ヨットクラブ (晶文社ミステリ)

  • 晶文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794927385

作品紹介・あらすじ

実業界で成功し、すべてを手に入れたジョン・ゴーフォースにも、ひとつだけ叶わぬ望みがあった。それは市の有力者が集まる秘密めいた社交クラブの会員になること。だが、待望の入会の誘いを受けたとき、彼はすでに人生に倦怠を覚え始めていた…。富豪たちのひそかな愉しみを描いて、MWA最優秀短篇賞に輝いた名作「ヨットクラブ」、規律正しい教育を理想に掲げる寄宿制学校のおぞましい実態が明らかにされる「理想の学校」、何か月も一言も口をきかず、互いに無視しあってきた夫婦が繰り広げる奇妙なゲームの顛末「夜の客」、自分が神であることに気づいた男が始めた通信事業「G.O'D.の栄光」など、奇抜なシチュエーション、たがのはずれた世界を、ブラックユーモアをまじえて描き、読者に強烈なショックと恐怖をもたらす異色作家イーリイの傑作、全15篇を収録。

感想・レビュー・書評

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  • 映画「セコンド」をみて、結末の恐ろしさに原作者に興味を持ち読んでみた。15の短編。「セコンド」はSFだが、こちらは設定がもろSFのもあり、日常的なものもある。が、社会のありようを別な角度から見ると、それってこういうことじゅあないですか? こうなってしまいますぜ? という奈落に落ちる世界を描いている。

    「理想の学校」の生徒でいるということは?
    名士のみが入会できる「ヨットクラブ」の活動とは? 
    アメリカの歴史学者がやっとのことであこがれのイギリスにいけることになったがそこは・・「タイムアウト」 が特におもしろかった。


    「理想の学校」ホルストン氏は息子をいい学校に入学させようと、学校見学に行く。校長はここは規律を重んじる全寮制です、と言う。・・入寮者をよくみると・・

    「ヨットクラブ」 ゴーフォースは仕事にまい進し社長の座に就いた。この町には名士のみが入会できる「ヨットクラブ」なるものがあり、クラブからの誘いで入会できる。活動は年一度のヨット航海らしい。念願かなって入会できその航海にでかけたが・・ 権力と金の高みについた名士たちの楽しみとは?

    「タイムアウト」長年イギリスに行ってみたいと思っていた、アメリカの歴史学者ガル教授。教授になって20年、やっとイギリス行きの人文調査隊に選ばれた。あこがれのイギリス、飛行機からは緑の牧草地が見えるはず・・が何も見えなかった。実は原子力事故が起きてイギリスとアイルランドは人も物も自然も無に帰していたのだ。それでアメリカとソ連で、イギリスの歴史を書いている、のだという。そんなばかげたことを、と思うが帰ることは許されない。歴史は新資料の発見により今迄の学説が覆ることもある、ということをたてに、新たな「発見」もおりこんだ「歴史」を書き始めるが・・ 学校で習った歴史って本当なの? また原子力事故の後の世界、をブラックな形で提示している。

    「貝殻を集める女」
    「慈悲の天使」
    「面接」
    「カウントダウン」
    「隣人たち」
    「G.O’.Dの栄光」
    「大佐の災難」
    「夜の客」
    「ペルーのドリー・マディソン」
    「夜の音色」
    「日曜の礼拝がすんでから」
    「オルガン弾き」


    1968年に「タイム・アウト」の題名で刊行(収録作品は同じ)各作品は1961,63,65,68に書かれたようだ。

    2003.10.30初版 図書館

  • 15篇収録の異色作家系短篇集。奇想や結末の意外性よりも人間心理や現代社会のグロテスクさに焦点を当てた作風。なんとも言えないイヤ〜な読後感が魅力的。お気に入りは「理想の学校」、「タイムアウト」、「隣人たち」、「大佐の災難」辺りかな。

  • 収録作品
    ・『理想の学校』
    ・『貝殻を集める女』
    ・『ヨットクラブ』
    ・『慈悲の天使』
    ・『面接』
    ・『カウントダウン』
    ・『タイムアウト』
    ・『隣人たち』
    ・『G.O'D.の栄光』
    ・『大佐の災難』
    ・『夜の客』
    ・『ペルーのドリー・マディソン』
    ・『夜の音色』
    ・『日曜の礼拝がすんでから』
    ・『オルガン弾き』

    気に入ったのは、『理想の学校』『ヨットクラブ』『隣人たち』『タイムアウト』『G.O'D.の栄光』『日曜の礼拝がすんでから』

    怖いとか薄気味悪い、じゃなくて、読後になんか嫌な感じを残す作品が多い。
    特に、不思議な出来事や奇妙な現象、事件が起きるわけでもなく、
    普通の人が普通のことをしているだけのはずなのに、
    ちょっと一歩、その普通のことが行き過ぎてしまって……という感じかな。
    特に『面接』なんかは、昇進の面接を受けるだけのはずだったのに、
    おそらくあの後主人公は破滅への道なんだろうなぁ。

    SFものは『カウントダウン』『タイムアウト』辺りかな。
    『オルガン弾き』どうなのかな?
    『タイムアウト』は絶対にあり得ない、と思いたいけど、
    もしかしたら、この世界も……と考えると、結構怖いね。
    それは、もう誰にも証明できないし。

    『日曜の礼拝がすんでから』は嫌な時期に読んじゃったなぁ。
    「恐るべき子どもたち」系の話は、今じゃ作り事じゃなくなってるもんな。

  • 短編集。ミステリ。SF。
    大森望『21世紀SF1000』から。
    わりと多彩な作風。現実的ながらも、どこか奇妙な、独特の雰囲気がある。
    大森望さんが絶賛していた「タイムアウト」は、都市を再建する物語。他の作品にも言えるが、アイディアがとても魅力的。
    表題作、「大佐の災難」「日曜の礼拝がすんでから」は捻りの効いた結末が良い。
    「G.O'D.の栄光」「夜の客」は突飛なアイディアが好み。
    全体的に好きな雰囲気の、満足できる一冊でした。

  • *収録作「理想の学校」「貝殻を集める女」「ヨットクラブ」「慈悲の天使」「面接」「カウントダウン」「タイムアウト」「隣人たち」「G.O’.Dの栄光」「大佐の災難」「夜の客」「ペルーのドリー・マディソン」「夜の音色」「日曜の礼拝がすんでから」「オルガン弾き」
     すべてが面白いかというと…個人的にはダメな作品もあった。オチのない、文学っぽい話もある。
    やはり表題作「ヨットクラブ」のブラックなオチやシャーリィ・ジャクスンが書きそうな「隣人たち」、だんだん怖くなっていく「大佐の災難」、短いながらもショッキングな「日曜の~」がよかったです。

  •  これまた知られざる作家の短篇集。どうもこの晶文社シリーズはこういうのが続く。中にひとつ中篇といっていい「タイムアウト」をはさんで残りはほんとに短いので読みやすい。中身はというとまあ可もなく不可もないというか玉石混淆というか、短篇集は難しいという普遍則からすればまあまあ健闘しているのでは。「理想の学校」、「ヨットクラブ」、「カウントダウン」、「大佐の災難」などなど気が利いている。

  • 所謂“奇妙な味”の短編集。肩すかしなものもあるけど、概ね楽しめた。「理想の学校」「カウントダウン」「タイムアウト」「隣人たち」「夜の客」が好き。

  • 奇妙で少しブラックな味わいの短編集。
    表紙にも表記のある(原書のタイトル?)「タイムアウト」が一番好きですが、他の短編もそれぞれ違った味わいで、満足感のある一冊でした。
    「タイムアウト」を読んでいたときに、「ネオ・ヴェネチアならぬネオ・ロンドンか…」とか思ってしまったことは秘密。

  •  ブラックユーモアに満ちた話を主に、15編の短編を集めた本。読む前に怖い話ばかりだと聞いていたので警戒していたが、想像していた「怖さ」とは違って、どれも面白く読めた。
     オチが効いているのは「カウントダウン」「理想の学校」。「日曜の礼拝がすんでから」も意外なオチで話としては面白かったが、後味はよくない。
     「隣人たち」には、自分の中にもある残酷さを見てぞっとした。集団であるからこそ、集団の倫理に当てはまらない人に対して、無意識に、そして容赦なく向けられてしまう残虐性。それに気付きながら、結局集団から抜け出せないグラント夫人が切ない。

  • 【ヨットクラブ】―短篇。
    実業界で成功し、すべてを手に入れたジョン・ゴーフォースにも、ひとつだけ叶わぬ望みがあった。それは市の有力者が集まる秘密めいた社交クラブ「ヨットクラブ」の会員としてのステイタスを手に入れること。だが、毎年夏に行われるというヨットクルーズ以外には、その活動実態すら分からない。そうして漸く待望の入会の誘いを受けたとき、彼はすでに人生に倦怠を覚え始めていた。同様の倦怠感を抱く富豪たちのヨットクルーズで行うひそかな愉しみとは一体何か。(2008.12)

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