となっているようだ。

    デンマークでは、公共図書館が人びとの日常生活のなかに溶け込んでいる。乳幼児のころは保護者と公共図書館に通い、学齢期に達すると、ごく自然に学校図書館と公共図書館を使い分けることを覚える。学生は、大学図書館と公共図書館を状況に応じて利用しているし、社会人は所属する会社や組織の図書館と公共図書館を利用している。そして、組織から離れた人びとは、再び公共図書館に通うようになる。


    北欧らしい理由としては、秋から冬にかけて「暗い時間」が長いために屋内での読書時間が増え、そのために図書館でいろいろな本を借りて読むようになったということも考えられる。また、本の値段が高いために、図書館で借りて読むことが習慣になってしまったという指摘もよく聞かれるところだ。ほかにもさまざまな理由があるだろうが、これらの要因が重なりあって図書館の利用を活性化させていると思われる。

    一般的に北欧の人びとは読書が大好きで、電車の中でもカフェでもよく本を読んでいる。

    図書館では、「ほかの人が返した本を借りてみませんか」というコーナーをたしかに、ほかの利用者が読んだ本というのは魅力的である。返却されたばかりの本には、前の利用者の余韻が残っているように感じられることがある。そのような生きた本を積極的に展示し
    て、借りてもらおうという発想がなかなかおもしろい。

    本書を、今回の図書館訪問に同行し、写真を撮影してくれたパートナーの宮沢厚雄は三時には暗くなってしまうデンマークで、方向感覚が極度に貧弱な私が図書館調られたのは、すべて彼のおかげである。

  • ◉「多様な文化的背景をもった人びとが集まる自由度の高い公共空間」(P237)
    ◉「直接対話のできる物理的な空間がコミュニティにはどうしても必要」(p238)

  • デンマークの図書館の様子や取組がよくわかった。全ての人が平等に情報にアクセスできるという観点から、マイノリティに対するサービスに力を入れていることが印象的だった。駅と郵便局と図書館が一緒になっていたり、駅の構内に図書館を設置しているのも興味深い。図書館には工夫次第でまだまだ可能性があると思わせてくれた。

  • 北欧は夜が長いので
    必然的にその心地よい過ごし方を
    みんな工夫して生きているのね。
    そのひとつが本を読むこと。

    だから、身近に図書館があれば
    惜しげもなく借りるよね〜。
    すてきな習慣だ。

    一方、教育施設として
    移民への識字支援にも力を入れてることが
    よくわかりました。

  • コミュニティの自然な人的ネットワーク構築を促す場としての図書館の可能性。届きそうで届かない理想の社会。嘘っぽくないプログラム、集会での交流、ボランティア活動を参考にしたい。

    「期待感が先行するだけで現実が伴っていない」

  • 映画「ニューヨーク公立図書館」に触発されて読み始めた北欧図書館シリーズ(勝手に名付けた(笑))の第1弾。「平等・共有・セルフヘルプを実現する場所」と副題がありますが、正直、読んでいてそれを感じることなく、最後のまとめで記載されているので意識した程度でした。北欧と言うだけでなんとなく憧れてしまう感じをもちますが、図書館の目的、存在意義をはっきりさせて、その上で運営しているという点こそ学ぶべき点が多いのだろうと感じました。映画を見たあとだし、この本自体も10年前のものだと言う事から、図書館での取り組みに画期的なものは感じられなかったけど、戦略があって戦術があるべきところに、トップの戦略なくして戦術しかないような日本との違いをもっとエッジを効かせて話を聞かせて欲しかった感じです。ソフトな無難な報告的内容になっているのはもったいない感じもします。

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著者プロフィール

吉田右子
筑波大学大学院図書館情報メディア研究科教授。 
著書に『メディアとしての図書館』(日本図書館協会)、『デンマークのにぎやかな公共図書館』(新評論)、『オランダ公共図書館の挑戦』(新評論)などがある。

「2023年 『テーマで読むアメリカ公立図書館事典』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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