たんぽぽのお酒 (ベスト版文学のおくりもの)

制作 : 北山 克彦 
  • 晶文社
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本棚登録 : 546
レビュー : 64
  • Amazon.co.jp ・本 (405ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794912411

感想・レビュー・書評

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  •  SFの作品が有名だけど、基本的にとても叙情的な文章を書く人なので、少年時代の思い出なんか題材にとったら、どんだけリリカルなものが上がってくるか。これである。
     自分が生きていることの喜びに気がついた12歳の少年の夏のはじまり。それを追体験できる本。そんな代物がこの世にあるというだけで、文学とは素晴らしいものだと思う。でも生きている喜びという強い光は、黒々しい影と隣り合わせだ。夏の終わりには少年は、自分も誰でもいつかは死なねばならないことを実感する。そこまで追体験できてしまう。
     中の短編たちには明確な番号もサブタイトルも振られていないが、「主人公の家の下宿人の青年が老婆とアイスクリームを食べて恋をする話」「高熱を出した主人公に夜、高原の空気を届けに来たガラクタ屋の話」がとても好き。

  • 2015年の神保町ブックフェスティバルで購入。
    少年時代の夏の思い出を描いたノスタルジー溢れる長編。良いことも悪いことも、些細なエピソードを細かく積み重ねていく手法は短編的でもある。
    ブックフェスティバルの晶文社ブースで買った時に、小冊子を一緒に貰った。丁度、亡くなってすぐのタイミングで作成されたようで、内容は追悼文が中心だが、邦訳書リストや経歴も充実している。恩田陸の『ブラッドベリは「死なない」』、何処かで読んだ記憶があるな……。

  • 社会人になって久しいので、何気なく過ぎていく日常というものに今更ながら憧れる。特に、夏休みは時間はたっぷりあるが別段しなければいけないことはないので、遊んでいた気がする。しかも真剣に。あの真剣さは今から思うと滑稽だ。けれど、もう二度とあの時間は戻ってこないとわかると切ない。そんなことを思い起こさせる物語。

  • 読み始めは独特な表現で読みにくかったけど、慣れてくると逆にとても素敵な表現だと思うようになって、話自体にもどんどん引き込まれていった。とてもおもしろかった。

  • 半年遅れのブラッドベリ追悼。この物語の舞台はイリノイ州グリーン・タウン。架空の街と思われるが、ブラッドベリが少年期を過ごした街がその背景にあるようだ。時は1928年の夏。翌年がウオール街に端を発する世界大恐慌の年だが、まだその影はない。こうして、場と時といったトポスだけが特定されるのだが、全体を貫流する明確なプロットといったものはない。主人公はしいて言えば、12歳の少年ダグラスだ。そして、この長編小説には全編にわたって死とその影がつきまとっている点に大きな特徴を持つ。夏の光の背後には深い闇があるのだ。

  • 美しいけど、詩を長編で読むのは辛い

  • 正直、読んでてたるかった。


    子供たちが占いの人形を盗み出す話は腹すら立った。
    ただの窃盗なのに、犯罪を変に美化するのは不快。

    ただ、タイムマシンのおじさんの話だけは良かった。

  • 12才のダグラス・スポールディングが1928年の夏休みを迎えるところからこの小説は始まる。
    ダグラスはこの夏、始めて自分が生きている実感を得、その感覚に有頂天になる。しかし、それは喪失の痛みの始まりだった…。
    真に所有しない者は喪失もしない。生の真価を知らない者には死の恐怖もまた真の物ではない。ダグラスはこの夏に生きていることの素晴らしさを得ると同時に、生きとし生けるものは、いつか老い、死ななければならないことを知る。恐怖のあまり、生きることに対する不安に蝕まれるダグラスだが、放浪の老賢者たるジョウナスさんの助けを借り、死は逃れられないものかもしれないが、人生はそれにも増して素晴らしいことを知り、夏の終わりを迎える。
    主人公のダグラスの物語と並行して、沢山の老人達の物語が語られる。彼らはその長い人生で多くのものを得て、そして失ってきた。しかしながら、彼らの心の中には豊かな記憶が残されており、決して老後は、寂しいばかりのものなのではないと示している。

  • 読み始めは、散文詩調の表現の字面を追うだけで一向に頭に入ってこず、なんと読みづらい小説だろうと読み進める意欲を挫かれそうになったんですが、そのうちにそれが心地よく響くようになってくるから不思議なもの。

    峡谷に向ったまま帰ってこないダグラスを母と弟が探しに行くエピソードや、自分にも若く美しい頃があったことを少女たちに信じてもらえない老婆のエピソード、また、通り魔に遭う危険を顧みず深夜歩きをする若い女性たちのエピソードなど、サスペンスある魅力的な挿話もあり。

    人生で唯一度しかない、十二歳の夏という刹那への郷愁。
    そして、身の回りで死や別離の香りを嗅ぎ、少年は人生を識る。
    人の生命の有限、そして無限を感じさせられる、心地よい読後感。

  • 文学

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著者プロフィール

1920年、アメリカ、イリノイ州生まれ。少年時代から魔術や芝居、コミックの世界に夢中になる。のちに、SFや幻想的手法をつかった短篇を次々に発表し、世界中の読者を魅了する。米国ナショナルブックアウォード(2000年)ほか多くの栄誉ある文芸賞を受賞。2012年他界。主な作品に『火星年代記』『華氏451度』『たんぽぽのお酒』『何かが道をやってくる』など。

「2015年 『たんぽぽのお酒 戯曲版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

レイ・ブラッドベリの作品

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