ソンブレロ落下す: ある日本小説

  • 晶文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794922618

感想・レビュー・書評

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  • 一筋の日本人の髪から匂い立つ官能の香り。
    その女の長い髪は夜の闇と同じ漆黒だ。微笑むときの瞳は細い三日月の形をしているのだと思う。一日の終わりが環で閉じられるかのように幾層もの花弁の髪にくるまれ、眠りの舟に横たわる。貝殻めいた耳殻で黒猫が喉を鳴らす音を拾いながら、ゆらりゆらりと夢から夢へ所有と喪失を繰り返しては漂っていく。内へと向かう意識の外側に狂騒する紙片の群衆と狂気する一人の男を残して。彼女は彼女の眠りを眠っているに過ぎないのだが、不干渉のソンブレロのごとき不可侵の静けさと安らかさに私は心奪われた。

  • やっぱりブローティガンだいすき。山口小夜子の挑戦的な視線の装丁も良い。ソンブレロがなんたるかわからなくて検索したけど帽子なのね。そりゃそんなものがあったら不自然。親日家のブローティガンが谷崎潤一郎に捧げた作品。

  • 突然ブローティガンを読みたい衝動に駆られ再読。まずは浅井慎平撮・山口小夜子の妖しく艶めく美しい表紙に暫し見惚れる(嘗てこのカバーに魅せられ手にしたことを思い出し)。物語の世界への大事なイントロダクション。破り捨てられた小説の断片が屑籠の中で繰り広げる狂騒と、片や黒髪を広げてたおやかに眠り続ける雪子の見る淑やかな夢とが交錯する。動と静の混濁はどこか乾いたフリーズドライ、メッセージをくみ取ろうなどという気は毛頭なく、ただ流れにゆっくり身を委ねるだけ。ふつふつと寂寥が募りくる。繊細なブローティガンに寄り添う。

  • 買ったのは鱒釣りが先だけど、初めて読んだブローティガン。
    SF。
    三つの旅のお話。

  • 昨日の夜ソンブレロ落下すを読みきった。なんだか、不思議なお話で、谷崎潤一郎とはあんまり関係ないみたい、日本人女性とその関連の官能的イメージ?でも、二つの話が同時に進行して、どちらの世界の話もあいまいで、詳しいことはまったくわからず、どちらの話が夢なのかわからなくなってしまうところがすき。日本人女性の見る夢の話、ソンブレロの話、具体性があるのは本来存在しないソンブレロで、実在するはずの現在は夢と過去と妄想の話ばかりなんだから、おもしろいなあ。すきなのは、なんだかわからないエピソード。ソンブレロは最初黒かったのに、最後には前からそうだったかのように白かったの、そういうところが私のきにいるとこです。

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著者プロフィール

作家、詩人。1935年、ワシントン州タコマ生まれ。56年、ジャック・ケルアック、アレン・ギンズバーグらビート・ジェネレーションの集うサンフランシスコへ。67年に小説『アメリカの鱒釣り』を刊行、世界的ベストセラーとなる。主な著作に『西瓜糖の日々』『ビッグ・サーの南軍将軍』など。風変わりで諧謔に富んだ作風は世界中の若者たちの想像力をかき立てた。84年、ピストル自殺。

「2023年 『ここに素敵なものがある』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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