- Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
- / ISBN・EAN: 9784794811424
作品紹介・あらすじ
隊列を組んだものものしい出で立ちの市職員と業者80人が「関さんの森」にやって来ました。迎え撃ったのは平服の市民120人。「関さんの森」が強制収用されようとしたときの模様です。
「関さんの森」とは、千葉県松戸市の北にあるおよそ2ヘクタールの森林です。1996年に公益法人に委譲されて以来、市民に開放され、子どもの環境教育の場として、市民の憩いとケアの場として大いに活用されていました。「関さん」は元の地権者の名前です。敷地内には蔵や門など江戸時代の建造物も保存されていて、自然の中の歴史的・文化的遺産でもあります。ところが2000年代末、この森を引き裂くようにして都市計画道路が造られ、土地の強制収用手続きがはじまったのです。
「関さんの森」では23年前から「関さんの森を育む会」という市民団体が里山保全に努め、誰もが参加できる自然観察会やイベントを開催してきました。環境研究で世界的に高名なレスター・ブラウン博士も訪れ、「この森はとても気持ちがいい」と言って生態系保全の活動を高く評価してくれました。
「関さんの森を育む会」の会員たちと元地権者は、里山をできるだけ壊さないように道路の形を変更する案を提示しました。行政主導の開発に立ち向かってもしょせん勝ち目はありません。でも、黙って引き下がることができなかった。なぜなら、この森は、都市部にありながら生物多様性が豊かで、地元住民が自ら育て、活用し、運営している市民の共有財産だからです。つまり対立は公共性をめぐる闘いであり、単なる抵抗運動ではなく政策提言運動であり、自然との共存を目指す文化運動でもある――そう、これは市民による「まちづくり」をめぐる闘争なのです。
本書はこの運動の推移、市民が提言した道路変更案が実現されていく過程を描いたものです。あわせて現代における里山保全活動の価値や意義も論じます。本書を通じて、自然保護のために汗と知恵を絞っている世界中の人びとに心からのエールを送ります。(せき・けいこ)
感想・レビュー・書評
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首都圏といった都会に存在する里山を人間社会のルールの中で保持することの大変さと大切さがつづられた一冊。一回読んだだけなので本書の内容をパーフェクトに理解しきれていませんが、この国で素敵な里山をしっかり維持していく上での最大の敵はあからさまに人間で、里山を守る側が圧倒的に不利だよなあって印象を持った。
守る側の活動や努力も限界があって、日本人みんなが効率や生産性よりも牧歌的で自然豊かで楽しい里山に価値を感じ、徹底的に自然大切にする価値観を持ってくれたらなあって思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
岐阜聖徳学園大学図書館OPACへ→
http://carin.shotoku.ac.jp/scripts/mgwms32.dll?MGWLPN=CARIN&wlapp=CARIN&WEBOPAC=LINK&ID=BB00608860
テーマ13 気候変動に具体的な対策を
環境教育の源であり憩いの場である生態系・生物多様性の宝庫を守る市民の闘いの記録。
「まちづくり」の意味を深く問い直す(出版社HPより) -
SDGs|目標15 陸の豊かさも守ろう|
【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/765125 -
関さんの森 関啓子 新評論
江戸から住み着いて来た千葉県松戸市の自宅に付随した2、1ヘクタールの森と農園と梅林と湧き水のある湿地を保育園などの一般に解放してきたが
遺産相続で持ちこたえられず熟慮の末見つけた埼玉県の生態系保護協会が寄付を受け入れてくれることになり森を維持できることになり
数百人の「育む会」が誕生して環境維持と整備に当たるボランティア活動も始まります
しかし市政による机上の空論による道路計画が進み
この森が強制的に道路とされることになり
それに対して計画の変更を提案する市民運動が立ち上がり
10年以上の執拗な戦いが始まります
手練手管に長けた行政のあの手この手の騙しにはめられながらも頑張り通して
おおむね自然林を残すことができるまでの話を通してナショナルトラスト運動や里山資本主義などの
経済的な地域開発に欠かせない市民生活の基礎となる環境維持の必要性を説いている