フィンランド人が語るリアルライフ: 光もあれば影もある

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  • Amazon.co.jp ・本 (335ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794809889

作品紹介・あらすじ

近年、研究者をはじめとする多くの日本人がフィンランドを訪れ、教育・環境・福祉といったさまざまなジャンルにおいて本を著し、講演をされている。そこで紹介される内容はフィンランドを礼賛するものがほとんどである。しかし現実には、やはりどの国にもトラブルとなっていることがある。本書では、これまでの本にはないフィンランドのマイナス点も紹介している。その意味で、本書の特徴は正にこの国のリアルライフを描いていることと言える。
 フィンランドに現在住んでいる人たちを私自身がインタビューし、彼らが語ったことをありのまま本書において紹介した。対象となったのは12の家族。その大半が私の友人であるが、そのなかには私の最初の結婚で生まれた三人の子ども達も登場する。2013年に行なったものが中心だが、インタビューではまず家族の紹介とともに、ライフスタイルや仕事、生活環境について語ってもらっている。聞き取るうちに共通点がはっきりと見えてきた。それは、「自然と共生する」という生活様式をもっていることであった。
 続いて、フィンランド社会のありようについて意見を聞いた。自殺がフィンランドでなぜ多く起きているのか、人種差別の背景に潜むものは何か、在住外国人の立場をどのように思っているのか、失業者対策、高齢者ケア、教育の優れた点と問題点、若者のアルコールやタバコの問題、離婚が多いことの背景などについても率直な考えを聞いている。その回答に、ちょっと驚くことになるかもしれない。そして、インタビューの最後では日本に対するイメージについて尋ねた。回答が極めて肯定的であったことを私としても喜んでいる。
 本書を読むことで、フィンランドに対して以前よりも深い親しみを覚えていただき、次の旅行先がフィンランドになることを願っている。(ツルネン・マルテイ)

感想・レビュー・書評

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  • 厚いけれど繰返しや余談も多いので拾い読みを推奨

  • ヘルシンキを旅した時に感じたフィンランドへの疑問を解きたくて手にした一冊。影の部分として自殺者が多いこと、離婚率が高いこと、一部の企業経営者が贅沢していることなどに触れている。複数の人たちにインタビューしているが、回答は似たような傾向にあり、それほど驚きはなかった。自然との共生がフィンランド人の根っこにあるようで、その点はとても羨ましく感じる。

  • フィンランド人ながら帰化し、湯河原町議会議員、参議院議員を務めたツルネン・マルテイ氏が、母国の友人たちにインタビュー。日本で人気の「フィンランド式生活」の実際を、普通のフィンランド人から語ってもらうという形式で浮き彫りにする。
    著者の親しい友人たちのみにインタビューしているので、同じコミュニティという意味では公平ではないかもしれないが、それでも「ムーミンの国」「かもめ食堂」「素敵な暮らしの代表格」とされるフィンランドの、日本ではあまり知られていない面を知ることができる。
    どの人にも同じ質問を投げかけることで、様々な考え方の違いがわかって興味深かった。それでいて、フィンランドの課題についてはおおむね同じように感じているということも。とても素晴らしい福祉国家のように思われているが、実際は自殺者や離婚率が高く、高齢者福祉についての課題も日本と同じ。こうした事実を知らないでうわべだけ真似されて、きっとフィンランドの人たちも困惑していることだろう。
    フィンランドでは男性も育児に「当たり前」に参加することや、施設や制度で子育て支援が行き届いており、「世界一ママに優しい国」として知られている。
    しかし、子育て中の芸術家の女性が「(現在のフィンランド社会は)できないことを支援するのではなく、なんでもこなすようにすすめている」と語っていたことが強く印象に残った。
    子育てをする友人知人をみていて、ときどき感じる違和感はこれだと思った。当事者すら「すべてパーフェクトがハッピー」と錯覚してしまうような、そんな風潮は実は苦しくなるばかりではないか。
    「フィンランドのリアル」に触発されつつ、ずっと日本のことを考えていた。こうした多文化を知る体験が、自分のこと、自分の生きていく場所のことを考える上で有効なのだと実感した一冊。

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