スーパーマンの誕生: KKK・自警主義・優生学

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  • 新評論
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794810663

作品紹介・あらすじ

オバマもトランプも自分をなぞらえたほど〈アメリカ的なるもの〉を代表するスーパーマン。しかしその起源をさかのぼっていくと、隠蔽された三つの忌まわしい源泉に突き当たる。
 一つめは〈KKK〉。隠れた場所で胸にアイコンが刻まれた衣裳に着替え、ケープをなびかせて登場する正体不明の男というスタイルは、スーパーマンのものであると同時にKKKのものだ。
 二つめは〈自警主義〉。それぞれの共同体にとっての正義を遂行するため、国家の法律を無視して「正義のための暴力」をふるう自警主義こそ、スーパーマンの立場であるとともに、アメリカのフロンティアの歴史を推進したものだった。
 三つめは〈優生主義〉。「科学」の力で理想的な超人を造り出そうとしたアメリカ生まれの優生主義は、ヒトラーにも影響を与えた。
 こうした暗い起源をもつスーパーマンは、しかし、KKKから意匠を借りながらその内実を逆転し、自警から出て自警主義の悪漢と戦い、優生学から出ながら優生学の極端な推進者であったナチスと戦うヒーローとして、生まれ変わった。
 なぜそんな大逆転が可能だったのか? それを解くカギは「適合性」という考え方にある。
 適合性という概念は、優生学運動では、遺伝要因による環境への適合/不適合の不変の尺度とされた。つまり純血な白人男性こそ人間の進化に最も適合した存在だ、というわけである。
 このエリート主義的な文脈に異を唱えた雑誌があった。その雑誌『フィジカル・カルチャー』は、労働者層を読者層として想定し、遺伝的要因とは関係なく、トレーニングと食事制限―つまりフィットネス!―を通して身体を改造しすることで、誰でも社会に「適合(フィット)」できる存在になれる、と主張した。そして『スーパーマン』の二人の原作者ジェリー・シーゲルとジョー・シャスターは、この『フィジカル・カルチャー』の寄稿者でもあったのである。
 世界を支配しようとはせず、世界に適合しようとするヒーロー、スーパーマン。その誕生の過程には、アメリカの隠蔽された暗部とそれをねじり返す力が刻まれている。(えんどう・とおる)

感想・レビュー・書評

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  • 人種差別・自警主義・優生主義の観点からスーパーマンの
    誕生を読み解こうという本。スーパーマンが誕生した時代を
    考えれば、このような文化的背景があるのは当然であるし、
    一つの考え方としてこういう観方もあっていいとは思う。
    ただし、この観点だけからスーパーマンを語るのは無理が
    ありすぎるし、他のコミックからの影響がまったくと言って
    いいほど言及されていないのも気になる。先日読んだ
    「バットマンの死」と同じく、大げさに捕らえずひとつの
    読み物として受け取るのが正しい読み方かも知れない。

    なおこの書物中でいろいろな作品が人種差別や優生主義と
    関連して取り上げられているが、それによってその作品の
    価値が貶められるようなことはあってはならないと思う。

    それにしても著者はリチャード・ドナーによる映画や(
    クリスファー・リーヴ主演)、フライシャーのアニメ映画は
    観なかったのだろうか?(苦笑)。

  • 米国はKKK的リンチを辞さない自警主義と各種財団が資金援助しナチが輸入した優生学に彩られた国家でスーパーマンはその価値観を内包しながら戦う敵を自警主義者や差別主義者という捻れを孕んだ存在と分析。映画分析は思いつきエッセイと紙一重だが本書は面白い。キングコングに見える黒人の性的侵略とか。

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著者プロフィール

遠藤 徹(えんどう とおる)
1961年神戸市生まれ。同志社大学グローバル地域文化学部教授。研究テーマはプラスチック、モンスター等多岐にわたり、以下のような評論・研究書を著している。『溶解論 ―不定形のエロス―』『プラスチックの文化史 ―可塑性物質の神話学―』(ともに水声社)、『ポスト・ヒューマン・ボディーズ』(青弓社)、『ケミカル・メタモルフォーシス』(河出書房新社)、『スーパーマンの誕生 ―KKK・自警主義・優生学―』『バットマンの死 ―ポスト9.11 のアメリカ社会とスーパーヒーロー―』(ともに新評論)など。
また小説家としても活躍し、「姉飼」で第10回日本ホラー小説大賞を受賞、「麝香猫」で第35回川端康成文学賞候補となる。主な作品集に以下のものがある。『姉飼』『壊れた少女を拾ったので』『おがみむし』『戦争大臣』(以上、角川ホラー文庫)、『ネル』(早川書房)、『むかでろりん』(集英社)、『贄の王』(未知谷)など。最新刊は本書と同時刊行の『七福神戦争』(五月書房新社)。

「2018年 『七福神戦争』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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