書物愛 日本篇

著者 : 紀田順一郎
制作 : 紀田 順一郎 
  • 晶文社 (2005年5月10日発売)
3.29
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  • 本棚登録 :21
  • レビュー :4
  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784794966636

作品紹介・あらすじ

富豪ロスチャイルドが巨額の懸賞金をかけて探したが見つからなかった稀覯書が九州の古本屋にあらわれた(「悪魔祈祷書」)。不遇のまま逝った学者の義兄が遺したのは厖大な専門書の山だった(「本の話」)。万引きされた本を返しにきた女子学生にひかれる若い古本店主(「本盗人」)。書物の達人が、本を主題とする知られざる名作、かくれた傑作を発掘する待望のアンソロジー。

書物愛 日本篇の感想・レビュー・書評

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  • 「書物」をテーマとした短編を集めたアンソロジー

    本好き人間は多いだろうけれど
    これらに出てくる人たちは、まさに「書痴」

    最近は本を読まない人が多いらしいけど
    もったいないよねぇ

  • 世に本好きの人は少なくないだろうが、「書物愛」とまで言われると、ふつうの読者はちょっと引いてしまうのではないだろうか。編者は紀田順一郎。本については一家言を持つ名うての本読み巧者である。解説にある通り「書物と人生の深く、楽しく、時には不可思議で悲惨な関わりあいについて」書かれた短編が九篇集められている。紀田氏がこれまでに読んできたものの中から、選びぬかれた作品は、夢野久作のように、ポピュラーな作家から、不勉強にして名さえ知らなかった作家まで、その射程は幅広い。ひとくちに「書物愛」とくくってみても、なるほど、さまざまな関わりあいがあるものだ。

    古本屋にとっては本盗人は天敵である。本アンソロジーのなかでも、本泥棒の話は何度も出てくる。夢野久作の「悪魔祈祷書」は、機転を利かせて不法手段で稀覯本を集める蒐集家に一杯食わせる話。ミステリ仕立ての鍵になるのが、聖書に擬したアンチ・クリストの書物。日本にはめずらしい洋古書物という仕掛けが愉しい。

    島木健作の「煙」は、思想ゆえに世間から脱落した青白きインテリが、古本屋の手伝いをする話。競りで、値打ちを知らぬ丁稚が自信を持って安値をつけるのに、なまじ文学や美術に通じているために、相場より高値で買ってしまう。安く扱われる本に自分を重ねてしまうインテリの自嘲が苦い。

    由起しげ子の「本の話」は、闘病する姉を看病し疲れ、先に逝った義兄が蒐集した専門書を、姉の介護の費用を捻出するために売ろうとする妹の苦悩を描く。貴重ではあるが専門家にしか値打ちの分からぬコレクションを、ただ姉を生かしておくことのために処分することの正当性を疑う妹の心には、義兄への思慕が。本の蒐集という行為の意味を問う一作。

    野呂邦暢の「本盗人」は、古書店から盗まれた稀覯本が主人の知らぬ間に帰ってくるという話。不審な女性客に目を止めた店主は、女性の後をつけると……。軽い恋愛小説風スケッチ。横田純弥の「古書狩り」は、古書店から何冊も同じ本を買う老人の秘密を暴く話。同じ本の奥付を見ては、買ったり棚に戻したりする老人の目的とは。謎解きミステリ風の味わいのある一編。

    物語巧者の宮部みゆきは、「歪んだ鏡」で花を添えている。短篇ながら、複数の人物が絡まり合って一つの謎に向き合うストーリー展開はさすが。山本周五郎の『赤ひげ診療譚』を手がかりに古書店主の解く謎とは。周五郎のトーンを生かした人情の味わいが読後に残る佳編。稲毛恍「嗤い声」は、芥川、直木両賞発表後に起きる受賞者の初版本の書価高騰を狙った買い漁りを描いた作品。庶民のささやかな欲望がかえってリアリティーを持って迫る。

    しんがりは、編者紀田順一郎の作品「展覧会の客」。悪い噂のあるコレクターとの交遊を通して、稀覯本蒐集の裏側をえぐった意欲的な一編。書誌学者めいた風貌からは想像のつかない人間観察眼が光る。以上、いずれも看板に偽りのない書物と人生との不可思議な関わりあいを描いて秀逸。古書蒐集が趣味という人なら、何を置いても読むべき一冊。『書物愛-海外篇』とあわせて読まれることをお薦めする。

  •  収録作品
    ・『悪魔祈祷書』……夢野久作
    ・『煙』……島木健作
    ・『本の話』……由起しげ子
    ・『本盗人』……野呂邦暢
    ・『楽しい厄日』……出久根達郎
    ・『古書狩り』……横田順彌
    ・『歪んだ鏡』……宮部みゆき
    ・『嗤い声』……稲毛恍
    ・『展覧会の客』……紀田順一郎
    日本人作家を読むのは久々。
    昔の小説は読みなれてないんで、
    個人的には、やはり最近のものの方が読みやすくて、面白く感じちゃうかなぁ。
    『楽しい厄日』は以前読んだことあるんだけど、やっぱり最初の一文は笑っちゃう。
    収録作の中では、
    『古書狩り』と『展覧会の客』がかなりツボ。
    古本者としてのレベルは、比較するのも恥ずかしいけど、
    それでも、古本ヲタクとしては非常に親近感が沸く二作。

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